製造業が直面する、サステナビリティの壁 “攻め”の利益創出につなげるデジタル活用とは

» 2022年10月19日 10時00分 公開
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 地球温暖化の影響とされる自然災害の増加を背景に、グローバルでSDGsへの関心が高まっている。こうした中、持続的な発展に向けた、いわゆる「サステナビリティ経営」への転換があらゆる企業に求められるようになった。その要請が特に強く向けられているのが、事業活動において多くのCO2排出を余儀なくされる製造業だ。

 製造業では、自社工場などでの製造工程に加え、上流である部材の生産や、下流となる製品の使用や廃棄など、環境負荷低減への対応が必要な過程が多い。それゆえに、対応の道のりは険しい。一連の活動のどこでどれだけCO2を排出しているか把握することも一筋縄ではいかない。また、排出削減に向けて、取得したデータを分析して改善策を立案し実行するという、これまでにない活動も求められる。さらに、温室効果ガスの種類はCO2だけではなく、またプラスチックや資源循環、生物多様性の保全など、環境負荷低減の対応は多岐にわたる。人権や紛争鉱物など、環境以外の課題にもケアが必要だ。収集すべきデータは種類と量の両面で膨大なものとなる。

 こうした中、「デジタル」の力で製造業のサステナビリティ支援に連携して取り組んでいるのが、日本マイクロソフトとEYストラテジー・アンド・コンサルティングだ。課題を抱える製造業の企業に対してどのような支援を行っているのか。話を聞いた。

日本の製造業でサステナビリティ経営が広がらない理由

 「パリ協定が採択された2015年のCOP21を機に、企業活動に伴う温室効果ガス排出の抑制を求める声が世界中で一気に広がりました」

 こう語るのは、EYストラテジー・アンド・コンサルティングのストラテジック インパクト パートナー、尾山耕一氏だ。パリ協定とは、20年以降の地球温暖化対策の国際的な枠組みであり、採択以降、脱炭素型経済に向けた議論が進展。国内でも東京証券取引所プライム市場の上場企業に対して、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)と同等の情報開示を求めるまでになった。23年には環境省による自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)のフレームワーク公表も控える。

EYストラテジー・アンド・コンサルティングのストラテジック インパクト パートナー、尾山耕一氏

 ただ、「情報公開などの取り組みは進む一方で、日本企業のサステナビリティ経営の動きはいまだ鈍いと言わざるを得ません」と尾山氏は指摘する。その原因は、近年のサステナビリティを巡る動きに、経営層の“意識”が追い付いていないことだ。

 「利益確保を通じた成長という従来の“常識”が、CO2データの収集・分析の仕組みづくりに代表される、新たなコストや工数を要するサステナビリティ活動の“壁”になっています。確かに、これまではそれらがなくても問題なく経営できており、考え方を一気に変えるのは難しい。結果として、国内でサステナビリティ経営に前向きな企業は、いまだ各業界のリーダーである少数の大企業に限られるというのが実態です」(尾山氏)

 しかし、サステナビリティ意識の乏しさは、重大な経営リスクでもあるという。企業のサステナビリティ対応に向けられる社会の目は年を追うごとにシビアさを増し、低評価が下された企業から消費者や取引先が離れていくのは時間の問題だ。そういった業績の低迷を織り込む形で金融機関はESGによる投資判断を強めており、株価下落によって企業価値も大きく損なう可能性がある。

 「そういったリスクを回避するためにも、世界的なSDGsの潮流を直視することが必要です。サステナビリティ経営は社会から信頼を得るのみならず、製品での差別化が困難になる中でも、顧客からの持続的な支持獲得による利益向上策になることを理解すべきなのです」(尾山氏)

 サステナビリティ経営によって会社を変えていくことが競争優位につながる、という考え方を経営層が理解していると、全社で改革が進みやすい。環境や社会への配慮という改善を実行していくことは、事業拡大に向けた“攻め”の施策になる。

鍵を握るデジタル活用と“改善”への壁

 そのための仕組みづくりで鍵を握るのが「デジタル」だという。冒頭のように、サステナビリティ経営に必要なデータは種類と量の両面で膨大で、収集も一筋縄ではいかない。そうした中で他社に先んじるには、各種の課題克服に向けた施策立案サイクルの高速化が不可欠だ。スピードと正確性を兼ね備えたデジタル抜きには、その実現はかなわない。

 しかし、現状では、改善サイクルを回すために必要なデータ収集・分析が十分にできていないケースが多いという。EYストラテジー・アンド・コンサルティングのテクノロジーコンサルティングリーダー、田畑紀和氏は「データ中心の経営をしていきたいという企業は増えていますが、働き方やサステナビリティなど、業務遂行に直結しないデータは改善サイクルを回せるほどの収集・分析ができていません。外部に公表するためのデータをかき集めて可視化することに一生懸命になっているのが現状です」と明かす。

EYストラテジー・アンド・コンサルティングのテクノロジーコンサルティングリーダー、田畑紀和氏

 今後、さらに非財務情報の開示要請が強まる中、そういった状況では対応できなくなる。特に製造業では、川上から川下まで、サプライチェーン全体でどれだけ環境コストを発生させているか把握することが必要になる。その際、個社ごとにデジタル対応をしていては、多大な労力とコストを要し、要請に応えきれなくなってしまう。

 そういった課題を解決するために、EYストラテジー・アンド・コンサルティングが進めているのが、クラウドソリューションを活用したコンサルティングだ。「マイクロソフトのようなクラウドソリューションと、私たちのようなサステナビリティの知見を持つコンサルによって、社会的なインフラを整えていく。それが私たちのミッションだと考えています」(田畑氏)

 同社が活用しているクラウドソリューション「Microsoft Cloud for Sustainability」は、クラウドによって他のシステムと連携できるため、サプライチェーン全体をまたぐデータ収集が格段に容易になる。

 また田畑氏は、クラウド技術を活用した上で「目指すのは、データに基づく持続的な改善を可能とするプロセスの実現です」と強調する。経営環境の変化が激しさを増す中、主観での判断ミスをなくす策として、いわゆるデータドリブン経営が注目を集める。それをサステナビリティ経営にも適用して、判断精度の向上を支援する。

 「現状では、データ収集と可視化に取り組む企業は多いですが、本丸となる“改善”に切り込むには、いずれの企業も“データ”と“やり方”の双方での知見の蓄積が圧倒的に不足しています。それは、何を目的に、どんなデータを、どう集め、どう分析し、どう具体的な活動に落とし込み、結果をどう評価するか――ということです。それらをわれわれが補いつつ、プロセス実装まで支援します」(田畑氏)

具体的なアクションを描くために

 一方、日本マイクロソフトはサステナビリティ経営にいち早く取り組んできた。カーボン排出削減目標を初めて設定したのは09年にさかのぼり、それ以来、活動を加速している。21年度と22年度の2年間で250万トンのCO2除去を達成。現在は、30年までにカーボンネガティブ、さらに50年までに創業以来の総排出量に相当する量を除去することを目標に掲げる。

日本マイクロソフトの業務執行役員 製造営業統括本部長、横井伸好氏

 配慮の対象はカーボン以外に廃棄物、水、生態系にまで及ぶ。同社の業務執行役員 製造営業統括本部長の横井伸好氏は「当社はソフトウェア企業ですが、世界各国でデータセンターを運営し、メーカーとしてはMicrosoft SurfaceやXboxなどのハードも手掛けています。そのため、サステナビリティに関して当社としてできることはたくさんあります。お客さまのサステナビリティを支援する立場でもあり、非常に大きな課題として位置付けています」と説明する。

 一方で、横井氏は「当社だけでできることは限られている」とも話す。Microsoft Cloud for Sustainabilityのようなツールだけで全てができるわけではなく、データを分析して、具体的なアクションにつなげていくためには、EYストラテジー・アンド・コンサルティングの知見も必要だという。今後も両社で連携することで、利便性向上や支援の高度化を目指す。

 田畑氏によると、世界的な取り組みの広がりを背景に、日本の製造業でもサステナビリティ経営の本質への理解が少しずつ、しかし着実に進んでいる。しかし、自社における具体像の描きにくさから、そこで足踏みを余儀なくされる企業も同様に増えているという。

 「サステナビリティに関して考えるべき範囲が非常に広いことに気付きながらも、どういった制度に基づき、どのようなデータを集めなければならないか、具体的なアクションを描けないという人は多いのではないでしょうか。悩んでいる担当者さまと一緒に考えながら、最適な解を出していければと考えています」(田畑氏)

 EYストラテジー・アンド・コンサルティングでは、製造業のサステナビリティの取り組みについて、具体的に進め方を紹介するウェビナーをオンデマンドで配信中だ。サステナビリティ経営を推進したいと考えている企業にとって、有益な情報提供の場になるだろう。

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