今求められる「顧客理解」とは? “顧客の360度ビュー”で実現する新しいデータマーケティングの最適解

マーケティングで注目されているテーマに「顧客理解」がある。企業は価値観が多様化する中で、どのように顧客とのつながりを深めていくか、どのようにファンを創出していくかについて試行錯誤している。しかし、顧客に関するさまざまなデータを持ってはいるものの、各部署にたまっているだけといったケースも多いのではないだろうか。マーケティングに限らず、データドリブン経営を目指す上で企業の内外にあふれているデータを活用する方法を、オラクルのFusion CXとUnity CDPから探る。

» 2023年01月10日 10時00分 公開
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なぜ顧客理解が重要になってきたのか

 モノを売る過程で従来、重視されていたのは、製品の品質や価格だった。ところが、安くて良いモノがあふれている現在、品質や価格の優先順位は下がり、代わって顧客理解が重要視されている。個人に最適化したサービスが求められる時代に突入し、顧客理解がマーケティングの重要な要素になった背景を、日本オラクルの小野氏と諸留氏は次のように分析する。

photo 左から、日本オラクル クラウド・アプリケーション事業統括に所属する諸留拓人氏(ソリューション・エンジニアリング事業本部 CXソリューション部 シニアソリューションエンジニア)、小野俊隆氏(クラウドアプリケーション戦略部/CA戦略部 部長)

 「顧客理解が重要なキーワードになったのは、ここ10年くらいではないでしょうか。背景の1つは価値観の多様化です。人の興味や関心、お金の使い方が、モノからコトへと変わってきました。もう1つはSNSの台頭です。SNSを使って自分のお気に入りを見つけるときには、インフルエンサーといった個人の発言やこだわりへの共感が影響します。それらの体験や影響力は、ブランディングの一部を顧客が担うことを意味します。以上のことから、ブランドの一貫性やLTV※1を考える際に顧客理解は欠かせないものになりました」(小野氏)

※1:Lifetime Valueの略で、顧客生涯価値の意味

 「SNSをはじめとする、企業側のデジタルチャンネルが急増しました。例えば、商品を購入した顧客が不満を感じて問い合わせをしたとします。このとき、問い合わせを受けるチャンネルと情報発信をするチャンネルが連携していないと、クレームを入れている顧客へ同じ商品の販促メールなどを送ってさらに怒りを買ってしまうこともあります。そうならないためには、企業全体で“点”ではなく“面”で顧客とコミュニケーションをすることが必要です」(諸留氏)

 もちろん、企業には顧客に関するデータが集まっている。しかし、部署によってバラバラにたまっているだけで、サイロ化しているケースも少なくないだろう。また、データをある程度統合できていても、その活用方法には課題があるという。

 「例えばリテール業界は、データを統合する仕組みができている企業が多いです。ただし、統合されたデータを読み解いて次のアクションに活用するフェーズでは、まだ人に頼っている現場が多いと感じています。販促の担当者は、データからマーケティングにおける『価値』を見つけることについて苦労されているのではないでしょうか」(諸留氏)

データを活用したマーケティング 今、求められることは?

 膨大なデータをマーケティングに活用するためには、データを統合するフェーズがあり、さらにその先にデータから価値を見いだすフェーズがある。しかし、後者に至るのは簡単なことではない。何が課題になっているのか。

 「課題として最も大きいのは、組織の壁です。マーケティング部と営業部、生産部などが横ならびになっている場合や複数の営業部が存在する場合に、顧客のデータがそれぞれの部署で分断されていることが多いですね。マーケティングの担当者が各部署を横断してやりとりできるような基盤が必要です」(小野氏)

 さらに小野氏は「マーケティングは経営と近い距離にあるべき」だと話す。マーケティングは自社だけでなく、「外の世界とどう向き合うか」常に問われている。テクニック論になりがちな職種だが、企業理念やビジョン、一貫性をいかに外部に理解してもらい、共感してもらうかが重要だというのが同氏の見解だ。

 「例を出すと、テスラは蓄電池を通じてゼロエミッションの世界をつくることを打ち出し、 SNSや有料広告などのいわゆるツールのテクニックを使わずにマーケティングを成功させていることで有名です。彼らは、企業のビジョンなどを体現した商品やサービスを打ち出し、メッセージを受け取った人たちとの向き合い方を重要視しています。このような取り組みは、テスラ車を持っているかどうかに関係なく、ブランドと人との感情的な結びつきを促すことができます。今後のマーケティングには、このようなパーソナライズから一歩進んだ、企業やブランドと顧客との対話のようなものが重要になるのではないでしょうか」(小野氏)

顧客情報を統合するFusion CXでインターナルなデータを統合管理

 では、顧客理解に必要なデータにはどのようなものがあるのだろうか。諸留氏は、バックオフィスも含めた全ての情報が活用できると説明する。

 「企業にあるのは、顧客自身の住所から、顧客がプレゼントの送り先として指定した住所、受注や配送の情報、支払い状況といった顧客にまつわるデータだけではありません。各部署の予実データなども含めれば、フロント、バックオフィス問わずさまざまなものが存在しており、これらを統合できれば各データに意味づけができるようになります。例えばプレゼントの送り先住所データを生かして、近所の実店舗で開催されるフェアの案内を出すなど、顧客を起点にコミュニケーションを広げていくことも可能ですし、同時にそのコミュニケーションによって生み出されるROI※2についても一元的に管理することができます」(諸留氏)

※2:Return On Investmentの略で、投資利益率の意味

 ただ、「バックオフィスの情報をフロントエンドに伝えてマーケティングに生かす試みは、まだ多くない」と小野氏は指摘する。使い方が分からないデータや、そもそも目にしていないデータが未整理状態で、膨大に存在するためだ。

 こうした社内にある全ての顧客情報を統合し、フロントエンドで活用できるようにするのがオラクルの「Fusion CX(Oracle Fusion CX)」だという。オラクルには数多くのFusionファミリー製品があり、CXはその1つ。全てのFusionアプリケーションを動かすインフラとして、Fusionプラットフォームも用意する。機能の特徴を小野氏に聞いた。

 「Fusionは入口から販売、経営管理などのバックエンドまで、インダストリーごとにエンドツーエンドで企業のビジネス活動をサポートする製品群の総称です。その中でもFusion CXは、フロントエンドのマーケティングとサービス、それにセールスを支援するアプリケーションとしてご提供しています。見込み客として出会ったときから、購入した商品、金額、配送の時期など入口から出口まで全ての履歴を、顧客を軸にしてひとつのデータとして流すことができます。全情報を一元化できるため、各部署でデータが重複することもなくなり、かつ顧客をユニークに捉えることができるため営業活動にも有用です。

 一元化されたデータの使い道の1つは分析です。ERPが契約後データの結果を分析し、CXはマーケティングや営業活動など契約前データの経過や予測を分析しますが、それぞれ業務に必要な専用のAI・ML分析機能を標準実装しています。これにより経営においては、事業部署を横断した単一の基盤で、ユニークなデータ群が生み出すインサイトを得ることができます。それを基に営業戦略や財務戦略を練れば、新たな勝機を得ることもできるはずです。これをグループ会社や国境を超えて実現できるのはオラクルしかないと思います」(小野氏)

顧客の360度ビューを実現するUnity CDP Fusionとの相乗効果は?

 Fusionの顧客情報をひも付けながら、さらにWebやモバイルアプリなどから得られるトランザクションなデータまで統合して、マーケティング活動を支援するのが「Unity CDP(Unity Customer Data Platform)」だ。小野氏はFusionとの関連性を次のように表現する。

 「Fusionで統合したデータは財務や会計にもリンクする情報です。一方で、マーケティングや営業活動の入口には、『この顧客はこの広告をクリックした』など、財務上は意味がなくても顧客のエンゲージメントを高める上では重要な情報が豊富に存在します。

 このような顧客周辺にある、粒度が細かくて種類が多く、ボリュームも大きな情報を全て取り入れて、顧客の『360度ビュー』を実現するのがUnity CDPです。Unity CDPに集約した情報はマーケティングのアプローチや営業活動のほか、顧客にあわせたサポートへの活用など、部署ごとにどのようにも使うことができます」(小野氏)

photo FusionとUnity CDPの相関図。Unity CDPで実現した顧客の360度ビュー(マーケティングデータ)も包括するかたちで、Fusionが全部署を横断したデータ基盤を構築する(提供:日本オラクル)

 一般的なCDPによる360度ビューは、情報を取り込んでつないだ状態になっている。Unity CDPはさらにそこから一歩進んで、「搭載したAIが顧客へのアクションを提案できることが特徴」だと諸留氏は解説する。

 「統合された360度ビューを実現できても、そこから価値を見つけ出せなければ意味がありません。Unity CDPはAIがインテリジェンスをもって見いだしたインサイトや、顧客の姿をスコアにて視覚化、同時に適したアプローチ方法を提案します。サブスクリプションビジネスの場合は解約が発生するスコアが高まっていることを知らせて、次の一手を提示するといったことも可能です。このようにインサイトや価値をビジュアライズできる点が、Unity CDPの360度ビューが持つ優位性ではないでしょうか」(諸留氏)

必要なときに必要な人へ、効果的で効率的なコミュニケーションを実現

 Unity CDPの活用には好例がある。「オラクルレッドブルレーシング」だ。レッドブルレーシングはファンマーケティング領域でUnity CDPを活用している。過去のコンテンツ閲覧履歴などから随時収集しているデータを基に、瞬時に「いつ、誰に、何を、どのチャンネルから送るべきか」を判断。情報を求めているファン“だけ”に、マーケターが最適なタイミングで最適なコンテンツを提供するのに生かしているという。

 「F1ファンの興味や関心は、レースの直前と最中、それにレース後と、時間とともに変化します。レースの最中であれば過去の対戦成績を、レース後ならエンジニアたちの動きなどビハインドザシーンをすぐに見たいと考えます。多くのマーケターが困っているのは、ターゲットセグメントを切る際の条件設定ではないでしょうか。セグメントの抽出条件については、顧客データとアプローチ内容との相関を深く理解している必要があります。それをUnity CDPでは、『ビハインドザシーンを見たいスコアが高い人を抽出する』と条件を組むことで、一発でターゲットを割り出せます。

 コンテンツを、今この瞬間に必要としている人に届けるためには、AIやマシンラーニングのようなインテリジェンスとともに、簡単にセグメントを切ることができる仕組みが必要です。これまで運用者が強いられてきたデータリテラシーをCDPそのものに載せていくことで、データの活用を強力にサポートできるのがUnity CDPです」(諸留氏)

 ほかにもUnity CDPを活用している企業には、フェラーリやマツダ(欧州事業)などがある。自社のブランドを理解してもらうとともに、いかに顧客に満足してもらうかといったエンゲージメントを高める用途に使われているという。もちろん、トップラインを上げるためにも有効だ。

 「ある外資系の保険会社では、データを理解した上でコミュニケーションをとると、12カ月間での解約率が5分の1に下がったケースもありました。規模の大きな会社では、事業領域によってマーケターが変わることがありますが、この場合、力量の差が成果に影響を与えかねません。全体のマーケティング成果を一気に底上げできることも、Unity CDPのポイントですね」(小野氏)

増え続けるデータと高度化する活用法 今マーケティングに必要な視点は?

 先述した通り、FusionアプリケーションとUnity CDPは相互に連携する。経営の分析をFusionで行って、トップラインを上げていくためにフロントエンドでUnity CDPを利用するといった形で併用すれば、大きな効果を得ることができる。

 データの量が今後も増大していくことは間違いない。総務省によると、自動車などで需要が高まっているIoTデバイスの数は、2020年が253億台、21年が277.9億台、22年が309.2億台と毎年増え、さらに23年には340.9億台にまで増加すると予想されている。小野氏は、企業は今後、大量のデータと高度に向き合っていく必要があると指摘する。

 「大量のデータを処理していくにあたり、人手だけに頼ることには限界があります。人の頭はもっと戦略的なことや、例えば泣いている人がいたら慰めるような、心の機微に触れる部分で使うべきではないでしょうか。データの量や質、種類に向き合うには、処理を高度化していくしかありません。それに耐えられる仕組みや基盤を、Fusion、Unity CDPを中心に提供していければと考えています」(小野氏)

 日本オラクルでは導入前のアセスメント――データ活用により問題を解決する手前で、問題そのものが何なのかを発見する部分や、導入後のコンサルティングなども含め、Fusion CXやUnity CDPの運用をエンドツーエンドでサポートする。データを利活用したマーケティング、顧客とのコミュニケーション強化に取り組む際、日本オラクルが心強い味方になることは間違いないだろう。

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提供:日本オラクル株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia ビジネスオンライン編集部/掲載内容有効期限:2023年2月9日