中小企業のDX、多くの経営者は気付き始めている “攻める”ために必要な“守り”とは何か? Wewillの対談で知る浜松から中小企業のDXを支援

» 2023年02月09日 10時00分 公開
[ITmedia]
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 少子高齢化によって日本は人口減少の一途をたどっている。総人口が減少するということは、労働人口も減るということ。こうした時代の中で経済的な成長を目指すなら、企業は労働生産性を高める必要がある。特に中小企業はデジタル化の遅れや業務の属人化といった課題を抱えていることも多く、事業継続性のリスクも各所で指摘されている。

 そうした状況を改善したいと動いている企業の一つが、静岡県浜松市を拠点に中小企業のDX推進コンサルタント事業を手掛けるWewillだ。

 同社は中小企業庁の補助金「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(ビジネスモデル構築型)」の交付を受け、希望する企業に無償でDXに関する教育プログラムを提供している。

 具体的には「事業DX教育プログラム」を設け、新規事業やスタートアップのコンサルティングを手掛けるユニコーンファームの田所雅之氏(代表取締役CEO)による新規事業創出に向けた講義を行ったり、事業計画の策定といったアクションを支援したりするものだ。

 Wewillは本プログラムの周知を図るために「人口大減少時代に生き残る中小企業になるには」と題したセミナーを2022年12月に開催。同社代表取締役で税理士でもある杉浦直樹氏がモデレーターを務め、前述した田所氏や日本総合研究所の東博暢氏(リサーチ・コンサルティング部門 プリンシパル)が登壇した。

 彼らが語る“中小企業のこれから”というトピックや、Wewillが考える「守りのDXを推進するための方策」について、人ごととは思えない読者もいるはずだ。セミナーの内容や同社へのインタビューを中心に、その中身を探ってみよう。

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地方の中小企業にも「DX」の意識が芽生え始めている

 人口減少は「人が老いていく=街が老いていく」ということでもある。都心部にある街は再開発の対象になる場合も多いが、地方になると簡単にはいかない。街全体の活気がなくなり、人や街の“老朽化”が進むと、都心と地方の差は開く一方だ。浜松を中心に事業を行っているWewillもそんな危機感を募らせていた。

 同社は日ごろから中小企業と関わる中で、もともとBCP(事業継続計画)などを中心に環境整備に向けて努力する企業が増えていることを実感していた。さらに昨今はウクライナ危機によってサプライチェーンの分断が発生し、モノが入ってこないという事態に直面した企業も多かった。リスクに対する意識が一気に高まったことで「積極的にDXに取り組んでいこう」というマインドが中小企業の経営者の間で醸成されつつあった。

photo 日本総合研究所の東博暢氏(リサーチ・コンサルティング部門 プリンシパル)

 「『DXの一環として何か事業を興していこう』といったスタートアップマインドを持つ積極的な中小企業があります。彼らを応援する動きが(官民で)活発化しており、中小企業庁の中でも支援の働きかけが生まれています」(東氏)

 「DX=大企業がやるもの」──ではなく、こうした動きは会社の規模を問わず非常に重要であると東氏は続ける。「例えば、変革を起こせる人材を育てようと文部科学省も働きかけており、大学の教育も変わってきています。今後、産官学の連携ネットワークはさらに広がっていくでしょう。『人が変わる、大学が変わる、社会が変わる』という、この3つを進めないと日本は維持できません。大企業、中小企業、小規模事業者などは関係なく、イノベーションを担う一員として頑張っていかなければなりません」(東氏)

新規事業は顧客視点で考える

 一方で、田所氏が中小企業を支援している中で感じたことは「(DXであっても)顧客視点で考えることが大事」であると話す。

photo ユニコーンファームの田所雅之氏(代表取締役CEO)

 「(DXの一環として)新規事業を興すというと小難しい話に聞こえますが、そんなことはありません。(ビジネスを生み出すことについて)良いと思ったタイミングを見定めた上で、それを定量化、標準化して社内に横展開することが大事です。その際には“データ活用”のような注目のテクノロジーを使うことも重要ですが、それはあくまでも手段。本質として一消費者心理、顧客心理を捕らえることが大事です」(田所氏)

 ビジネスは顧客があってこそであり、その基本は変わらないといえる。そう考えると、ビジネスのアイデアを考える上で少しハードルが下がったようにも思えてくる。

 田所氏はビジネスに変化を起こし続けることの重要性について、次のような例を挙げた。「デジタルカメラがフィルムカメラを置き換えたように、今度はスマートフォンがデジカメを置き換えている。ボイスレコーダーも取り込もうとしている。最初は市場シェアが高いプロダクトであっても、他のプロダクトの台頭により、市場から消えていく。自動車もまだガソリン車が走っているが、プラグインハイブリッドからEVへシフトしていく──10年スパンで見ると、いかにして新事業を探索するかが大事なのか分かるはずです」

 「イノベーションって基本的にしんどいですよね。人間は保守的だし、強制的に新たな分野を探索しなければなりません。顧客の心理はどんどん変わっていくので、その中でいかに発見と探索をしていくかが大事だと思います」(田所氏)

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 そうした中でも、中小企業にはフットワークの軽さを感じると田所氏。意思決定者と現場の距離が近いからで、これはスタートアップにも通じるところがあると話す。ただし、実際に新しいことに挑もうと一歩踏み出そうとすると、社内カルチャーが行く手を遮ることもある。

 「社内カルチャーを変える近道は成功体験です。スモールスタートでも成功体験があれば、社内で注目され、徐々に変わっていきます。あるいは中小企業は経営陣が変わればすぐに変わる。トップが変わるのが重要です」(田所氏)

守りのDXを推進するためには

 ここまでに言及してきたものは、いわゆる“攻めのDX”に分類される。ビジネスに変革を起こして、これからも企業や組織の事業を継続させていくというものだ。しかし、攻めるためには守りも機能させる必要がある。

 Wewillの杉浦氏は、攻めのDXを行うためにまずは企業のDXをレベル1〜5のフェーズに分類した上で、地盤固めとしてバックオフィスのDXを推進する“守りのDX”から整えていくのが重要だと説明する。

企業のDXをフェーズで分類
レベル1 事務業務の可視化
レベル2 事務業務のデジタル化
レベル3 ナレッジのシステム化(脱属人化)による業務継続性
レベル4 士業も含めてレベル3の状態になる
レベル5 持続的な経営のアップデート

 その理由は次のようなものがあると杉浦氏。まずは攻めのDXに挑むためのオペレーションを担うバックオフィス業務を、変化に強い部門にしておかなければならないというもの。攻めのDXの“試行錯誤”に対応できるだけの耐性が必要だ。

 そしてバックオフィスにおけるDX、もっと具体的に言えば事務DXを行うことで、社内外とのコミュニケーション手法が変わり、そこから社風、マインドが変わっていく効果があるという点だ。事務DXを通じて「変化を楽しむ」「オープンかつフラット」というカルチャーが生まれる。これがいわゆるマインドDXで、攻めのDXを行う際に必要な前提になると杉浦氏は解説した。

 では事務DXのベースとなる社内の可視化、デジタル化、ナレッジのシステム化を遂行する上で、つまずきやすいポイントはどこにあるのか。杉浦氏によれば、その答えは3つある。

 1つ目は、プロジェクトのゴールが明確に定められているかどうかだ。このDXプロジェクトは何を成し遂げるのか、このゴールに経営者も含めたメンバー全員がコミットする事が大切となる。

 2つ目は、社内にある情報の正しさを誰が判断して確定させるかどうかだ。決定権を持つ“旗振り役”が決まっていないと、メンバーは何が正しいのか分からなくなってしまう。

photo Wewillの杉浦直樹氏(代表取締役 税理士)

 3つ目は、内向きの発想に陥らないかという点だ。社内の慣習や個別事情等に影響されては本質的な変化は起こせない。変化には旧来のやり方を抜本的に変える覚悟が必要だ。

 これらを回避するための工夫は、外部の知見を活用することだと杉浦氏は説明する。「一時の大掛かりなプロジェクトでは、まさにPMBOK(Project Management Body of Knowledge)のようなプロジェクトマネジメントの手法が必要です。これらの知見を持つ外部の専門人材と協業することで、つまずきやすい点を回避できるでしょう。また、今は変化の時代にあり、変化への適応は終わりがありません。従って、プロジェクト終了後も日常的に外部の知見と協業し続ける仕組みが必要です」

着目したい「士業」のDX

 先ほど示した企業のマネジメントのレベル分けを見ると「士業」が特段触れられていることに気付くだろう。税理士、社労士、司法書士、弁護士等を指す士業は、それぞれの事務所がそれぞれのやり方でサービスを提供している。中小企業は士業側から求められた資料を提供し、士業はその資料を再整理して自己の業務に用いる。

 実は、現場事務の作業と士業側の作業は同じ情報を基に再整理しているという面があり、重複作業になっていると杉浦氏は内情を話す。また、士業からの指導は口頭やチャット、メール等で行われるため、知見が中小企業の内部にたまりづらい現状もある。士業の指導により現場事務員の知見がアップデートされれば、実は士業はより専門的な課題解決に注力できる。

 士業と企業側のコミュニケーションやコラボレーション環境をアップデートすることで、企業側はより士業の知見を引き出せるのではないか──と杉浦氏。士業との協業により、事務員がナレッジワーカー化する導線を作ることができるのではないかという仮説に基づいている。

 ここまでの経営改革が達成できると、それは守りと攻めのDXの両方が常に実現できている状態(レベル5)だといえる。だがいきなり一企業が自分たちだけで達成できるものではない。杉浦氏らも今回の中小企業プロジェクトのように、新規事業創出の伴走を支援するサービスを組み込んで実現させていくことを現実的に想定している。

 そこでWewillでは、自社で提供するDX伴走支援サービスに次のような4つの特徴を持たせている。

 1つ目はプロジェクトマネジメント手法にのっとり、毎月のプロジェクトマネジメント会議でゴール達成に向けたQCDを管理するということ。

 2つ目は現場伴走型で、現場で一緒に作業を行うことで現場の負担を減らしつつ、同社が可視化を行うということ。

 3つ目は、あらゆるSaaSの中から各社に適したものを同社がセレクションするということだ。

 最後がプロジェクトの出口で、バックオフィス支援によって蓄積された知見を集約したWewill独自のクラウドサービス「SYNUPS」による継続的な変化適応体制を構築する点となる。

 SYNUPSは企業情報を統合する機能を有しており、客観的な分析が行える環境を用意。またSYNUPSにはどこの誰がどのような知見を持っているのかという「人の情報」も蓄積している。この情報を活用することで、新規事業や既存事業の深掘りをマネジメントするような仕組みに発展させていきたいと杉浦氏は考えている。

浜松から守りのDXを広めていく

 今回の支援事業(事業DX教育プログラム)は浜松エリアの中小企業を対象にしている。浜松だからこそ期待しているものなどはあるのか。杉浦氏は「浜松には今の日本産業の礎を築いてきた企業が数多く存在する。今後も“やらまいか精神”で裾野の広い新しい産業がこの地から生まれることを期待している」と説明する。

 杉浦氏は外部人材と協業し続けることが、企業が変化の時代を乗り越える1つの解だと考えている。「スタートアップはより積極的に、外部人材を社内マネジメントサイクルへ組み込む必要があります。立ち上げから資金調達を経て、IPOないしM&Aまで短期間で事業フェーズをあげていくスタートアップは、よりバックオフィスがボトルネックになるリスクが大きいでしょう」

 Wewillはこれまで手掛けてきた支援の知見をまとめて、スタートアップのバックオフィスに特化した支援サービスも立ち上げる予定だ。「短期間で劇的に変化するスタートアップのバックオフィスを各段階で適切に伴走するサービスとなるのでご期待ください」(杉浦氏)

 中小企業において、本気でDXを推進したいと考えているなら、まずはWewillの取り組みに注目してみてはいかがだろうか。

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提供:株式会社Wewill
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia ビジネスオンライン編集部/掲載内容有効期限:2023年3月5日