ICT教育を成功させるコツ 子どもの「生きる力」を育み、先生の校務負担を減らすには? 有識者が解説

» 2023年02月24日 10時00分 公開
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 いま、学校教育が次世代の学び方に進化しようとしている。「GIGAスクール構想」によって IT 端末が1人1台整備され、 ICT 教育の下地ができた。そして先生の働き方改革やコロナ禍の波が、学びのデジタル化を迫った。

 しかし実際には、急激に変わる教育環境に対応できていないケースも多い。背景には、使い慣れない ICT 機器を授業に生かしたり新しい授業を構築したりする難しさがある。

 では、 ICT をどう活用すればいいのか。変わる子どもたちと教育環境への向き合い方を探るべく、ITmedia ビジネスオンライン編集部では有識者を招いたオンラインセミナー「学びの“カタチ”を見つめなおす」(2022年12月17日)を主催した。今回はそのレポートを通して、子どもにも先生にも役立つ ICT 教育の在り方やツールの活用方法を紹介する。

文科省×専門家対談 「GIGAスクール構想の後退はあり得ない」

 セミナーはGIGAスクール構想の現在地と ICT 活用のヒントについて話す対談セッションで開幕した。登壇したのは、同構想を担当する文部科学省の山田哲也氏(初等中等教育局修学支援・教材課長)と、学校 DX を研究・支援する元教員の平井聡一郎氏(情報通信総合研究所)だ。

photo 文部科学省の山田哲也氏(初等中等教育局修学支援・教材課長)

 山田氏は開口一番に「GIGAスクール構想を前に進めることが重要で、後退はあり得ない」と話した。1人1台端末と大容量の高速ネットワーク通信を学校に整備したが、それがゴールではない。それらを活用して「個別最適な学び」「協働的な学び」を実現し、教育の質を高めていくことが目的だ。

ICT 活用は「英検」のようなもの? 3級と2級に壁がある

photo 平井聡一郎氏(情報通信総合研究所)

 そもそも ICT 教育を進めるのは、改訂版の学習指導要領にある「生きる力」を養う学びを実現するためだ。それを具体化したものとして、平井氏は経済産業省が「未来人材ビジョン」で示した「問題発見力」を挙げる。これを育むのが探究的な学習で、その武器としての ICT というわけだ。

 しかし、その ICT 教育がなかなか進まない。文部科学省の「令和4年度全国学力・学習状況調査」によると、 ICT 端末を授業で毎日使っている学校は、小学校・中学校ともに全体の約50%だった。そこから一歩進んで「自分で調べる場面」で毎日使っているのは小学校・中学校ともに全体の20%程度になり、「考えをまとめて発表する場面」ではさらに減少する。

 平井氏はこの状況を「英検」に例える。調べる場面は4級、考えをまとめる場面は3級に相当するという。ここまでは基礎編で、2級になってようやく新しい学び方になる。想定シーンとしては、考えをまとめた資料をクラウドにアップロードして、子どもたち同士でコメントし合う使い方だ。本物の英検同様、3級と2級の間に大きな壁があり、越えるのが難しいと平井氏は話す。

ICT 活用の具体例 小さな成功体験を作る

 では ICT 教育をどう進めていけばいいのか。大切なのは普段使いを浸透させることだと両氏は強く訴える。

 「まず使う。いつでも使う。どこでも使う。自由に使う。最初はハードルが低い使い方から始めて、『これって便利だね』と実感してもらえば次につながります」(平井氏)

 具体的な使い方としては、先生と子どもたちのコミュニケーションを Microsoft が提供する教育プラットフォーム「Teams for Education(以下Teams)」に置き換える、プレゼンテーション資料をクラウド上で共有して共同編集する、お互いにコメントを入れてみるなどだ。小さな活用が ICT 教育を大きく進めていく。もし分からないことがあれば、文部科学省が運営する「GIGAスクール運営支援センター」に相談すると、専属の ICT コーディネーターが課題解決を助けてくれる。

 「1人1台端末の整備が進み、かつてない良い環境ができました。これを持続していくことが大切です。もし手放してしまったら、もう戻ってこないでしょう。 ICT 活用を進めて、子どもたちの学びに役立ててほしいです」――山田氏は対談をこう締めくくった。

photo GIGAスクールを基盤にした教育の姿(山田氏の資料より/クリックで拡大)

教育 YouTuber の葉一氏「学びのヒントは子どもが持っている」

photo 教育 YouTuber の葉一氏

 「これからの学びのヒントは子どもたちが持っています。教育の主役は子どもで、大人はサポート役だと思っています。子どもたちが何を求めていて、どういった世界に生きているのかを知るのが重要です」――こう話すのは、セミナーに登壇した教育 YouTuber の葉一氏だ。

 同氏は、小学校3年生〜高等学校3年生向けの授業動画を投稿する YouTube チャンネル「とある男が授業をしてみた」を運営している。12年にチャンネルを開設してからの総再生回数は6億回を超える。

 授業動画では、最初に練習問題を映してから解説をする。子どもたちの視聴方法は、授業として全編を見る、動画を止めて問題を解き、動画終盤の解答パートまでスキップするなどさまざまだ。実はこの使い方を葉一氏が教えているわけではない。復習や予習、練習問題として使う方法は全て子どもたち自身が編み出している。新しいツールやコンテンツを活用する力を子どもたちは持っている。

 そんな子どもたちを指導するに当たり、葉一氏が重視するのが達成感や成長実感を覚える仕組み作りだ。最近の子どもに目を向けると、動画を倍速再生で見ることが増えた。「10分の動画は長い、15秒で結末がほしい」「このコンテンツを見れば(使えば)こんな良いことがある」という効果をすぐ手に入れたいと思う傾向が強まっているようだ。

 そこで葉一氏は、動画の最初に練習問題を示して学ぶ範囲、つまりその動画で得られるものを明確化している。その経験から、成功のイメージを子どもたちに持たせることが大切だと話す。

 そして講演の最後には、これから学びの選択肢が増える中で学校教育が進化し、さらに YouTube やさまざまなサポートツールが広がれば、子どもたちは良い学びに触れられると語った。

教育分野で25年の経験 Sky の“オールインワン”学習システム 校務負担も軽減

photo Sky の大川浩平氏(学校 ICT 活用コンサルタント)

 教育分野のサポートツール開発を25年に渡って手掛けてきたのが、大手IT企業の Sky だ。同社では、 ICT に慣れる導入段階に始まり、最終的には子どもたちが日常的な文房具として使えるようになるまで寄り添って支援するツールの提供を目指していると、セミナーに登壇した Sky の大川浩平氏(学校 ICT 活用コンサルタント)は話す。


photo Sky の山本百合香氏(インストラクター)

 そんな同社が学校向けに展開するツールが、クラウド型の Web システム「SKYMENU Cloud」だ。1人1台端末をフル活用できる機能がそろっており、先生と子どもとの円滑な情報共有による双方向型の授業や、子どもたち同士でリアルタイムに意見を交換できる協働的な学びをサポートする。先生と児童、生徒がいつでもどこでも学びに向き合える環境を支援すると、 Sky の山本百合香氏(インストラクター)は説明する。

 SKYMENU Cloud は、プレゼンテーションや共同作業などさまざまな場面で活用できる。例えばテキスト入力の他、画像や動画を添付できる「発表ノート」は、理科の実験の動画を貼り付けて、気付いたことをメモして提出するなど、デジタルならではの利点を生かした機能だ。さらに「グループワーク」機能を使用すると、複数人が同じファイルを編集するなど協働的な学びに対応できる。先生の視点では、添削や再提出がオンライン上で完結するため、作業時間の短縮につながる。

 また子どもたちの学習を、先生がしっかり見守れる機能も備えている。「画面一覧」機能は、各端末の画面を先生側で一括表示できるもので、作業の状況を一目で確認できる。そのため、困っている子どもにいち早く気が付けるので、速やかに必要な支援ができる。また、思考の過程を可視化する機能「ポジショニング」や、端末ログから学習状況を把握する機能「利活用ログ」もあり、 学習を一元的に管理し、 ICT 活用を支援する機能が丸ごとそろっている。

photo SKYMENU Cloud で子どもたちの考えを共有する方法(クリックで拡大)

社会人が使うツールを学校向けに 「Microsoft 365 Education」をどう使う?

 日本マイクロソフトが、多くの企業が活用している「Office アプリケーション」やデバイス管理機能、セキュリティ機能を教育現場のニーズに合った教育特化のソリューションパッケージとして提供しているのが「Microsoft 365 Education」だ。

 Web ブラウザ上で利用できる無料の Office だけでなく、モバイル端末や PC にインストールして使う Office も提供しており、ネットワークがない環境でも使えるのでさまざまな学習環境に対応した平等な学びをサポートできる。

photo 日本マイクロソフトの佐藤正浩氏(文教営業統括本部)初等中等教育ICTソリューション担当部長)

 企業などで使う通常版を基にしたツールなので、子どもの ICT 教育はもちろん、先生の働き方改革としても活用できる。先生たちが業務の中で使い方を学び、授業に応用することで ICT 教育を成功に導けると、日本マイクロソフトの佐藤正浩氏(文教営業統括本部 初等中等教育 ICT ソリューション担当部長)は紹介した。

Microsoft 365 Educationは、 クラウドベースで利用が可能なため Web ブラウザ、端末、 OS に依存せず、子どもたちは同じ環境で学べる。また全てのデータをクラウド上で扱えば、更新内容を自動保存するのでトラブルが起きても元に戻せる

Microsoft 365 Education では、教育に特化した Teams である「Teams for Education」を中核にして課題の配信や採点、 Word や PowerPoint の共同編集などが可能だ。ある高等学校の数学科では「Microsoft OneNote」の内容をクラスメート同士が見られる設定にしていた。すると画面上に手書きで板書する、写真を貼り付ける、 YouTube の動画を挿入するなどの使い方を生徒同士が試して共有するようになった。

photo 教育シーンで使える Microsoft 365 Education のツール

 さらに Teams の「Education Insights」という機能を使えば、 Microsoft 365 Education の利用データを基に学習ログをグラフ化して、授業へ参加率や課題の提出状況などを一目で確認できる。教育委員会や自治体単位で PC の操作ログや学力テストの結果などを把握することも可能だ。データを可視化することで、これまで先生の経験に頼っていた部分を客観的に捉えて、授業や教育施策の更新に役立てられる。

教育現場の ICT 活用方法 3人の先生が紹介

 では、実際の教育現場では ICT をどう活用しているのか。セミナーの最後では、現役の先生を3人招いて、各校での取り組みを紹介してもらった。登壇したのは、東京学芸大附属小金井小学校の小池翔太先生、山梨県立青洲高等学校の佐藤朗先生、神戸市立若草小学校の久保田智子先生だ。

 ICT の活用例としては、掲示板や連絡帳の代わりに Teams を使う、授業の振り返りをアンケートツール「Microsoft Forms」に入力する、 Teams と SKYMENU Cloud を連携して学習ノートを作るなど基礎的な用途を着実に進めていた。

photo 神戸市立若草小学校の久保田智子先生

 「児童が端末を自立して使えるようになり、ようやく授業での効果的な活用の入り口に立てた気がします。これから児童が学び方を自分で考え、主体的に活動できるように取り組んでいきます」(久保田先生)


 いま学校で教えるのは教科書の内容だけではない。子どもたちの生きる力を育てる必要があり、そのためには ICT の活用が欠かせない。まだ先生も子どもたちも手探り状態かもしれないが、成功事例のノウハウやサポートツールを活用しながら一歩ずつ地道に進んでいくことが大切だと気付かされるセミナーだった。

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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia ビジネスオンライン編集部/掲載内容有効期限:2023年3月2日