今、北の大地に“アツい”視線! なぜあの企業は「北海道型ワーケーション」を選んだのか?

» 2023年03月03日 10時00分 公開
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 コロナ禍以降に普及した新しい働き方である、リモートワークとワーケーション。前者はすでに多くの企業に定着している。しかし後者はどうか。「仕事なのか余暇なのか分からない」といった判断の難しさがネックになり、導入に二の足を踏む企業も多い。

 そのような中、企業が抱える懸念を「オーダーメイド」という独自のスタイルを打ち出すことで払しょくし、新たなワーケーション体験を提供しているのが北海道だ。“リピート企業”も抱えているという「北海道型ワーケーション」は何が違うのか? 北海道庁と実施企業、受け入れ先の自治体を取材した。

プランを「オーダーメイド」? 北海道型ワーケーションとは

 北海道というと厳しい寒さを連想するが、春は花粉が少なく、梅雨もなく、夏は冷涼、残暑も短い。秋〜冬にかけては、建物の中はどの地域よりも暖かく保たれており、実は「快適に過ごせる期間は長い」。そう話すのは、道庁の林正紀氏(総合政策部 地域創生局 地域政策課 移住交流係 主査)だ。しかし、いちばんの魅力は地域の多様性にあるとし、林氏は続ける。

photo 冬のイメージが強い北海道だが、年間を通じて、都心より快適な環境の中で仕事ができるのだとか

 「北海道の市町村数は全国一多い、179。北海道型ワーケーションは、多数の個性ある市町村が持つ価値を生かすことで、企業のニーズに適したプランを個社ごとにご提案できる点が最大の特徴だ」(林氏)

 市町村が持つ価値とは、自然環境によるリフレッシュ効果や、アクティビティ体験だけを指すのではない。林氏は「地域の課題、環境を資源に」と表現し、SDGs教育の一環で環境教育に取り組む例や、北海道ならではの環境を通してチームビルディングに生かす例も多いと話す。これは、道庁が滞在先となる自治体と連携しながら企業にヒアリングをすることでニーズを把握し、プランをコーディネートする北海道型ワーケーションだからこそ実現可能な体験だ。

 では実際に、事例企業はどのような目的を持って、どのような北海道型ワーケーションを実施したのか。富士通×釧路市、リコー×富良野市の例を聞いた。

<富士通×釧路市>富士通が目指す“三方よし”のワーケーション

 富士通では、全国9つの自治体と「ワーケーションパートナーシップ協定」を締結することで全社的にワーケーション推進に取り組んでおり、全国で初めて協定を締結したのが北海道だ。社員個人が余暇を兼ねて実施するワーケーションのほか、業務の一環として社員を派遣する「モニターツアー」と呼ばれるワーケーションを用意している。モニターツアーの滞在先は、パートナーシップ協定を締結している自治体から選択する形だ。

※23年2月上旬現在

photo 富士通 総務本部 ワークスタイル戦略室 担当 大野遥子氏

 富士通の大野遥子氏は、同社におけるワーケーションの狙いに「ウェルビーイング」「キャリア形成」「地域課題解決」「チームビルディング」の4つを挙げる。こういった効果がワーケーションで本当に得られるのか、それを検証するのがモニターツアーであり、その第1回目の開催の地に選ばれたのが北海道釧路市だった。

 選定理由は、空港から各施設までの二次交通の利便性が高いこと。加えて、「ウェルビーイング」にひも付くリフレッシュ効果や生産性向上、そして「キャリア形成」にひも付く新たな知見や学びの機会の提供といった内容全てを実現できる環境に魅力を感じたためだという。実際の行程にも、リモートワーク、阿寒湖周辺で森林保全事業を行う団体との交流、アイヌ民族文化体験といった地域ならではのアクティビティ体験など、多様なメニューが盛り込まれた。

 地域住民との交流会では、NPO法人阿寒観光協会まちづくり推進機構や道庁担当者との意見交換を行い、今後どのように地域貢献できる可能性があるのか議論を交わしたり、個々で考えたりする機会を得た。実際にその後、他県で実施したワーケーションの地域交流をきっかけに「社員個人が副業として自治体とつながりを持った例もある」(大野氏)

 また大野氏は、コロナ禍で社内のリアルコミュニケーションが減少したことに言及。「北海道でのワーケーションを短期集中型のチームビルディングに生かせたことは、参加社員の心理的安全性を向上させる意味でも非常に効果的だった」と振り返った。

 「アクティビティやリモートワークなど皆で行動を共にすることで、オンライン上では気付かなかったお互いの性格が見えてくる。参加社員からは『チームとして強くなった』『絆が深まった』という意見をもらっており、非常に貴重な体験になったようだ。

 また、ワーケーションは『旅行をしながら仕事をする』ものではなく『働く場所の選択肢の一つ』であるという認識が強まった参加社員も多い。これは、多様な体験ができる北海道型ワーケーションだからこそ得られた効果であり、ワーケーションの良さを社内に広める大きな一歩になったのではないか」(大野氏)

ALTALT 富士通が釧路市で実施したワーケーション風景。左が阿寒湖散策を兼ねたカヌー体験、右がアイヌ文化体験の様子。「リモートワークとアクティビティ両方を組み込んだ行程となったが、業務の一環としてスケジュールを組んでのぞんだため、参加社員は時間をより意識し集中して業務に当たれたようだ」(大野氏)

 その他、富士通はワーケーションパートナーシップ協定を締結している自治体同士をつなぐ取り組みにも注力している。22年の年末には、8つの自治体をリアル会場に招きワークショップを開催。それぞれの取り組みを紹介し合いながら、ワーケーションを盛り上げていくにはどうすればいいのか意見交換を行った。

 大野氏は「ワーケーションは社員、企業、そして受け入れ先の自治体、全てに“三方よし”でなければ広く浸透しないだろう」と話し、そのためにも企業と自治体、そして自治体同士が連携し、地域横断でノウハウを共有、ワーケーションを推進していくことが重要であると説く。富士通がその“ハブ”として機能するよう、今後も継続的にワーケーションを実施する考えだ。

異なる2つのワーケーションが体験できる釧路市 その魅力は?

 釧路市役所 及川昌洋氏(総合政策部 都市経営課専門員)は、「釧路市では、釧路港が近接する市街地での都市型と、先住民族のアイヌ民族が自然と共生する阿寒湖温泉地域でのリゾート型、2つのワーケーション体験をご提供できる」と説明。富士通から相談を受けた際も、滞在時のイメージ、目的等を事前にヒアリングした上で、地域の強みを紹介しながら質の高い滞在環境の用意に努めたという。

 「釧路市では、首都圏等から人、企業を新たに呼び込むために、総合人材サービスを提供するパーソルワークスデザインをパートナー企業として位置付けて、協業しながらワーケーションに取り組んでいる。今期は、新たに市街地の商業施設内に整備したコワーキングスペース『Sunset Office』を活用して、首都圏等から12社19人が参加したワーケーションを企画するなど、新しい試みにも挑戦した。今後はこれらの取り組みからノウハウを蓄積しつつ、道庁にも横展開しながら、北海道全体でワーケーションを盛り上げていきたい」(及川氏)

 また釧路市は、国や北海道と連携しながらアドベンチャートラベルを積極的に推進している。及川氏は「国立公園をはじめとする豊かな自然環境を生かしたアクティビティや、アイヌ文化等も体験可能な釧路市のアドベンチャートラベルはワーケーションとも親和性が高い」と話し、将来的には社員とその家族も楽しめるワーケーションを目指していくという。

※「アクティビティ」「自然」「異文化体験」という3つの要素のうち、2つ以上を組み合わせた旅行形態のこと

<リコー×富良野市>入社2年目社員をワーケーションへ その狙いは?

photo リコー 人事サポート室 企画グループ 働き方変革推進 担当 鶴井直之氏

 リコーは21〜22年度にかけて、合計6回のワーケーションを富良野市で実施しているリピート企業。実施形態は富士通と同様、企業が費用を負担する業務型ワーケーションで、北海道だけではなく和歌山県など他県でのワーケーション実績も豊富に持つ。しかしなぜ、富良野市に繰り返し足を運ぶのか。

 きっかけは、「当社代表の山下良則(取締役社長執行役員CEO)が出張で富良野市を訪れたことだった」と、リコーの鶴井直之氏は振り返る。

 「経済同友会で地域共創委員会の委員長も務める山下自身が、富良野自然塾が提供する環境教育プログラムの素晴らしさなどを体験し、富良野市役所や地元事業者とのつながりを得た。ちょうど同時期に、観光庁が『新たな旅のスタイル促進事業』に参画する企業・自治体の公募を行っており、富良野市とともに応募したところモデル事業に採択された。ご縁とタイミングに恵まれ、今日まで良い関係が続いている」(鶴井氏)

 ワーケーション実施にあたり、山下社長が出したオーダーは1つだけ、「参加者を入社2年目社員にすること」だったという。これについて鶴井氏は「コロナ禍に入社した新入社員は、リアルで集まる機会を得られないまま導入研修を終え、各部署に配属されている。同期の仲間意識を醸成する場がないという新入社員の現状を経営陣は大きな課題と認識している」と説明。1年目ではなく2年目なのは、ある程度、業務を経験した2年目社員の方が適切であるという判断からだ。

 なお、山下社長が体験したという富良野自然塾とは、ドラマ『北の国から』シリーズの原作・脚本を手掛けた作家、倉本聰氏が主宰する、自然返還事業や環境教育事業を主としたNPO法人。リコーの富良野市におけるワーケーションは、全て富良野自然塾の協力を得てプログラムが組まれている。

 鶴井氏は富良野自然塾の環境教育プログラムについて、「富良野市の森に入り環境について学ぶ、農作業の手伝いをしながら食料廃棄の課題を知るといったことを行う。リコーでは社員がSDGsを学び、その実践内容を社内外に広める活動を行っているが、座学だけでは自分ごととして捉えるのは難しい」と話し、五感を使って“自然を体感する”ことが重視されている同プログラムを称賛する。実際に、ワーケーション後「お客さま先でSDGsの取り組みを説明する際、うわべだけの説明しかできていなかったことに気が付いた」と話す社員もいたという。

 またこの他にも、市内の事業者と地域課題解決を検討するワークショップを実施したり、高校のキャリア教育授業でプレゼンを行ったりと、同社が体験したワーケーションのプログラムは実に多様であり、実践を伴うSDGs教育、そして地域交流の貴重な機会になっている。

名作ドラマが生んだ富良野の価値 実践的な学びの機会とは

 富良野市といえば、もともと全国的に有名な観光地。しかし、富良野市役所の松野健吾氏(総務部 企画振興課 企画振興係 主査)は「富良野市でワーケーション誘致をする上で、バケーション要素は押し出していない」と話す。

 「リコーのワーケーションには、『ふらの演劇工房』が指導するコミュニケーションワークショップを初日に必ず入れている。ふらの演劇工房もまた、倉本聰先生が興した演劇私塾から派生したNPO法人であり、演劇手法を使ったコミュニケーション力向上プログラムが多くの企業に高い評価を受けている。富良野自然塾、ふらの演劇工房と、富良野市は独自のエデュケーション要素を持ったプラン作成に優れており、実践的な学びを提供できる」(松野氏)

ALTALT リコーのワーケーション滞在先は富良野市。左はふらの演劇工房によるコミュニケーションワークショップの様子。右は富良野自然塾によるスノーシューツアー。スノーシューツアーでは、スノーシューを履き真冬の森を散策することで、環境について学ぶことができる

 コミュニケーションワークショップは、演劇を通して「コミュニケーションの基本」を体験するというもの。“はじめまして”の者同士であるリコー2年目社員も、初日にコミュニケーションワークショップを体験することで「人の話を聞く姿勢や、正しい伝え方を演劇のプロ指導のもとゲームを通して学ぶことができる」(松野氏)ため、距離感が一気に縮まるという。

 また観光地という意味では、「宿泊先が豊富にあることもメリットだ」と松野氏。民泊からドミトリー、ホテル、コンドミニアム、貸別荘まで滞在者が求めるニーズに応じて計画を立てられる柔軟さも、富良野市でワーケーションを実施する魅力だ。松野氏は「地域が持つ強みを生かし、『企業研修の聖地』を目指す」と展望を語り、リコーをモデルケースとした、北海道型ならぬ富良野型ワーケーションを広めていきたいと笑顔を見せた。

「休暇型」ではないワーケーションの効果を、北海道で

 ワーケーションは、まだ休暇型のイメージが強い働き方だ。しかし実際には、社員に学びの機会を提供する、自社ビジネスに寄与する機会に生かすなど、現地でしかできない体験を通し生まれる価値は非常に大きい。

 ワーケーションで得られる成果は、数日間の非日常体験を通し個々の中に「新たな発見」を積み重ねられることであり、それが議論の種になったり、コミュニケーションの潤滑油になったりすることで、社員や組織を活性化させる。これは、在宅やオフィスで働いているだけでは得られない効果だ。そして北海道ほど、広大で多彩な表情を持ち「新たな発見」を期待させる地域はない。今回紹介した釧路市、富良野市だけではなく、多様な魅力を有する市町村は数多く、そうした発見の芽がまだまだ多く眠っている。

 ぜひ一度、多角的な選択肢がある北海道型ワーケーションを体験し、新たな北海道の魅力を探してみてはいかがだろうか。

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