少子高齢化に伴う労働人口の減少により、生産性の向上施策として業界問わずDX推進が叫ばれている。特に人手不足が顕著な建設業界では、国土交通省が掲げる「i-Construction(アイ・コンストラクション)」の波を受け、ドローンやAR(拡張現実)などの先進テクノロジーを活用した業務の効率化、生産性向上に取り組む例が増えている。
埼玉県で中堅中小の建設会社に向け、建設資材や測量機器、OA機器の販売から、業務効率化のためのIT支援まで、さまざまな形で地域の建設業が抱える課題に取り組む新和測機(埼玉県春日部市)の事例もその一つだ。いま建設業界でどんな変革が起きつつあるのか。新和測機のi-Construction推進事業部で副部長を務める伊藤圭彦氏に話を聞いた。
1978年に設立された新和測機は、もともと測量機器を販売する会社だったが、現在では測量機器や土木用各種試験機といった専門的な装置だけでなく、土のうなどの工事資材、建設現場で使用する各種看板や仮設トイレ、オフィス機器など「建設業で必要なものはほぼ全て」(伊藤氏)取り扱っている。春日部本社を中心に3つの拠点を構え、その取引先の多くは埼玉県にある中堅中小の建設会社だ。
「もともと建設業は、“きつい・危険・汚い”といったネガティブなイメージや職人かたぎな古いイメージがありましたが、行政が推進するi-Constructionの波を受けて、一部の大手建設企業を中心にデジタル化の流れが加速しています」と伊藤氏は語る。
例えば、発注図面から3次元設計データを作成したり、建設現場の上空にドローンを飛ばし、そこで撮影した数万点の写真を点群データに変換して現況の3Dモデルを生成したり、さらにはレーザーでより精密な測量を行い、デジタル上で現場を完全に再構築したりといった取り組みも行われている。これにより、完成図と現況を重ねて構造物の干渉を検証する、あるいは逆に現場で建設予定の構造物をARで投影することも可能になる。
「ただ大手ではデジタル化が進む一方で、地域にはまだまだ小さな建設業者が多く、どうしてもデジタル化の進みは遅い」と伊藤氏は指摘する。その理由の一つが高年齢化だ。
「先進的なICT活用でなくても、新しいことを覚えるのはやはり若い方が有利だと思います。地域の建設会社は年配の方が多く、現場監督などの技能者の年齢層も上がっています。PCが苦手、という方は多いですし、そもそもDXの情報を知らないということもままあります。一方で、昔のネガティブなイメージから若い方はなかなか入りづらい業界なので、人手不足がさらに深刻化しています」(伊藤氏)
もう一つ、建設業における大きな課題は技術の継承だ。紙に引かれた平面図と横断図から3次元の設計を頭の中で再現したり、建設現場で長年の経験と感覚を頼りに重機を制御したりするのは、若手の技能者がすぐに習得できるものではない。そこで、3次元設計データを建設機械(ICT建機)に読み込ませることで、重機のセンサーを活用した自動制御や操作補助など、技能者の熟練度に左右されない取り組みも行われつつある。実はここ数年、3次元測量データのみの納品を依頼されるケースが倍増しており、i-Construction推進事業部では専任の測量士を増員しているという。
「測量から設計・施工計画、実際の施工、検査、維持管理に至る全プロセスでICTを活用することにより、工事にかかる人員や時間を大幅に削減し、かつ安全で魅力的な職場、業界に変えていくのが当社のミッションです」
実際、新和測機ではICT施工の支援を依頼する建設業者に対し、ICTアドバイザー(国土交通省関東地方整備局ICTアドバイザー制度)として、技術的指導やICT施工の講習会を実施している。
建設現場や建造物をデジタル空間上にミリ単位の精度で再現し、一方の現場ではICT重機による工事が行われ、ウェアラブルカメラやWeb会議システムを駆使して離れた場所から発注者が臨場(立ち会い)を行うなど、建設業はかつてSF作品が描いた未来を連想させるような激変のさなかにある。
こうした影響から「最近は特に高性能なPCの引き合いが強くなっています」と伊藤氏は語る。「もともと建設業者で使われる事務作業用のPCや、建設ソリューション大手のCADシステムとセットで販売する高性能なPCは取り扱っていましたが、建設DXが叫ばれるようになったここ数年は特に3次元のデータ処理を行うニーズが増加している印象です」。こうしたニーズにぴったりだったのが、マウスコンピューターのPCだったという。
「例えば、数万点の点群から3Dモデルを生成する処理には非常に高性能なシステムが必要ですし、そうしたデータを扱うのにも高い性能が求められます。マウスさんのPCを扱うようになったのは4年ほど前からですが、お客さまからの要求スペックが高くなり、かつお客さまの実現したい内容によって、求められるスペックの幅も広いため、細かくカスタマイズしてハイパフォーマンスな構成を提案できるマウスコンピューターのPCが適していました。当社では複数のメーカーを扱っているので他社も含めて見積もりをしたこともあるのですが、マウスさんは国内生産ということもあってBTO(Build To Order)でも納期が非常に早いのが決定的なポイントです」
「加えてお客さまは、可能な限り早く欲しいというニーズと同様に、万が一不具合が発生した場合に、できるだけダウンタイムを抑えたい、修理に時間をかけられないという気持ちもあります。実はここ春日部の緑町はマウスコンピューターの修理センターがある場所なので、コロナ以前は直接お客さまからPCを預かってそのまま修理センターに持ち込むこともできました。当日回収し、翌日お戻してお客さまに驚かれたこともあります。乃木坂46を起用したテレビCMで全国的な知名度が高まっていたことに加えて、『同じ緑町に修理センターもあるメーカーです』と、地の利を生かした営業トークができたのは良かったです」(伊藤氏)
現在、新和測機で販売するPCの8割近くはマウスコンピューターの製品だという。オフィス用の「Mouse Pro」ブランドだけでなく、クリエイター向けの「DAIV」など、高性能なPCの販売台数も伸びているそうだ。
「建設業は業態的にテレワークが浸透しづらいのですが、常に現場があり、直行直帰で現場に常駐する働き方が当たり前なので、裏を返せば昔からテレワーク的な環境だったということもできます。こうした働き方で、3次元データの高負荷な処理を行う必要があるため、ノートPCタイプのDAIVシリーズの人気は高まっていますね」
また、新和測機では、PC以外にiiyamaディスプレイとセットで販売する提案も行っている。伊藤氏自身もオフィスの自席にiiyamaディスプレイを4台設置し、ノートPCは閉じた状態で無線のキーボードとマウスで日々の業務をこなしている。
伊藤氏いわく「自分が実際に体験して生産性が劇的に上がっているということもあり、『地域の建設業のICT活用を推進すること』をミッションとして掲げている以上、これを提案しない理由はありません。例えば、建設業者は積算ソフト(建築概算見積ソフト)を使っていますが、設計書をPCに取り込んでその内容を見比べながら入力をする際、2画面以上のマルチモニターなら一度使えば元に戻れなくなるくらい圧倒的に効率が上がります。それに加えて、iiyamaディスプレイは接続ケーブルが全種類入っているので、お客さまの環境によらずすぐ接続できるのもありがたいです。間違いなく販売できる、というのは強みですね」
建設業界における地域のICTアドバイザーとして活動する新和測機。同社が目指すゴールは、モノを販売することではなく、建設業者が抱えるさまざまな課題の解決だ。「PCを買い替えませんか」と営業するのではなく、あくまで取引先の「困りごと」を解消するために何が必要かを考え、その上でICTが有効であれば適切なシステムやクラウドサービスを提案する。マウスコンピューターが新和測機の強力なパートナーになったのは、同社のこうした姿勢に対しPCメーカーとして何ができるかを二人三脚で考えてくれるからだ。
「例えば、私たちのお客さまから『ある3D CADソフトを使いたい』『VRで遠隔臨場を導入したい』という声が増えてくれば、その用途に適したグラフィックス性能やSSD容量を一緒に検討し、いわば“新和測機”オリジナルモデルを推奨構成として用意してくれます。細かいスペックの差はBTOで吸収できますし、納期も早い上、国内生産の信頼感もある。+αでディスプレイも提案すればサポート窓口を一本化できます。最近は中堅中小の建設業者でも、建設DXを内製化しようという動きがあり、3Dモデル制作や3次元測量の受託だけでなく、コンサルティングに近い協働プロジェクトを依頼されることも増えてきました。これからますますPCの重要性が高まっていく中で、マウスコンピューターという強力なパートナーの存在はとても心強いと感じます。こうした取り組みを通じて、いつの間にか『埼玉県はi-Construction先進地域』と呼ばれるような未来にしたいと考えています」
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提供:株式会社マウスコンピューター
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia ビジネスオンライン編集部/掲載内容有効期限:2023年3月14日