ビジネスにも通じる “勝てる”チームビルディングとは――羽生結弦、阿部兄妹を支援する選手サポートのパイオニアが語るノウハウ

» 2023年03月29日 10時00分 公開
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 ここ数年でテレワークやハイブリッドワークが浸透し、ビジネスパーソンの働き方は大きく変わった。多様な働き方が広がる中、上司や同僚とのコミュニケーションの取り方も変化し、改めて重要度が増しているのがチームビルディングだ。

 チームビルディングとは、個々のスキルや経験を生かしながらチームのパフォーマンスを上げ、目標を達成するという組織開発の方法の一つだ。組織が結果を出し続けるためにチームビルディングは不可欠だが、昨今では「コミュニケーションをうまく取れない」「メンバー間のモチベーションにばらつきがある」といった声も珍しくない。

 こうした課題を解決するヒントになるのが、スポーツ選手を支援する味の素社の取り組み「ビクトリープロジェクト」だ。サポートを受ける選手の中には、フィギュアスケートの羽生結弦選手や柔道の阿部一二三・詩選手など世界で活躍するアスリートが名を連ねる。

 中でも「走る・跳ぶ・投げる」の総合力を競う陸上競技の十種競技で日本記録を持つ右代啓祐選手のサポート活動では、ビジネス上のチームビルディングにも通じるヒントがある。

 一見、アスリートの支援とビジネスのチームビルディングは無関係のようにも感じるが、どういうことなのだろうか。プロジェクトリーダーを務める味の素社の栗原秀文氏(グローバルコーポレート本部 グローバルコミュニケーション部 スポーツ栄養推進グループ シニアマネージャー)、右代啓祐選手(国士舘クラブ)に話を聞いた。

photo 左から右代啓祐選手、栗原秀文氏

各自がチームを背負う “三位一体”で“勝てる”選手を

 チームビルディングの前に、そもそもビクトリープロジェクトとは何か説明しておこう。2003年にスタートしたこのプロジェクトは日本代表選手と候補選手を対象に、競技力の向上とメダル獲得数の増加を目指し、日々の食事を中心とした栄養サポートを行う取り組みだ。味の素社は日本オリンピック委員会(JOC)とパートナー契約を結び、オリンピックをはじめ国際的な大会でも選手たちのコンディショニング(食事と捕食)に関わる支援をしている。

 ビクトリープロジェクトも近年は外部との連携を強化し、選手のトレーニングや体のメンテナンスなど食事を含む“三位一体”のサポートにも注力している。右代選手の支援では栗原氏の他、動作の解析や練習方法の開発を行う石井和男氏(パーソナルケア)、体のコンディショニングやリハビリを担当する三富陽輔氏(メディカルサポート東京)、右代選手が所属する国士舘大学などと協力しながらサポートを行う。

 “三位一体”のサポートについて栗原氏は「各自が単に自分の役割をこなしている、組織や立場、役割にぶら下がっているのではなく、他者との連携や連動を意識し『チームを背負っている』という高いプロ意識のもとチームが成り立っています」と説明する。

 「実は22年を競技人生の集大成とし、引退も頭をよぎっていました」と振り返る右代選手。14年、27歳で日本記録となる8308点に到達。それ以来、体脂肪3%という当時の体が自分にとっての“理想像”となり、その状態を追い求めた。しかし現実は厳しく、30代以降は体が追い付かない日々が続く。オリンピックや世界陸上に出場し続けて更新してきた記録が途絶えてしまったことへの悔しさや、現実を受け入れられない気持ちがくすぶっていた。

 そんなとき栗原氏に出会った。

 「『できなくなったから辞める』ではなく自分がしっかりとやりきったと実感してから引退するべきだと感じるようになりました。今までの実績やプライドを持ち続けるのではなく、挑戦者としての初心に返ることができました」(右代選手)

 こうして右代選手をサポートする「TEAM啓祐」が発足。栗原氏を中心に外部の関係者と協力しながら、右代選手を再び“勝てる”選手にすることを目標にチームが動き出した。

徹底した議論、全否定しない……チーム作りのポイント

 所属もバックグラウンドも異なる人々が一つのチームとして機能するには、チームビルディングが重要だ。目標の明確化やコミュニケーションの活性化などポイントはいくつかあるが、TEAM啓祐はどのようなステップでチームビルディングに取り組んでいったのだろうか。

(1)議論は計20時間! マインドセットの形成

 チームビルディングの目的は、一人では達成できない目標をチームで取り組むことで目標を達成することにある。そのためメンバーが「このチームで目標を達成したい」という共通の思いを抱くことが不可欠だ。TEAM啓祐の場合、既に目標は明確にあったものの、関係者全員が同じ熱量の志を初めから持っているとは限らない。

 マインドセットの形成は「チームを作る当初から始まっていました」と栗原氏は話す。前から面識のあった三富氏と石井氏をそれぞれ飲みに誘い、居酒屋で数時間口説きチームに誘った。

 「『右代選手が再び日本記録の8000点を取る、日本記録を超える』という目標を2人に伝えた後、『どうすればいい?』と丸投げするのではなく『こういうことをしたらいいと私は思うけど、どう思う?』と仮説を持って意見を聞くようにしました。『ここをこうすればいいのでは?』『こんな方法もあるかも』という意見をくれたら私の勝ちです。興味を持ってくれたということですから」(栗原氏)

 2人から前向きな返事をもらったところで右代選手も交え、右代選手の現状を付箋に書き出しながら時間をかけて話し合った。

 「まずは関係者だけで10時間、そして右代選手も入って10時間の議論を行い、現状と何をすべきかを徹底的に話し合いました。右代選手にとっては、苦手意識を持っていた100m走のトレーニングなどに正面から向き合おうという気持ちが強まったようです」(栗原氏)

 このような徹底した議論で現状を把握することで、目標達成に重要な要素をチーム全員が納得しKPIを設定できる。その結果「何とかしてやる」「このチームで目標を達成する」という一体感とマインドが生まれ、チームが共有の志や熱量を持ち、一丸となって目標に進んでいけるのだ。

photo 右代選手や関係者と議論し、現状を書き出していった(クリックで拡大)

(2)「明るく」「全否定しない」でチームを前向きに

 チームビルディングには、スムーズなコミュニケーションも欠かせない。「チームのコミュニケーションはパズルのようなもの」と栗原氏は語る。ピース同士が自分の主張だけをし、角張っていたら完成しない。自分の専門や得意な領域は手を差し伸べ、相手の意見は受け入れる。それぞれが調和し合えば完成(=目標)に近づく、というものだ。

 「自分の領域で仕事をしているだけでは、成果は何も生まれません。成果を出すために連携、調和しようとすることがコミュニケーション、チームビルディングには大切だと思います」(栗原氏)

 その上でチームのコミュニケーションでは「明るく考える」「全否定しない」を心掛けている。スポーツでもビジネスでも、プロジェクトには想定外のトラブルがつきものだ。「思考がネガティブだと『直さなきゃ』と焦って思考が狭くなってしまう。でもポジティブなら『ここをこうしたらもっと良くなる』と前向きになれる。改善で得られる良い面に目を向けられるので、改善していこうというサイクルが生まれます」と栗原氏は話す。

 相手を決して全否定しないことも、大切なポイントだ。ベテランの右代選手でもスプリントという苦手分野がある。しかし現状を全否定してしまったら、今まで築いてきたものも否定することになってしまう。「相手が『尊重されている』と感じられれば、さらに好循環が生まれます」と栗原氏。「ビジネスも同様です。企業にもこれまでの歴史があり、それが大切なことに変わりはない。何か新しいことに挑戦する際も、それをベースに生かしながら昇華しないのはもったいないと思います」

 こうした栗原氏の姿勢はチームにいい影響を与えている。「栗原さんと出会ってからは明るくパワーのある考えと言葉に感化され、頑張ろうという気持ちが湧き始めました」と語る右代選手。選手のモチベーションの向上と維持につながっている事実が、栗原流のコミュニケーションが有効である何よりの証といえるだろう。

photo 食事もチームでとり、単なる「栄養摂取の場」からリラックスして和気あいあいと「楽しめる場」に。左が石井氏、右から2人目が三富氏

(3)失敗しても「人生ってそんなもの」 KPIに立ち返ればOK

 このようにいつも前向きに明るく業務に取り組めたら理想だが、物事がうまくいかなかったり気持ちが落ち込んだりすることがビジネスパーソンなら誰しもあるだろう。そんなときは、どのようにモチベーションを保てばいいのだろうか。

 「日頃から『人生ってそんなもの』と気に留めておくのが大事ですね」と栗原氏。「この世に“絶対”はない。深く受け止め過ぎず、皆で決めたゴールを達成するためにプロセスをきちんと踏めたのか、踏んだのであればどこをどうすれば解決できるのかを確認し、KPIに立ち返り対応していけばいいのです」と続ける。

 右代選手のサポートでも、想定していたパフォーマンスに結び付かないことはある。原因がメンタルの影響なのか、トレーニングの方法なのか、体のコンディションなのか、さまざまな角度から検証を惜しまず、KPIに立ち戻って改善策の実践を繰り返していく。

 ビジネスシーンでも売上向上や商談成立などの結果が計画通りに出ず、思い悩むケースがあるだろう。そんなときは自身で抱え込まずメンバーと話し合いながら、チームで原因を探り目標達成に向けて対応していけばいい。

選手生命は短い ビジネスパーソンは成長し続けられる

 一時は引退さえ意識した右代選手をサポートし、前向きに競技に取り組む自信を取り戻させたビクトリープロジェクト。23年にはアジア大会の出場、そして前人未到の3連覇が視野に入るほど、チームのモチベーションは高まっている。

 「日本選手権や国内主要大会で優勝し、返り咲いたということを皆に印象付けたいです」という右代選手。「これまで以上のパフォーマンスを発揮することで、この活動の良さを発信できます。何より支えてくれたメンバーと喜びを分かち合うという至福の時間を味わいたいです」と続ける。

 「選手生命にはピークがあり、とても短いのが現実です。一方、ビジネスパーソンは活躍できる寿命が長いといえます。ずっと成長し続けられるんです。価値のある仕事をし続け、その価値を高め続けて成長ができます。何のために仕事をしているか、何のためにチームで働いるのかを考えながら、いつまでもどんどん成長していきたいですね」(栗原氏)

 スポーツという、全く異なる分野で活躍しているように見える栗原流チームビルディングだが、ビジネスに取り入れられるノウハウやヒントがあったのではないだろうか。ぜひあなたの企業でも“勝てる”チームビルディングを実践してみてほしい。

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