AIは、組織やコミュニケーションをどう変える? キーワードは“人間中心”有識者が「徹底討論」

» 2023年07月28日 10時00分 公開
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 ハイブリッドワークやジェネレーティブAIが急速に進展する今、私たちの働き方や企業、組織、そしてコミュニケーションの在り方はどう変わっていくのだろうか。

 ZVC JAPANが2023年5月30日に開催したオンラインイベント「働き方改革サミット」では、そのヒントになるさまざまなディスカッションや講演が行われた。

 キーノートでは米Zoom Video Communicationsの最高製品責任者 スミタ・ハシーム氏とAI専門家でありベストセラー作家のパスカル・ボーネット氏が対談。ジェネレーティブAIの登場によって、人間の仕事が“知識を活用する”ことから“インサイトを見抜く”仕事に変わることや、AIが回答した内容のファクトチェックについて、そして何が正しいかの判断は引き続き人間が行う必要があること、これから人間には想像力やリレーションシップ構築能力、判断力などがより求められるようになることなどを語り合った。

photo (左から)米Zoom Video Communications 最高製品責任者 スミタ・ハシーム氏、AI専門家/ベストセラー作家のパスカル・ボーネット氏

 スペシャルセッションでは早稲田大学 准教授の村瀬俊朗氏が、変化に強いチームとリーダーシップについて語り、イベントの最後にはZVC JAPAN 代表取締役会長の下垣典弘氏と村瀬氏が「これからの企業文化、組織、コミュニケーションの在り方」をテーマに対談した。

 今回はこのイベントの中から、村瀬氏のスペシャルセッションと、下垣氏と村瀬氏による対談をレポートする。

AI時代のチーム、リーダーシップに大切な5つの要素

 AIやコラボレーションツールなどによって働く環境が大きく変わるなか、チームやリーダーシップはどうあるべきか。早稲田大学 商学部 准教授の村瀬俊朗氏は「AI時代のリーダーシップ、創造的なチームの在り方」と題した講演を行った。

 村瀬氏は冒頭、変化はいつの時代にも起こるため、AIに限定せず、変化に対応できるチームを作ることが重要だと強調。そしてそのためにはリーダーに「方向を示す」「思考の柔軟性」「学習の姿勢」「心理的安全性」「振り返り」の5つの要素が必要だと説明する。

リーダーは柔軟な思考でメンバーに方向性を示す

 まず「方向を示す」とは、メンバーに変化や新しい挑戦の方向性と必要性を十分に説明することだ。

 「私たちの集中力やエネルギーはとても限定的で、かつ変化を嫌います。それが良い変化だと分かっていても不安を覚えたり不快になったりする。そこでリーダーは、個人の限定的な力を束ねて一定の方向に持っていき、それぞれがポテンシャルを出せるように環境を整えていく必要があります。そのためにはリーダーが変化の必要性を語ることと、新しい挑戦を促すことが大切です」(村瀬氏)

 実際に村瀬氏がリーダーシップの研究をする中で、従業員にリーダーの課題を尋ねたところ、「ゴールが何か分からない」「ゴールを設定した背景や重要性についてもっと説明してほしい」といった意見が圧倒的に多かったという。さらにDXに成功した企業はそうでない企業に比べ、リーダーがメンバーに変化や挑戦の必要性を語り、促している割合が約1.7〜3.1倍高かったという海外の研究結果も示した。

 リーダーが「思考の柔軟性」と「学習する姿勢」を持つことも、変化に適応できるチームを作る際に必要になると村瀬氏は言う。「リーダーはチームのエンジンであり、リーダーの行動、価値観、姿勢などあらゆる面がメンバーに影響します。リーダーの思考に柔軟性がなく変化に消極的だとメンバーも同様のモチベーションになり、もしメンバーが意欲的であったとしても取り組みがスムーズに進まず、チームとしての成功が難しくなります」

photo リーダーの姿勢や行動はチームに影響する(村瀬氏の講演資料より)

心理的安全性と振り返り

 チーム作りを考える際には「心理的安全性」の確保も必須となる。「心理的安全性は情報共有を促し、チームが学習機会を獲得できることにつながる」と村瀬氏は強調する。その一例として、心理的安全性の高い職場の方が、ミスの報告件数が多かったという研究結果を挙げた。

 「ミスが多かったのではなく、ミスの『報告件数』が多かったのです。ある程度のミスの種類や量が組織の中できちんと共有されていると、これは組織のシステムの問題だから改良やアップデートが必要だという解決につながります。こういう機会を組織内で共有できるように、リーダーがメンバーと一緒になって心理的安全性を作っていくことが非常に重要です」(村瀬氏)

 そして、さまざまな取り組みを行うにあたっては「振り返り」も重要だ。「振り返りには、『After Action Review(継続的学習法)』という方法があります。単純にゴールが何だったか、何をやってきたか、何がうまくいった/いかなかったか、どういう風にやればいいかということを定期的に振り返る方法です。1つの大きな対応策を講じるのではなく、小さな対応を大量に繰り返し、常にアップデートをする。これを実現するためにも振り返りが非常に重要なのです」

 最後に村瀬氏は、「これまでにない変化が、非常に速いスピードで起こっています。AIによる変化だけを考えるのではなく、そもそも変化に対してどう対応するかが問題です。個人だけではなくチームとして対応できる環境を、リーダーとメンバーで協力して作り上げていただきたいです」と締めくくった。

これからの働き方、企業、組織、コミュニケーションの在り方とは

 サミットの後半では、ZVC JAPAN 代表取締役会長 下垣典弘氏と村瀬氏が「これからの企業文化、組織、コミュニケーションの在り方」をテーマに対談した。

 まずは、ハイブリッドワークが浸透しAIが進展する今、これからの働き方はどう変化していくかについて議論が交わされた。

 村瀬氏は「リモートワークは多様な働き方を可能にするメリットがある一方、出社には深い議論がしやすい、人のつながりが作りやすいというメリットがありました。このバランスを取りながら強い組織をどう作っていくかが難しい」と課題を挙げる。

 下垣氏は、コロナ禍を経て従業員が働く場所を選べるようになったことでZoomが掲げる「コミュニケーションの民主化」が起こったと説明。顧客や従業員同士がコミュニケーションする際、リアルかバーチャルかが選べる中で、「『誰とどういう接点を持つか』が問われる時代になったと思います。どういう働き方であれ今まで以上のパフォーマンスを企業は求められているし、それをどう実現するかも問われています」と指摘した。

photo ZVC JAPAN 代表取締役会長 下垣典弘氏

 こうした働く環境やコミュニケーションの変化を踏まえ、企業や従業員はAIをコミュニケーションや仕事にどう活用できるのだろうか。

 村瀬氏は、ジェネレーティブAIは組織内に散逸した経験値や知識、人をつなげる役割を果たすと見る。

 「組織にはいろいろな人達がいて多様な知識や経験を持っているはずですが、従業員はお互いにその情報を知らず、組織を横断して知見や情報が共有されていない企業は少なくありません。例えばこうしたデータをまとめ、AIに『こういうこと悩んでいるんだけど、この組織で誰か知っている人はいないか』と聞くと『この部署の○○さんが知っているので連絡してみたらどうですか』と回答をもらうことも技術的には可能です」(村瀬氏)

 コミュニケーションプラットフォームを提供するZoomにとって、AI活用のキーワードになるのが「人間中心」だと下垣氏は言う。現時点ではジェネレーティブAIが出した回答には誤った情報が含まれていることが多々ある。そのため、AIの出力結果の正否は必ず人間が判断する必要があるとZoomは考えている。

 「AIが出力した結果が本当に正しいかどうかを判断するのは人間であるということを前提に、当社はAIをソリューションに大胆に入れています。AIによって今後さらに大量のデータが生み出されるでしょうが、AIの回答が本当かどうかを考えるのは引き続き人間です。『AIはこう言っているけど、どう思う?』というように、AIが出した情報を人間がどう判断するかがAI時代におけるコミュニケーションになると思います」(下垣氏)

挑戦を称賛する企業文化と個人のアスピレーション

 ここまでの議論で、ジェネレーティブAIをどうコミュニケーションに生かすか、AIがコミュニケーションをどう変えるかが分かってきた。ではこれからの企業文化や組織の在り方はどう変わるのだろうか。

 村瀬氏はまず、新しいものに挑戦することを称賛し、失敗を許容する文化が組織にあることが大切だと指摘する。

 「新しいものに挑戦していきましょう、挑戦するうえで失敗は当然あるので、失敗したら振り返りをして、改善を積み重ねていくことが重要ですよというメッセージや価値観を組織の中で共有する必要があります。そういう風土を作り上げる意識的な努力をしないと、周囲の環境だけが変化していき、その組織は置いていかれます」(村瀬氏)

photo 早稲田大学 商学部 准教授 村瀬俊朗氏

 下垣氏も、これから人口が減少し市場も縮小し続けていく日本では、企業は現状維持では行き詰ってしまうため、新たなことにチャレンジする企業文化の醸成は非常に重要だと同意する。「そのためにも自分はこういうことをやりたい、こういう風になりたいというアスピレーション(願望)や欲を持って、それに向かってチャレンジし、失敗を容認するという企業文化やリーダーシップが重要だと思います」(下垣氏)

AIというツールを“人間中心”で使いこなす

 最後に両氏は、AIはあくまでツールであり、アスピレーションを持ってAIというツールを「人間中心」で使いこなすことが重要だと強調した。

 「今AIが人間の仕事を奪うといった恐怖をあおる意見も出ていますが、あくまでAIはツールです。ツールとは別に、自分がどういう風に成長したいか、何を達成したいか、そのためにはどういう知識や技術が必要で、この新しいツールをどう使いこなすかを考えるべきです。個人としてはアスピレーションを持って、ツールを使って自分がどう成長したいかを考えることが、企業はそうした文化を育んでサポートする姿勢が必要になると思います」(村瀬氏)

photo

 「一番大事なことは、AIから情報を受け取ったときに、それをどう判断するかは自分で決めるという意思を持ち続けることです。Zoomが考える『人間を中心としたAI』とはそういう意味で、その判断に不安があるなら人間同士がコミュニケーションすることです。この極めて基本的な行動を繰り返しながら、AIやさまざまなテクノロジーをうまく融合して、企業や個人の目標を達成していくことが重要だと思います」(下垣氏)

 AI時代に私たちの働き方や生き方は大きく変わりつつある。しかし本イベントから、AIはあくまでツールであって、その出力結果や情報を基にコミュニケーションし、「人間中心」で判断してくことに変わりはないことが分かったのではないか。

 Zoomはこの人間中心の考えに基づいて、Web会議の仮想背景や字幕機能、会話分析機能の「Zoom IQ」などにいち早くAIを組み込んできた。さらにコールセンター向けソリューション「Zoom Contact Center」や、会話型AIとチャットボットを融合した「Zoom Virtual Agent」もこの思想に基づいて設計している。AI時代のコミュニケーションやコラボレーション、組織作りを考える際には、こうしたZoomのプラットフォームがフィットするだろう。

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