「カーセンサー」の中古車探し“体験”を劇的改善! AIを仕掛けたデータサイエンティストの活躍とは

» 2023年09月04日 10時00分 公開
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 デジタル化によるビジネスモデルの変革が進み、蓄積できるデータの量や種類が増加した。同時にAIを筆頭とした技術の進歩も加速しているが、膨大なデータはあれど活用に至る企業は少ない。

 そのような中で気鋭のデータサイエンティストが在籍し、先進的な取り組みを行っているのがリクルートだ。プロダクトの開発や改善を進める中で、常に新たな技術開発に取り組むデータサイエンティストが大きな役割を果たしているという。本記事では、リクルートが展開する中古車情報サイト「カーセンサー」の画像表示機能に実装した、360度画像から自動でパーツを検出する技術の開発に焦点を当て、データサイエンティストの活躍と先進的な取り組みを取材した。

先端技術を事業に実装することを目指した、エンジニアと研究者という「ハイブリッドな働き方」

 PCやスマートフォンで、気になった車の外装と内装を360度画像で確認できる。さらに、ホイールやハンドルなどのパーツをクリックすると拡大画面が表示される。このカーセンサーの360度画像とパーツ画像は、AI技術で自動連携しているものだ。これが、同社のデータサイエンティストが2023年1月に実装した360度画像の自動パーツ検出技術である(右下図参照)。

photo 360度画像の自動パーツ検出技術のイメージ。360度画像にタグを配置し、タップすると詳細画像に移動できる

 この新たな技術開発で中心的な役割を担ったのが中田百科氏だ。理論物理の修士で、大手メーカーで半導体と量子コンピュータの研究に携わり、21年にリクルートに転職した。入社のきっかけはリクルートが量子コンピュータの研究をしていると知ったことだった。

 「量子コンピュータは基本的にハードウェアのメーカーが研究しているので、リクルートが取り組んでいると聞いたときには驚きました。一方で、多数のサービスを展開していて無数のデータが集まるリクルートのような事業会社こそ、量子コンピュータの技術が生かせる現場だと以前より思っていたので、実際にアプリケーション側で取り入れられていると知り興味が湧いたんです。加えて、前職では機械学習の研究にも携わっていたのですが、リクルートでもまた研究が進んでいました」(中田氏)

 中田氏が所属するデータテクノロジーラボ部には、情報系や物理のほか、哲学、心理学など文理を問わない多様なバックグラウンドを持つデータサイエンティストが集まる。

 中田氏は「データサイエンティストへのパスはさまざま」だと話す。例えば無関係に思える心理学分野でも統計学が用いられているなど、実はデータサイエンティストのフィールドで生かせる学び、経験の幅は広い。

 データテクノロジーラボ部の特徴は、リクルートが持つさまざまな事業に横断で関われる点だ。それぞれが先端技術の研究を進める一方で、各事業部からの相談があれば開発や事業への技術の実装に参加する。

 「個人の研究テーマは自然言語処理やIoT(Internet of Things)などさまざまです。論文を書いたり、学会で発表したりすることもありますが、これらは先端技術を開発に取り入れることを主目的とした研究です。事業部から話があればエンジニアとして参加し、研究成果を生かします。研究者とエンジニアという『ハイブリッドな働き方』と表現すると、イメージしやすいかもしれません」(中田氏)

中古車を“リアルに”体験できる360度自動パーツ検出を研究開発

 360度画像の自動パーツ検出の開発は、カーセンサーの事業部からの相談で始まった。カーセンサーは国内有数の中古車情報サイトで、50万台以上の情報が掲載されている。現物を見に行けなくても、大量の車両の細部を360度画像で確認したいというユーザーの声が根強くあったことから、開発に着手した。

photo 取材した中田百科(なかだ ひゃっか)氏。リクルート プロダクト統括本部 プロダクト開発統括室 データ推進室 データプロダクトユニット データテクノロジーラボ部 事業ソリューション開発グループ所属

 「360度画像だと、自分がその場所にいるような体験をしながら情報を取得できますよね。内装であれば運転席からの目線でカーナビや操作部を確認できて、外装も全体のデザインからホイールなど細かいところまで見ることが可能です。十分な情報を提供することでCX(ユーザー体験)向上に大きく寄与する技術です」(中田氏)

 一方で、実現には課題もあった。車のパーツは数え切れないほど多い。360度画像に合わせて各パーツの画像を用意しサイト内に羅列すると、ユーザーは見たいパーツを探すのに苦労して、逆にユーザー体験を損ねる可能性があった。

 そこで、パーツ画像へのアクセシビリティーを向上させるために取り組んだのが、360度の画像上にタグを配置して、そのタグを押すと詳細画像を自動的にポップアップで表示する仕組みだ。中田氏が注力したのは、360度画像と詳細画像を自動的に連携することだった。

 「360度画像の中に詳細画像をタグとして配置しようとすると、従来は手動で作業する必要がありました。ただ、パーツは膨大な種類と数があるので、何十カ所にも及ぶタグを人手で配置するのは大変です。そこで、画像をカテゴリーごとに判別するAIの技術を活用し、360度画像をタップすることでパーツ画像を自動検出できるようにしたいと考えました」(中田氏)

 開発にあたって中田氏が取り組んだのは、AIで自動検出が実現できるかどうかの原理検証だ。汎用性の高いAIモデルでは求めている検出精度を得られないため、車特有のドメインナレッジに基づいたAIモデルを作る必要があった。しかし、そのために必要なインプット情報は不足していた。これは対象物が中古車であり、カタログに掲載されているような詳細画像データを入手できないという事情も相まって、大きな課題となった。

 加えて、内装の360度画像は天球カメラで撮影しているためゆがみが、屋外で撮影した外装画像は太陽光による反射、フレアが生じてしまう。そのため検出漏れが発生したり、そもそも自動検出自体が困難であったりしたという。

 具体的にどう解決したのか? 独自AIモデルの構築について、中田氏は「現在、特許申請中」であるため詳細な回答を控えたが、内装画像のゆがみについては補正するデータ前処理を施すことで解消。外装の反射については検出が容易なタイヤ位置に基づいて他のパーツ座標を類推し、検出漏れを防いだ。

 この難易度の高い実装を、同氏は技術研究を始めてから約半年で実現。開発には外部のパートナーも加わって、1〜2カ月で完成した。360度画像の自動パーツ検出がある車両とない車両を比べると、前者は問い合わせや購入につながるコンバージョン率が大幅に向上。特に、小さい画面でも細かなパーツを見られるスマートフォンで表示した場合に、より大きな効果が出ていることが分かった。

先端技術の研究がプロダクトとして形になる喜び

 この取り組みのために生み出した技術には、中田氏が培ってきたスキルや知見が生かされている。車は手に取って観察できず、物理的制約がある。その中でもカスタマーが車の状態を分かりやすく把握するために、これまでに研究してきた物理理論を生かした。さらに、量子コンピュータ研究にも結び付いていると中田氏は説明する。

 「量子コンピュータの技術を活用して実現できるのは、組み合わせの最適化です。世の中にはいろいろな組み合わせ最適化問題が潜んでいます。例えばシフトのスケジューリングですね。勤務できる時間が限られている、人数が変わるなど制約が増すと難しくなります。そういった問題を、量子コンピュータを使い、いかに速く最適化するかといった研究をしています。

 量子コンピュータで組み合わせ最適化を解こうとすると、問題の制約条件やコンピュータのハードウェア制限などさまざまな物理的制約に直面します。そういったドメイン知識や物理的制約を踏まえて手法開発をする点が、360度画像の自動パーツ検出の開発に非常に類似していました。

 リクルートにはカスタマーとクライアントをマッチングさせるサービスが多く、組み合わせの最適化でユーザー体験をより良くできる可能性が広がっています。将来的にはさまざまな事業で、量子コンピュータの技術を活用したいと考えています」(中田氏)

 データテクノロジーラボ部では、中田氏における量子コンピュータのように、メンバーそれぞれが先端技術を研究している。先端技術は一般的に大学などの機関や、大手メーカーなどで研究が進められているイメージだが、リクルートにも先端技術の探求を後押しする環境が整っていると中田氏は感じている。

 「先端技術の研究は、1つの論文を理解するために、この本も、この論文も読まなければならないといった労力が多く、とても時間がかかります。にもかかわらずデータが適さない、足りないなど環境による理由で結局使えないケースが多いと感じます。研究した成果をビジネスに生かせる確率は、体感的には10%くらいではないでしょうか。

 一方で、リクルートにはいろいろな種類のデータがあります。自動車、住まい、結婚婚活、グルメ、旅行など、データによって種類や出力数なども異なるため、必然的に適用できるモデルが変わってきます。多種多様なデータがあるため、他で使えなかった先端技術のモデルを適用できる可能性の幅が広いんです。

 最後に形になることを大事にするエンジニアは多い。せっかく研究したのに、その知識や技術を使えなかったら残念ですよね。研究して終わるのではなく、最終的には事業に反映してユーザーの利便性を高め、事業ひいては社会に貢献できる――これをゴールにできることにやりがいを感じます」(中田氏)

 数百のプロダクトを持つリクルートは、データ活用を通じてサービスの提供価値を向上させるデータドリブンな企業だ。データ活用をビジネスに応用する研究を通して、社会をより豊かにしていける環境がそこにある。

「圧倒的当事者意識」と新しいことにチャレンジする精神

 一般的に大企業は立案や意思決定などに時間がかかり、現状維持を重視する印象を持たれがちなのに対して、リクルートではメンバーが組織の垣根を越えさまざまなプロダクトに横断して携わるカルチャーが根付いている。その背景にあるのは「圧倒的当事者意識」だ。

 「何でも自分ごと化する。周囲の仲間たちのことも自分のことだと思って解決するカルチャーが、圧倒的当事者意識という言葉で表現されています。自分の役割をここまでと決めつけず、担当領域から“染み出し”た動きが当たり前に求められますし、必要だと思ったことや自分がやりたいことがあればどんどん手を伸ばせます。特にエンジニアは、ラボで培っている技術や研究成果を持って事業部と連携し、新たなプロダクトを提案する機会に恵まれています。先端技術に最も近い存在だからこそ領域問わず染み出しやすく、積極的な事業、社会貢献ができるのではないでしょうか」(中田氏)

 中田氏がもう一つ感じている「リクルートらしさ」が、誰もが新しいことにチャレンジする精神を持っていることだ。

 「部署に関係なく、貪欲に知識を求めている方が多いです。事業部にも最新の論文を読んでいる方がいて驚きました。実際に事業部から『こういう技術が流行っているらしいけど、これは使えるの』といった相談を受けることもあります。新しいチャレンジを楽しむことを応援してくれる環境があるからこそ、職種に関係なくこのような主体性が育つのだと感じます」(中田氏)

 エンジニアの活躍の場は社内にとどまらない。中田氏は現在、大学教員と一緒に量子コンピュータの共同研究に取り組んでいる。その一環で、社会人として大学院の博士課程に進学する準備をしている。

 「せっかく共同研究をしているので、博士号が取れないかと会社に打診しました。普通の企業なら断られる可能性が高いと思いますが、上長に相談してみたところ『やってみたら』と快く背中を押してくれました。

 入社する前は1人でこなす仕事が多いと思っていたので、外部と共同研究ができて、社内でも事業部と強力にタッグを組める環境は非常にうれしいですね。今後も先端技術の進化と並走しながら、量子コンピュータ開発の研究と、研究成果の事業への実装を進めていきたいです」(中田氏)

 本事例のほかにも、数多くのプロダクトを起点とした先進的な取り組みにチャレンジし続けるリクルートでは、プロダクトの価値を高める存在として技術者のプレゼンスが非常に高い。データサイエンティスト、広くエンジニアにとって活躍の場を広げられる環境といえそうだ。

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