博報堂プロダクツはデザインチームの能力をどう伸ばしたのか? 5年にわたる取り組みの裏側に迫る

» 2023年09月05日 10時00分 公開
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 博報堂グループの総合制作事業会社である博報堂プロダクツは、12の事業本部と3つの支社、10のグループ会社を擁する。その中で、雑誌や新聞などの紙媒体からデジタルコンテンツ、動画、イベントなど幅広いクリエイティブを担う部署が、統合クリエイティブ事業本部だ。

 同本部には、コピーライター、デザイナー、Webディレクターなど200人以上のクリエイターが所属している。特に多いのがデザイナーで、100人以上が在籍。彼らが新たな技術を取り入れたクリエイティブを常に提供できている背景には、独自に開発した育成プログラムがある。それが「Adobeアンバサダープログラム」だ。クリエイターに必須のAdobeのアプリケーションを最大限に活用すること、デザイナーのスキルの幅をより拡大することを目的に2018年から取り組みを開始し、着実に成果を挙げている。

 そんな統合クリエイティブ事業本部が現場で取り組むデザイン部門の活性化と、デザイナーの育成について話を聞いた。

コンテンツの多様化に伴い、使用するツールが増加

 博報堂プロダクツには専門性の高い12の事業本部がある。その中でさまざまな領域にまたがって“統合的”にクリエイティブを提供しているのが、統合クリエイティブ事業本部だ。

 かつてはグラフィックデザインが中心だったが、近年はデジタルコンテンツを中心に、Webデザインや動画、モーショングラフィックス、体験型のプロモーション、イベントなど幅広いクリエイティブを制作している。それに伴い、制作に使うツールも多岐にわたるようになってきた。

 「現在はサブスクリプションサービスのAdobe Creative Cloudを使っています。WebサイトやアプリのUI/UXのデザインやプロトタイプ、映像制作のソフトなどもこのサブスクリプションサービスを導入することで使うようになりました」と、統合クリエイティブ事業本部 クリエイティブ一部 部長の板野創造氏は説明する。

photo 博報堂プロダクツ 統合クリエイティブ事業本部 クリエイティブ一部 部長の板野創造氏

課題はデザイナーをどうアップデートするか

 ただ、さまざまなアプリケーションが登場して機能が進化する一方で、デザイナーの知識のアップデートや新しいスキルセットの習得、働き方改革などの面で課題も抱えていたと板野氏は振り返る。

 「それまでデザイナーは自分達が慣れている使い方しかしていませんでした。それがCreative Cloudになったことで、使えるアプリケーションが急激に増えました。機能も随時アップデートされるようになり、実はAIが自動的に画像を切り抜いてくれる機能が出ていたのに、以前のまま手動で切り抜いていたということもありました。また、全社として働き方改革や業務効率化に対応する必要性も感じていました。

 そのため、アプリケーションに対する知識のアップデートと、新しいスキルセットを習得することが必要だと感じていました。そんな時に、ちょうどアドビのカスタマーサクセスマネージャーから提案をいただいたこともあり、2018年からデザイナーの育成プログラムを実施することにしました」(板野氏)

 アドビのカスタマーサクセスマネージャーは、法人向けの「Creative Cloudエンタープライズ版」の最上位プランを契約した企業に対して、製品活用などを支援する専属の担当者だ。博報堂プロダクツを担当する、アドビ プリンシパル カスタマーサクセス マネージャーの小木哲也氏は、板野氏から課題をヒアリングして、まずは各アプリケーションの最新機能を提供するイベント「Adobe Day」の開催を提案した。

photo アドビ カスタマーサクセス統括本部 カスタマーサクセスマネジメント本部 プリンシパル カスタマーサクセス マネージャーの小木哲也氏

 「デザイナーは日々の業務に忙殺されがちなため、自ら新しい知識を取り入れる時間的余裕がない方も少なくありません。そこでアドビが製品の最新情報や機能などをインプットする会として、2018年にAdobe Dayを開催しました」(小木氏)

自社内の“インフルエンサー”が活躍

 Adobe Dayには博報堂プロダクツ全社から数多くの人が参加し、終了後のアンケートでも好評だった。ただ、新たに得た知識を自分のものにするのは、一度のイベントでできるほど簡単ではない。そこで板野氏が中心となって立ち上げたのが、博報堂プロダクツ内独自の研修プログラム、Adobeアンバサダープログラムだ。

 「Adobe Dayでのインプット自体は良かったものの、一度聞くだけは自分のものにしにくいのも事実でした。その際に小木さんから、統合クリエイティブ事業本部の中でインフルエンサー的な役割の人物を立てた方がいいのではないかとアドバイスをいただきました。そこで分野ごとにアンバサダーを立て、2019年度からAdobeアンバサダープログラムをスタートしました」(板野氏)

 1期目のアンバサダープログラムは、「2D/3D」「UI/UX」「モーショングラフィックス」の領域単位に3つのチームに分け、それぞれに2、3人のアンバサダーを置いた。

 2D/3Dでは、Adobe PhotoshopやAdobe Illustratorの新機能、便利な手法などをアンバサダーがレクチャー。モーショングラフィックスでは、先行して動画制作に関わっていた社内のメンバーがアンバサダーになり、基礎から学べるような勉強会やワークショップを開催した。

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 UI/UXに関しては、2018年当時はAdobe XDのリリースから間もなかったこともあり、社内で使っていたデザイナーが多くなかった。そこでAdobeのチュートリアルを活用したほか、アンバサダーが実際に業務でプロトタイプを作成し、メンバーに作り方や提案の方法だけでなく、クライアントからの反応なども共有した。

 いずれのチームの取り組みも好評で、アンバサダープログラムを統括する板野氏は1期目から成果を感じていた。

 「アンバサダープログラムは反響が大きく、それまで触れることがなかったツールや機能を使いこなせるようになったことで、生産性も表現の幅も広がりました。便利な機能を知ることで効率よく制作できるようになり、企画を立体的に提案することも当たり前になってきました」(板野氏)

入社3年目のデザイナーが新人デザイナーの講師に

 アンバサダープログラムは毎年プログラムの見直しを行っている。2D/3Dチームについては機能の活用が1期目で浸透したため、2期目からはUI/UXとモーショングラフィックスの2チームで実施している。

 3期目からは、入社3年目のデザイナーが講師となって、新入社員のデザイナーに技術を教える形式を導入した。理由は、若手の育成という課題を解決するためだったと板野氏は語る。

 「アンバサダープログラムで勉強会やワークショップをする際、若手のデザイナーにも参加してもらいたかったのですが、先輩と一緒に仕事を進めていることもあり、仕事を抜けて参加することが難しい状況でした。そこで年間を通じて若手を育てるような仕組みにしようと、3年目のデザイナーが新入社員に教える形に変え、受講についても原則必須にしました。

 この形式が大きな効果をもたらしました。新入社員は人数も多く覚えも早いので、技術を持った人数が確実に増えます。教える側である3年目のデザイナーも、事前準備のために知識やスキルが上がります。しかも同期と一緒に取り組むので、コロナ禍では貴重な機会になり、楽しそうにやっていたことも印象的でした。この形で現在も続けています」(板野氏)

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 一連の取り組みに伴走している小木氏は、博報堂プロダクツによる取り組みの優れた点を次のように感じている。

 「博報堂プロダクツの取り組みが成功している理由は、受講する人たちに対して、なぜこのプログラムを実施するのかを自社のメンバーが説明し、レクチャーも自社のメンバーがしているからだと思います。自ら試行錯誤して積極的に動くアンバサダーの熱量の高さが、参加者の行動意欲をかき立て、学びたいという人が一気に増えたと感じています」(小木氏)

博報堂プロダクツ内外にもノウハウを提供

 同社はこうした取り組みによって蓄積されたノウハウを外部にも提供している。例えばアンバサダーが中心となり動画制作についての勉強会を社内外で開催するなど、クリエイティブ人材の育成に広く影響を与えている。

 また社外のイベントでは、クリエイティブカンファレンスの「Adobe MAX Japan」への登壇、大学生が社会課題をデザインで解決する「College Creative Jam」での審査員、AdobeがYouTubeで展開する「Creative Cloud道場」でのゲストスピーカーなどで、板野氏をはじめとするアンバサダーが活躍している。こうした社内外での活動が、博報堂プロダクツにおけるプレゼンスの向上にもつながった。

 アンバサダープログラムは、現在も3年目のデザイナーが中心となって自走できている状態だ。板野氏は今後もデザイナーが新たなスキルを習得できる場として生かしたいと話す。

 「表現しなければいけない領域がどんどん広がっているので、その環境にどうやって適応していくかが重要です。Adobe Fireflyに代表されるような生成AIツールや、今後さらに盛り上がってくるであろうプロトタイピングツールにも興味があります。そういった新しいものにも、これからアンバサダープログラムなどを通じて取り組んでいきたいですね」(板野氏)

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提供:アドビ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia ビジネスオンライン編集部/掲載内容有効期限:2023年9月20日