人手不足が深刻化する中、AIは仕事をどう変える? NTTデータ×日本IBMが示す新たな答え

» 2023年12月12日 10時00分 公開
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 少子高齢社会を迎え、多くの生活者が漠然とこの国の将来に不安を抱える中、相互扶助という社会的な使命を担う保険会社の役割も大きく変化している。従来の保険は、保険事故(保険金支払い義務が生じる事象)が発生した際に保険金を支払うのが主な役割だった。一方、医療の進化や健康志向の高まりなど、生活者を取り巻く環境は日々変化している。

 とすれば保険会社が果たすべき社会的責任も変化しているはずだ。単に保険事故に対応するという枠組みの中に身を置いたままで、業界として生活者や社会の期待に応えられるのかという課題に直面する。このような保険を取り巻く状況に対し、DXの推進やAIの導入など、デジタルという観点から変革を推し進めて生活者が満足するサポートを模索する動きが活発化している。

 こうした動向に応えようと、NTTデータと日本IBMが「デジタル従業員」というAIソリューションを提案している。デジタル従業員は保険業界に何をもたらし、どのような未来を創出してくれるのだろうか。NTTデータ 矢野高史氏(第三金融事業本部 保険ITサービス事業部 戦略デザイン室 室長)と高田信洋氏(第三金融事業本部 保険ITサービス事業部 戦略デザイン室 課長)、日本アイ・ビー・エム 西孝治氏(理事 事業部長 パートナー・アライアンス事業本部 グローバル・アライアンス事業部)に話を聞いた。

(左から)日本アイ・ビー・エム 西孝治氏(理事 事業部長 パートナー・アライアンス事業本部 グローバル・アライアンス事業部)、NTTデータ 高田信洋氏(第三金融事業本部 保険ITサービス事業部 戦略デザイン室 課長)、矢野高史氏(第三金融事業本部 保険ITサービス事業部 戦略デザイン室 室長)

業務フロー全体を自動化するデジタル従業員

 デジタル従業員の核となるのは、NTTデータが持つ保険業界に関する豊富な知見と、日本IBMのオーケストレーションプラットフォーム「IBM watsonx Orchestrate」だ。Orchestrateという名が示す通り、現場に投入された役割の異なる複数のツールを一括して制御する仕組みを有しており、業務の自動化を実現する。

 業務フローにおいてCRMや生成AI、コミュニケーションツール、契約管理システムなど、複数のツールを協調的に管理して自動化することで、担当者が人力で行っていた一連のタスクをエンド・ツー・エンドで自動処理できる。

 営業職員が最初に見込み客を選定し、アポイントメントを取って商談に持ち込むまでには多くの事務作業が発生する。従来は各タスクにおいて、自身の時間を割いて必要なツールを操作していた。デジタル従業員は、この一連の作業を自動化する。

営業職員の業務を自動化・効率化することで、生産性の向上を実現できる

 「保険会社としては、営業職員の事務作業を自動化、効率化し、そこで生まれた時間を得意先とのコミュニケーションやこれまでにないサービスの創出といった、人間にしかできない高度な作業に充ててほしいという思いがあります。デジタル従業員は、その実現を支援します」(NTTデータ 矢野氏)

 ただそれだけでは導入が進むRPAなどの自動化ツールと同じではないのか。そう思うかもしれない。しかし、デジタル従業員は次に掲げる複数の機能を有している点で従来の自動化ツールとは大きく異なる。

 最大の特徴は、生成AIのような自然言語によるユーザーインタフェース(UI)を備えており、対話形式で指示できる点だ。保険商品の売り込みを行う場合は顧客リストの作成から始まりプロファイリング、プランの作成、アポ取り文章の作成、スケジュール調整など一連の作業をAIと対話しながら自動で実行してくれる。

営業現場の事務作業をAIと対話しながら自動で実行する

指示の意図を理解して最適解を提示

 「IBMの目標の一つに、シングルUIで人間と会話してバックグラウンドで業務フロー全体を処理するAIを作りたいという思いがあります。各タスクにおいて人間がそれぞれのツールを操作していたのではタスク間に分断が生じ、業務の全体最適がなされません。それでは効率化にも限界があります。

 IBM watsonx Orchestrateを活用することで、事前に定義された業務フローをエンド・ツー・エンドで自動化するのはもちろん、従来のようなルールベースのAIでは難しかった指示の意図を理解し、その時々で業務フローをダイナミックに変化させて処理する仕組みを可能とします」(日本IBM 西氏)

 「IBM watsonx Orchestrateの短期記憶機能も大きなポイントです。短期記憶は、それ以前の全ての指示や回答を踏まえた上で新しいタスクを実行できる機能です。業務や対話内容に応じて適した回答を提示してくれます」(NTTデータ 高田氏)

 インタラクションを通じて個人のパーソナリティーを理解し、職員の性格などを考慮する点も大きな特徴だ。従来の自動化ツールだと、個人の経験や勘、交友関係などに依存した営業活動からの脱却は難しかった。しかしデジタル従業員は、どのような商品販売が得意か、専門性は何かといった営業職員の特性や性格を考慮するので、この商談先にはどの営業職員が適しているのかというマッチングを提示してくれる。

 IBM watsonx Orchestrateによるデジタル従業員が、各タスクの個別最適化を行う従来の自動化ツールとは一線を画し、業務フロー全体において効率化・最適化を実現するオーケストレーションプラットフォームであることを理解してもらえただろう。

NTTデータと日本IBMの協業が生み出す新たな意義

 NTTデータと日本IBMという、大規模ソリューションを提供する日本有数の企業が手を組んだ意義はどこにあるのだろうか。

 周知の通り、NTTデータは保険や金融、公官庁、民間企業など顧客の要望に沿ったシステムを構築運用するSI事業を中心に展開してきた。これに加え、現在は「Foresight起点のコンサルティング」という将来のあるべき姿を提示して伴走する、バックキャスティング型のビジネスコンセプトを打ち出すことで新規ビジネスの創出にも力を入れる。

 「SIerという枠にとどまることなく、これまでに培ってきた顧客業務への知見やノウハウを生かしてお客さまをリードできるビジネスを生み出して展開します。その一つが今回の協業で実現したデジタル従業員です」(矢野氏)

 Foresight起点のコンサルティングを打ち出す背景には、デジタル技術の超速進化がある。デジタル技術により顧客業界の変化が加速する中で、従来のシステム実装だけでなく、事業の構想段階から、新たな事業・価値の創出をリードする事業パートナーの役割へと期待が変化しているからである。

 テクノロジー集団として時代の先頭を走ってきたNTTデータは、最先端分野や新しいビジネスのコアとなるシード技術を常に追い掛け、それらを即座に提供できる体制を整え続けている。見方を変えれば、NTTデータはSIerとしての過去の知見と最先端技術を踏まえて、進化の方向性や未来の姿を予測可能な立ち位置にいるとも言える。

 それ故に、NTTデータであれば高度な技術に裏打ちされた実現可能性が高いコンサルティングを実施でき、顧客企業が求める新しい価値を創出し、未来の在り方を共創できるのだろう。まさに、「Foresight起点のコンサルティング」の真髄(しんずい)がここにある。

待ち望んでいたオーケストレーションプラットフォーム

 技術的な視点で今回の協業を語ると、「IBM watsonx Orchestrateこそが、NTTデータが切望していたオーケストレーションツールだった」とNTTデータの高田氏は振り返る。

 「これまでのオーケストレーションツールは、自然言語型のUIを実装できないものや、高機能だが運用管理に手間がかかり柔軟性に難があるものがほとんどでした。しかし、IBM watsonx Orchestrateは、業務フローや各種ツールをそれぞれの進化に合わせてダイナミックに変化させられます。

 皆さんの普段の業務を思い浮かべてください。ある業務を実行する場合、複数のプロセスの順序を考慮しながら実行します。ただし常に定義された通りではなく、プロセス同士の順番を入れ替えたり場合によっては省略したりすることもあります。状況に応じて動的に変化させて臨機応変に処理しているのです。IBM watsonx Orchestrateはその柔軟性を持っており、最大の武器とも言えます。これこそ今回の協業を決めた理由の一つです」(高田氏)

IBM watsonx Orchestrateは対話しながら適した回答を導いてくれる

 日本IBMはどのような思いでNTTデータとの協業に歩を進めたのであろうか。日本IBMの西氏は、「IBM watsonx Orchestrateを社会に実装するためには、長期にわたり顧客に寄り添ってシステム構築を進め、経験と知見を積み上げてきたパートナーと手を組む必要がありました。それがまさしくNTTデータでした」と話す。

 「当社でもすでにIBM watsonx Orchestrateを含むAI活用を人事業務中心に導入・展開しており培った実績、技術を業種、プロセス問わず展開してきたいと考えております。今回NTTデータの保険業界、営業業務からスタートできたことは大きい一歩だったと考えています」(西氏)

 付け加えると、AIの「透明性」も今回の協業において重要なポイントと三者は語る。AIの判断や回答の根拠はどこにあり、その判断はどのデータによるものでどのような加工が施されたものなのかという透明性が重要視されたのだ。

 社会的責任を負う大企業のシステムを数多く手掛けてきた両社。AIの下した判断に偏差が生じるようでは、導入先企業は思わぬリスクを背負い込む可能性もある。日本IBMは社内にAIの倫理に関するチームを組織しているだけに、この分野でも信頼のおけるパートナーと言える。

多様な業種・業態に展開できるポテンシャル

 デジタル従業員は、2023年1月から約3カ月間のPoC(概念実証)を実施した後、保険業界からのフィードバックを得てきたという。今後の展開についてどのような道筋を立てているのだろうか。インタビューの最後にそれぞれの思いを聞いた。

 「NTTデータはForesight起点のコンサルティングという新たな道を切り開いている最中だけに、日本IBMと共に未来につながるデジタル従業員を生み出せたことは大きな自信になりました。今後、当社のお客さまと一緒に新しいビジネスを創出できるという確かな手応えを感じています」(矢野氏)

 「今回の営業職員向けシステムをきっかけに、査定業務などのバックオフィス領域への対応も進めていく予定です。保険の種類や販売方法などのユースケースも順次拡大したいと考えています」(高田氏)

 「当社では生成AIを企業の業務プロセスに適用することが最も重要と考えています。IBM watsonx OrchestrateはAIによる実作業の最適化、既存資産やシステムの活用という点で大きく展開できると考えています。自然言語によるやりとりにとどまらず生成AIを実業務で活用することを目指し、さまざまな実績やサービスをお持ちのNTTデータとソリューション領域を拡大し、社会やビジネスのあらゆる課題を解決する支援を進めていきます」(西氏)

豊洲センタービルアネックス(東京・江東)にあるNTTデータの「ヘルスケア共創ラボ」。ここではさまざまなウェルビーイング実現に関するソリューションを公開している

 NTTデータと日本IBMのタッグで生まれたデジタル従業員が、日本企業の働き方を大きく変える日が間近に迫っている。この取り組みは保険の営業業務にのみならず、他業種への展開も期待される。両社が展開する新しい取り組みから目が離せない。

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