「新リース会計基準」の適用は1年延長の見通し IFRS適用企業に学ぶ対応のポイントとは?

» 2024年01月30日 10時00分 公開
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 企業の経理/会計業務への甚大な影響が確実視されている「新リース会計基準」。企業会計基準委員会(ASBJ)が2023年5月に公開した草案の記述などから、関係者の間では「24年3月末までに基準公表、26年4月以降に開始する事業年度(3月決算企業の場合)からの強制適用」というスケジュールが有力視されてきたが、強制適用が1年先延ばしになる可能性が出てきている。

プロシップ 巽俊介氏(取締役 システム営業本部 本部長)

 「その背景には、公開草案へのパブリックコメントに過去にないほど多くの意見が寄せられたことがある」と話すのはプロシップの巽俊介氏(取締役 システム営業本部 本部長)だ。

 寄せられた意見の数は、個人、団体を合わせて45にも上る。「ASBJには、パブリックコメントに対する考えや根拠を示すことが求められます。そのための論点整理と回答、そこからの見直し案の作成、承認などの期間を考慮すると、24年3月末までに基準を公表するのは難しいとの声が23年11月の審議会でも上がっています」と巽氏は説明する。

 基準の公表が遅れれば、強制適用の時期も必然的に後ろにずれ込む。その際には、実務的な観点から27年4月以降に開始する事業年度から(3月決算企業の場合)の強制適用が現実的だとみられているのだ。

1年余裕が生まれても「気を抜くことなかれ」

 これまで「電帳法」や「インボイス制度」への対応に追われてきた経理、会計部門の担当者にとって、新リース会計基準の強制適用期日の延期は準備期間確保の点で「うれしい誤算」のはずだ。ただし、「だからといって気を抜いてはなりません」と巽氏は強調する。

 「当社は新リース会計基準の開発の基礎である国際財務報告基準にあるIFRS16号の適用も支援してきました。その経験から言えば影響の大きい企業では準備期間は2年では到底足りません。当社もパブリックコメントにおいて、準備期間を3年とすることを提言していますが、強制適用が1年延びたとしても期間的に余裕がないことには変わりないのです」

 新リース会計基準は現時点で公開されている情報が乏しく、「どう対応すべきか、どのように準備作業を進めるか」に戸惑っている企業も多い。プロシップはIFRS16適用時の経験と多くの企業を支援してきたノウハウを基に、次のような3カ年計画によるプロジェクトを企業に推奨している。

IFRS16号適用時の事例を基に推奨しているプロジェクト例。強制適用までの3カ年で対応を進める

 まずは最初の半年から1年をかけて実施するのは、社内のリースに関する「現状把握」と「影響額試算」となる。

 新リース会計基準の一番のポイントが、借り手リースのファイナンスリース取引とオペレーティングリース取引の区分を廃し、原則全てをオンバランス化する単一の会計処理に統一する点だ。そのためには、不動産のリースなどこれまで経費処理していたものも含めてあらゆるリースを把握する必要がある。

 ただ、それが一筋縄ではいかないのが厄介だ。そもそも多くの企業は不動産を含む全てのリース契約を把握できていない事が多い。規模の拡大とともに契約や支払いを現場に一任している場合が多く、全社を網羅した把握はリースの利用部署やリース契約の多さもあって容易ではないはずだ。

リースの精緻な把握は対応作業の中でも最重要

 そのことはプロシップが実施したアンケート調査の結果にも表れている。IFRSの未適用企業と適用企業の双方に、「適用に際して苦労すると考える点(IFRS適用企業では「苦労した点」)」を尋ねたところ、未適用企業では「システム改修」が最も多く、「親会社や関係部署からの情報収集」との指摘はその半数ほどだった。

 対してIFRS適用を経験した企業は、「情報収集」に苦労したという回答が最も多く、「システム改修」はその半数以下になっている。

出典:事業会社向けリース会計に関するアンケート調査、調査期間:23年5月8〜26日、回答企業:210社(IFRS非適用182社、IFRS適用済み28社)

 巽氏は「この意識の違いこそ、リースの全社把握は並大抵の苦労ではできないことの証拠です」と指摘する。リースの洗い出しの出発点は、「作業を主体的に担う本社経理部による各部門への現状調査となります」。

 「ただし調査は1度では完了しません。現場部門の知識の不備や回答漏れなどが原因で、ほとんどの場合は現場とのやりとりが何度か必要になります。リース数の多さからも、半年から1年程度かかる場合もあります」

 「現状把握は対応作業で最も重要な活動の一つ」と巽氏は何度も指摘する。そこに不正確さが残るほど、その後の作業で判断ミスが生じやすくなるためだ。全てのリースの把握から、新リース会計基準によるバランスシートへの影響が可視化され、企業としてどう対応すべきかの検討材料が整う。

 IFRS適用時の支援では、影響額の大きさからこの段階で全社的なプロジェクトを組織するケースが多かったと巽氏は振り返る。

ポイントは“重要性”による対象リースの絞り込み

 状況把握が完了した次の1年で行うのが「会計方針の検討」だ。ここで入念に議論すべきなのが、「どこまでオンバランス化の対象に含めるか」だ。

 上述の通り、新リース会計基準は原則的に全リースをバランスシートに計上することを求めている。ただし、借り手にとって重要性が乏しく、監査法人からの理解が得られれば、1契約当たりのリース料総額が300万以下の契約は現行の基準と同様にオフバランス処理が可能になると見込まれている。

 オンバランス化の対象が少なくなるほど、対応作業の難度や負荷は当然低減する。その意味で、動産を対象とする一般的なリース契約の多くがオンバランス化を免れ得る意義は大きい。「IFRS適用を円滑に進められた企業の共通点は、自社業務に重要性のあるリースに絞ってオンバランス化していることです」と巽氏は説明する。そのためにはリースの重要性の乏しさを監査法人に納得させるだけの理由を用意する準備も欠かせない。

 会計方針が固まればオンバランス化の対象も明らかとなり、継続的なリース管理に向けた業務フローの見直しが可能となる。そのための各種ワークシートの展開やシステム導入の検討も重要な要素だ。

 リース契約のオンバランス化に伴い、仕訳起票が3〜4倍に増えて人的ミスなどによる誤謬(ごびゅう)リスクの増加が予想される点で、単純ミスの一掃と業務効率化のためのシステム化は避けては通れない。

 「新リース会計基準では連結財務諸表と個別財務諸表の会計処理の一致が求められ、グループ会社まで巻き込んだ会計方針の見直しが生じる可能性があります。前述のIFRS適用企業へのアンケートでは、『グループ会社の展開』は苦労した点として2番目に多く挙げられています」

影響額の試算により本番データも整備

 最後の1年で実施するのが「業務設計/システム導入」だ。前段の取り組みを基に業務とシステムの双方を見直すわけだ。「リースの洗い出しとともに、会計方針に基づいて業務とシステムの見直しの方向性を事前に固めることは、円滑なシステム導入には欠かせない」と巽氏は説明する。

 プロシップは23年11月に有限責任監査法人トーマツとの協業を発表した。会計方針などはトーマツが、システムに関してはプロシップがそれぞれ支援できる体制を整えた。システム対応に用いる固定資産システム「ProPlus」は国内のIFRS適用企業の約100社に上る豊富な導入実績を誇る。

 巽氏は「これまでの経験から、勘定科目や仕訳パターンの準備、マスタ整備などで『こう進めるべき』とアドバイスできる部分が数多くあります」と胸を張る。加えて、対応支援のためのツール提供もすでに開始している。それが、リースのオンバランス化に伴う影響額を試算する「影響額試算ソリューション」だ。その最大の特徴は、ツールへのデータ入力を通じて、影響額の試算にとどまらず本番稼働時に利用するデータの生成まで行える点だ。

 「Microsoft Excelを利用したツールはすでに存在しますが、それらのデータをシステムに登録するには加工や追加、変更などが生じます。対して当社のツールであれば、データをそのままProPlusに流し込めます。新リース会計基準適用に向けた取り組みでは、作業が進むほどより精緻な情報が必要になります。都度ProPlusに情報を追加していくことで、最小限の手間で確実にデータの準備が完了します」

 新リース会計に関してプロシップが解説する特設Webサイトでは、影響額試算ソリューションの他に、セミナー動画や経理部門がリースの把握のために各部門に配布する「調査票の見本」など、実務に使えるツールやドキュメントの公開を始めている。

 「新リース会計基準についての困り事があれば、気軽にお尋ねください」と巽氏は笑顔で語る。多くの企業で適用に向けた取り組みが進む中、プロシップの活躍の場はさらに広がるだろう。

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