「DX研修やって満足」のワナ 企業リスキリングで投資対効果の高い“学び”をどう生むか

» 2024年02月28日 10時00分 公開
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 ChatGPTをはじめとする生成AIやロボットによる自動化が世界中で進んでいる。このトレンドは、労働市場への影響も大きい。働き手は自動化などによって雇用が減少する可能性を踏まえて自身のスキルアップを図る必要があり、企業は「DX人材不足」といわれる中で成長が見込まれるテクノロジー分野をけん引する人材の確保が求められている。

 働き手と企業のニーズを満たそうとDX研修をするケースも多いが、多くはその場限りになり、学んだことを実際に事業に生かせている企業は少ないのが実情だろう。

 そんな企業の課題解決を後押しすべく、富士通と都築電気はリスキリングに関するオンラインセミナー「『DX研修やればOK』の大誤解 企業成長につながる“効果が見える”リスキリング」(2024年1月26日)を開催した。今回は、同セミナーのレポートを通して、リスキリングの重要性と実践的なアプローチ方法を紹介する。

生成AIの時代にリスキリングは不要? それでも「今」取り組むべき理由

photo ジャパン・リスキリング・イニシアチブ 代表理事 後藤宗明氏

 「ChatGPTなどの生成AIが進化していく中で、リスキリングは無駄なのではないかと疑問に思う方もいるでしょう」――こう話すのは、本セミナーの基調講演に登壇したジャパン・リスキリング・イニシアチブ代表理事の後藤宗明氏だ。後藤氏は講演の中で、「今」リスキリングに取り組むことの重要性について語る。

 多くの分野で労働の自動化が進む中で、わざわざリスキリングに取り組むことを無駄に感じる人もいるかもしれない。しかし、「リスキリングはこれから新しく生まれてくる仕事に就くための準備プロセス」だと後藤氏は説明する。

 「10〜20年前にはYouTuberやプロンプトエンジニアという仕事は全く注目されていませんでしたが、現在は非常に大きな影響力を持っている。このように、『今』リスキリングに取り組んでおくと将来就く仕事の選択肢を増やすことにつながります」(後藤氏)

photo AI時代にリスキリングする理由(後藤氏の講演より)

 後藤氏は、個人の関心が原点となるリカレント教育とは異なり、リスキリングは組織の中で必要なスキルを身に付ける企業変革の取り組みだと述べる。DXのような、企業の新しい事業戦略を担うメンバーを組織の中で育成する取り組みがリスキリングに当たると言い、日本における先進事例として石川樹脂工業(石川県加賀市)を取り上げた。

 樹脂製品などのOEM商品の企画や製造、販売を行っている同社は、生産性向上のためにロボットを導入。誰もロボットに触ったことがない中、ロボット会社と協力して社員へのプログラミング講習を実施した。社員だけでロボットを動かせるレベルに成長し、生産性が向上した。マーケティング経験がない社員を抜てきしてAmazonでの製品販売も新たにスタート。順調に成果を挙げており、リスキリングが売り上げに大きく貢献している。

 この例からも分かる通り、リスキリングは「学ぶこと」ではなく「実践すること」に価値がある。後藤氏は、リスキリングを実践に結び付けていくために重要なポイントとして、企業が社員の学習環境や学習機会を提供することなどを挙げる。

 学習環境でまず見直したいのは支給PCや通信インフラだ。コロナ禍以降に広がったテレワークがいまだに続く企業も多い。しかし、メモリ不足で研修動画が固まってしまうようなPCを支給している企業も散見されるという。リプレースのタイミングには、リスキリングも見据えたIT環境の提供を検討する必要があるだろう。

 学習機会はどうか。後藤氏は、「個人の自主性に任せるのではなく、企業が充実した学習機会を提供することが重要だ」と強調する。社内にノウハウがない場合はコンサルティングサービスの活用も有効だ。その場限りの研修ではなく、企業変革を目的として長期的かつ体系的に取り組むことでリスキリングの定着と実践が進んでいく。

DXの本趣旨は「変革」にあり 「ただのDX研修」で終わらせないリスキリング

 後藤氏の講演に続き、都築電気のリスキリングの取り組みが紹介された。システム開発からDXコンサルティングまで幅広く手掛ける都築電気の創業は1932年。電話交換機などの通信事業からスタートした。

 1958年に情報ネットワーク領域に進出し、2016年にAIなどの次世代技術の研究開発を、20年にDXコンサルティングを開始。社会の変革に合わせた事業転換とともに社員のリスキリングに取り組んできた。

 都築電気で営業のキャリアを積んだ後にコンサルティングファームに出向し、現在はDX推進室の課長を務める神向寺圭氏は、自身もキャリア転換時にリスキリングを行ってきたと話す。

photo 都築電気 DX推進室 課長 神向寺圭氏

 「不確実性が高まる現代においては、既存事業と新規事業の両軸を検討して実行する『両利き経営』を体現できる人材創出が求められています。両利き経営では、既存事業をアップデートする『深化型イノベーション』と新規事業やソリューション開発に取り組む『探索型イノベーション』に注力することが重要です。日本の企業は『深化型は得意だが探索型は不得意だ』といわれていますが、当社は探索型イノベーションにも注力して社内のDX教育を進めてきました」(神向寺氏)

 同社は元々、情報技術分野に高い専門性があったが、探索型イノベーションを実現するため、さらなるDX人材育成を進めてきた。そんな取り組みを通して蓄積、体系化させてきたノウハウを活用してDX推進に課題を抱える企業を後押しするため、新規事業を立案。人材育成の知見とデジタルに関する高い専門性を活用した「DX人材育成リスキリングプログラム」を始めた。

 神向寺氏は、よくあるDX研修の落とし穴として「目指す人材像が明確でないためどの施策が有効なのか分からない」「スキル習得自体が目的になりがち」「学んだ内容を通常業務で活用できず、リスキリング実施後にDXが進まない」などを挙げる。

 「当社のプログラムは、経営戦略を基に導き出した『会社が求める人材像』から逆算してカリキュラムを作成します。課題解決演習を行う際は架空の事例を用いるのではなく、その企業に実在する課題を取り上げて解決方法を考えるため修了後すぐに施策実行に移れるという特長があります。研修で生まれた計画の実装をサポートするなど、お客さまのDX実現に向けて伴走する体制も確保しており、研修を『やって終わり』にしない仕組みをつくっています。

 これらの研修は、社員全員のリテラシー向上ではなく会社の変革を目的に行うため、事業部門の次世代リーダーを抜てきして実施します。研修を修了したリーダーたちがDX推進を先導するという構成になっています」(神向寺氏)

photo DX人材育成リスキリングプログラムの全体像(神向寺氏の講演より)

 神向寺氏は、プログラムの実施が大きな成果を出した事例としてクラシエを取り上げた。求める人材像を共に考えるところからスタートし、実際の課題を交えながら研修を行ううちに受講者がDX推進を自分ごととして学習できるようになったという。

 その結果クラシエでは、リスキリングは商品やサービス、会社を変えていく段階になって初めて意味を成すという認識が浸透。組織としても「受講者おのおのが活躍できる場を提供していく」としている他、次期リーダーも育てていく必要があるため、来年度も継続してプログラムを実施する予定だという。

「時間がない」を解決 リスキリング推進のためのIT環境づくり

 続いて、「Benesse Reskilling Award 2023」を受賞した富士通のリスキリング施策について、同社CCD事業統括部 プロモーション推進部 部長の丸子正道氏が紹介した。

 リスキリングに力を入れている企業として名前が挙がることが多い富士通では、オンデマンド型教育の導入やジョブポスティングの整備、1on1など、ビジネスインパクトの創出に通じるさまざまな戦略を実施している。Benesse Reskilling Award 2023では、人的資本領域で働き方や人事制度、企業カルチャーまで含めた全方位の改革を実施した点が評価されたという。

photo ジョブ型人材マネジメントへのフルモデルチェンジ(丸子氏の講演より)

 丸子氏は、リスキリングの推進には2つのポイントが重要だと話す。1つ目は、社員が自身のキャリアにオーナーシップを持ち、新たなチャレンジに取り組める「社員の内発的な動機付け」を後押しすること。そして2つ目は「時間的なリソース不足を解消」する環境づくりだ。特に後者については、富士通が実施した働き方改革が大きく貢献したという。

 富士通は働き方改革を「Work Life Shift」と名付け、最適な働き方ができるような制度面での改革、オフィスの在り方の見直し、そしてリスキリングと密接に関わる社内カルチャーの変革まで、さまざまな働きやすい環境をつくっている。

photo 富士通 CCD事業統括部 プロモーション推進部 部長 丸子正道氏

 社員の働き方はテレワークが中心になっており、自身もテレワークを行う丸子氏は「以前は通勤で往復約4時間を要していました。通勤時間がなくなったことで、学びの時間だけでなく睡眠時間や家族と過ごす時間も確保できるようになりました」と話す。

 しかし、快適なテレワーク環境が整備されていなければ、富士通社員のような働き方は難しい。富士通のIT環境は、社内システムと接続するセキュアなICTインフラとコミュニケーションツールが整備されている点がポイントだ。中でも重要な要素が、テレワークで使用する端末だ。

 「私を含め、富士通社員は業務端末としてノートPC『LIFEBOOK U9シリーズ』か、同じ筐体のシンクライアント端末を使用しています。軽量コンパクトながら頑丈で持ち運びがしやすく、第13世代インテル®Corei5プロセッサー搭載で快適に動く点など、使う人のことを考え抜いたこだわりが満載です」(丸子氏)

 中でも丸子氏が太鼓判を押すのがU9シリーズの最新モデルだ。従来モデルの13.3型と筐体のサイズは変わらないが、画面に大きな違いがある。従来モデルの画面の縦横比が16:9であるのに対し、最新モデルは画面の縦横比が16:10の14.0型になっている。

photo 左がU9シリーズの最新モデル(14.0型)、右が従来モデル(13.3型)

 「リスキリング推進は、社員の内発的な動機付けと時間的なリソース不足の解消がポイントになります。それらを実現するためには、ジョブポスティングなど社員が自身のキャリアを考えてチャレンジできる『制度面での環境づくり』と『快適なテレワークが行えるIT環境づくり』という2点が重要です。

 とはいえ、人事制度などが関係する制度面の環境を短期間で構築するのは難しいと思いますので、まずは快適なテレワーク環境づくりの一要素となるノートPCの導入から検討してみてはいかがでしょうか」(丸子氏)

 今回のセミナーは、リスキリングを推進する際に重要となる基本的な考え方から具体的なDX人材育成の取り組み、リスキリングを成果につなげるためのヒントなど、さまざまな切り口でリスキリングについて解説している。本セミナーは、24年3月25日までこちらでアーカイブ配信している。リスキリングに取り組めていない、実践につながらないなどの課題を抱えている人は、視聴してみてはいかがだろうか。

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提供:富士通株式会社、都築電気株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia ビジネスオンライン編集部/掲載内容有効期限:2024年3月5日