「PdMのための」大型イベントで語られた、プロダクトづくりの面白さ一線級のプロダクトマネージャーが集結

» 2024年03月25日 10時00分 公開
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 2024年2月17日、さまざまな領域で活躍するプロダクトマネージャー(以下、PdM)が一堂に会するリクルート主催イベント「PdM Days」がグラントウキョウサウスタワー(丸の内)とオンラインでハイブリッド開催された。

 国内でも数少ない“PdMに向けたPdMのための”大型イベントでは何が語られたのか? 当日の様子をレポートする。

「理屈を超えた情熱を持つ」 魔法の体験をどう生むか

 PdM Daysは、DAY1〜DAY3(オンライン)とDAY4(ハイブリッド)の全4日間にわたり実施された。最終日となるDAY4の申込者数はおよそ3200人。オフライン会場の当選者は200名で、会場がほぼ満席状態になる盛況ぶりを見せた。

ALTALT 左:中央に立つのは、オープニング挨拶を務めたリクルートの鹿毛雄一郎氏。DAY4の来場者の約7割は、DAY1〜DAY3にも参加していた。イベントは4日間通してリクルート社員がモデレーターとして出演。各回ゲストを招いてトークが展開された/右:DAY4の会場にはリクルートのプロダクト紹介ブースも設けられており、大勢の人で賑わった

 第一セッションのゲストは、山下祐樹氏(Figma CPO)。リクルート 磯貝直紀氏と「魔法のような製品をいかにして生み出すか」について語った。GoogleやUberなどでプロダクトデザインを手掛けてきた山下氏は「どの企業も『ユーザーに素晴らしい体験を届けたい』と口にするが、環境が整っていない。魔法のような体験を届けることは、信じられないほど困難な戦いだ」と話す。

 障壁になっているのは「『KPIに影響するのか』といった決まり文句」(山下氏)だ。山下氏は、自らの成功体験をいったん忘れる、ユーザーの感覚など測定できないものを無視しない、何より「理屈を超えた情熱を持つ」ことが重要だと強調した。

 「ユーザーが喜ぶ姿を見ることは、私にとっては常にキャリアのハイライト。魔法の体験を通して、日本からもっと素晴らしい製品が生まれることに期待したい」(山下氏)

良いプロダクト開発、ユーザーの課題と期待にどう応える?

 魔法の体験を生み出すヒントになったのは、第二セッション「ユーザー課題に向き合うプロダクトマネージャーたち」。まずプロダクトロードマップの組み方について、ゲスト登壇した彦坂春森氏(コドモン 執行役員)と松尾真里氏(SHE シード事業部 ユニット長)は、自社の経験から「つくっては壊す」ことの重要性を説いた。両社ともに複数のプロダクトを展開しているが、チャーンレートや安定稼働、売り上げ創出などフェーズごとに変化する課題を抱えていた。そのため彦坂氏は「中期経営計画では視野の“広さ”を、プロダクトごとの特定領域では“深さ”を確保して(ロードマップの)定期的な見直しを図っている」と自社の取り組みを説明した。

photo 彦坂氏(左)と松尾氏(右)

 モデレーターを務めたリクルート 加藤舞子氏から「売り上げが伸びない中で、何を頼りにロードマップを組み替えたのか」と問われると、松尾氏は「根拠を持たせた定量と定性の評価を基にプランニングしたが、最後は“意思”」と回答。

 「PMF前は『なぜこの事業をやるのか』という疑問が生まれやすい。しかし『このプロダクトは必要だ』という意思を通して世に出せれば、後からいくらでも改善できる。SHEでも、リリース後のテストマーケティングを繰り返してプロダクトを磨いている」と続けた。
※Product Market Fit。プロダクトが市場で受け入れられている状態。

 「ユーザーの課題解決の優先順位」に話題が移ると、彦坂氏は「まずプロダクトに対するユーザーの『期待』を維持してもらうことを念頭に置き、広い範囲で行動を起こす」と話した。さまざまなユーザー課題の中でプライオリティーが低そうな改善点であっても「ユーザーが以前から気にしている部分なら、直らないことが結構な毀損(きそん)になる」(彦坂氏)。単体では短期的に事業成長に寄与しない改善点も、広くすくい上げて深く向き合うと語る彦坂氏の話に、うなずく参加者も多かった。

「魂がない」プロダクトはなぜ生まれる? PdMが必要なワケ

 「多彩な組織におけるプロダクトマネージャーのあり方を考える」と題した第三セッションには、伊藤嘉英氏(BCG X プリンシパル プロダクトマネジメント)と兼原佑汰氏(Muture Product Manager)、小城久美子氏(プロダクト筋トレコミュニティ 主催者)がゲスト登壇。専任組織がない企業に、どうPdMの機能を取り入れるかという話題からスタートした。

 三者はそれぞれDXやプロダクト開発をはじめとする企業変革をサポートしてきた経験から、PdM機能(組織)は「つくる」「育てる」の両輪で構成することが必要だと話す。伊藤氏は「企業によってはプロダクトを持っていなかったり、プロダクトという意識で(サービスを)つくっていなかったりする」と分析。そのような企業にPdM機能を浸透させるためには、まず出島組織を「つくる」ことを推奨した。

 「特にプロダクト開発を外部に任せて、仕上がったものをレビューするような企業の場合、結果として完成したプロダクトに『魂がない』ことがある。外部任せで『情熱を持ったプロダクトづくり』はできない」(伊藤氏)

ALTALT 左:伊藤氏/右:兼原氏

 この意見に、兼原氏も同意を示した。「出島組織や特区環境をつくることは(DX推進やPdM組織づくりの)定石。人材は企業内から集めつつ、不足している職能を見極めて外部から探す。こうして組織を『育てる』ことも必要」(兼原氏)

PdMは「模索せよ」 コミュニティーから生まれる効果

photo 小城氏

 続けて、トークテーマはPdMにおける「コミュニティー」へ。プロダクト筋トレコミュニティでプロダクトづくりに求められる“思考の筋トレ”を広めている小城氏は「PdMは自社である程度は学べる。だけど学べないことも多い。自社から出て、今までとは違う動きを自ら探索することが望ましい」と語った。

 「PdMには、やり方はさておき成果として期待されているものがある。その上で、知見の交換は重要。他者がどういう挑戦をして何を学んだのか――プロダクト筋トレコミュニティではクローズド空間で共有している」(小城氏)

 小城氏の話を受けて、伊藤氏は「コンサルティングファームという立場上、自社の成果をオープンに語ることは難しい。その一方で、自分たちの専門性を磨く上で他社のプロダクトがどのように成功しているのかを知る必要があるが、機会がない」とし、PdM Daysのようなイベントもまた、広くプロダクトづくりに関わる人たちの助けになると話す。

 「PdMの仕事には正解がない。だからこそ(課題や可能性を)模索することが大切。プロダクトで人を幸せにしようと考えている人は皆仲間。皆さんと一緒に頑張っていきたい」(小城氏)

プロダクトを「つくらない」? 起業家たちの軌跡を聞く

 PdMが見るのは、ユーザーの課題や体験価値だけではない。第四セッションでは、プロダクトで社会課題を解決する2人の起業家がゲストに招かれた。

 社会課題をどう見つけたかについては、ゲスト2人の対照的な経験談が印象に残る。企業の中間管理職に向けて、ビジネス・コーチングサービスを展開する木村憲仁氏(mento 代表取締役)は「起業するに当たり事業案を検討していたが、モチベーション維持に苦戦していた。友人に勧められてコーチングを受けたとき、検討中だった事業案に実は興味を持てないことに気付けた。コーチングの効果をこの身で感じて、世に広めたいという気持ちからサービスの着想を得た」と振り返る。

 近藤志人氏(ファンファーレ 代表取締役)は産業廃棄物業界に着目。配車計画をAIで自動化するSaaSを展開する。「ロジックを詰めないと行動できない性格。起業時は哲学書を片手に『社会課題とは何か』を考えた」という経験談に、「そんなことある?」と木村氏が突っ込み会場から笑いが起こる場面も。

photo 木村氏(左)と近藤氏(右)

 産業廃棄物業界は社会インフラであり、公共性が高いにもかかわらず「認知的なマイノリティー」(近藤氏)だ。当初は地方創生の領域で起業を進めていたというが、本当になくてはならないものをつくるという原点に立ち返った結果、現在の事業にたどり着いた。

 最初のプロダクト開発については、両者から「つくらない」という共通キーワードが挙がった。例えば木村氏の初手は、簡単なLPを作成してTwitter(現、X)に流したのみ。登録者とコーチのマッチング作業もスプレッドシートに頼るなど「できるだけコードを書かずに検証した」(木村氏)

 近藤氏もまた「エンジニアはギリギリまで採用しない」と冗談交じりに語り、木村氏と同様に初動時はスプレッドシートを駆使して顧客にデモンストレーションを実施したと話した。

 「重要なのは、サービスの価値。そこに至るまでのプロセスがより良いに越したことはないが、本質ではない。裏側はできる限り効率化するが、価値を届ける点についてはやりきることが大切」。そう話す木村氏に、近藤氏も深くうなずいた。

そのプロダクトは何のため? 未来を創るPdM

 イベント後半のセッションは「未来」が共通テーマだった。第五セッションにゲスト登壇したのは、家族型ロボット「LOVOT」などをデザインした根津孝太氏(znug design クリエイティブコミュニケーター/デザイナー)と、メルカリや楽天でプロダクトを手掛けてきた宮田大督氏(令和トラベル プロダクトマネージャー)。デザイナーとPdMという違う視点から「未来を創る想像力と実現力」を語った。

 モデレーターのリクルート 鹿毛氏が「想像力の源は?」と質問すると、根津氏は「問題意識」というキーワードを挙げてこう回答した。

 「問題意識と想像力は離れていると思われるかもしれない。しかし『もっと良くなるのではないか』と考えて世の中を見ていると、物事の解像度が上がる。問題意識が蓄積されていくことが、想像力につながる」

photo モデレーターを務めた鹿毛氏(左)とゲスト登壇した根津氏(中央)、宮田氏(右)

 本セッションでは、根津氏と宮田氏がお互いの経験や考えをリスペクトし合う会話が印象的だった。宮田氏は、プロダクトをつくる上でユーザーとのコミュニティー、コミュニケーションを重視して課題発見や想像力、実現力につなげているという。根津氏は感嘆した様子で耳を傾けながら、自社の社是が「コミュニケーション=クリエーション」だと紹介。コミュニケーションこそ未来を創る鍵であり、「まさに今日のこの場も未来を創る土台になる」と語った。

 これを受けて宮田氏も「根津さんと話して『未来を創るには今を見つめることが大切』だと確信した」とコメント。泥臭く目の前の事象と向き合い、課題を見つける。「そうして一歩一歩進んだ先に、新しい未来が見えてくるのでは」と笑顔で話した。

タブーをも産業化するダイナミズム “兆し”をつかみ世界を変える

 未来を創る上ではトレンドの“兆し”を見つける力も求められる。その方法をガイドしたのは、PdM Daysのラストを飾る第六セッション。登壇者は、デザイン・イノベーション・ファームであるTakramのFutures Researcher兼 ニュースレターサービスを展開するLobsterr PublishingでAnother Editor in Chiefを務める佐々木康裕氏だ。

photo 佐々木氏

 未来をけん引する先進的な企業は「独自の視座」「社会の風を読む力」など複数の共通した要素を持っているという。その要素を得るためのプロセスとして、佐々木氏は「感度の良い情報を集めること」を推奨する。

 「その際は『一部でタブー視されているかどうか』も判断材料になる。例えばディープフェイク。私はその存在を容認しない。しかし、そこに何か可能性があるかもしれないと考えることは未来を創る人たちが持つべきマインドセットだ」。そう話した後、最後に「プロダクトは社会や経済、人を変えるものであってほしい」と参加者に語り掛けると会場は拍手で包まれた。

ALTALT 左:イベント後は懇親会が開かれた。多くの参加者とゲストスピーカーが交流する様子/右:懇親会ではモデレーターのリクルート社員も積極的なコミュニケーションを図っていた(写真は鹿毛氏)

 Day1〜Day3を含めて全4日間、合計9時間に及んだPdM Days。時間の経過を感じさせない内容の濃さに、次回開催への期待も高い。プロダクトづくりに関わる全ての人たちは、今後もリクルート発信のPdM情報、イベントに注目してほしい。

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提供:株式会社リクルート
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia ビジネスオンライン編集部/掲載内容有効期限:2024年4月17日