コロナ禍以降、多様な働き方を実現するワークスタイル変革の潮流を受けて、多くの企業がオフィスの再デザインに取り組んでいる。業務内容に応じて在宅や出社などを自由かつ自律的に選択できるハイブリッドワークに対応し、職場環境をしっかりと整備することが従業員エンゲージメントを高め、その結果、生産性の向上に大きく寄与することは周知の通りだ。
2024年6月に、市街地再開発事業が進むJR中野駅周辺へと東京オフィスを移転したエイト日本技術開発もそうした企業の1つ。そのリニューアル過程において、同社の思い描く“オフィスの理想”に欠かせなかったのが、マウスコンピューターの「iiyamaディスプレイ」だったという。CAD図面などを扱う建設業界特有の悩みとして、高精細な画面の視認性の低さや、レガシーなアプリケーションを起因とする画面表示の崩れといった問題を抱えており、新たなオフィスではこれを解決するために数百台のiiyamaディスプレイを導入した。
東京オフィスのリニューアル計画に携わった総合企画本部 情報システム室の鈴木氏と、技術者として新オフィスを日々利用する防災保全部 地盤技術グループの呂氏に話をうかがった。
創業から70年の歴史を持つエイト日本技術開発は、建設コンサルタントとして、都市計画や道路・堤防・ごみ処理場などの設計、地質調査、防災など、多岐にわたるインフラ分野の課題解決に取り組み、社会創りに貢献してきた企業だ。全国に58の拠点を構え、従業員数は1000人を超える。このうち900人弱が技術系社員というプロフェッショナル集団でもある。
技術系の部署では、現場での調査に加え、まちづくりの計画や市民ワークショップの運営をはじめとするソフトウェア面の支援から、橋梁やトンネル、下水道、ダム、港湾施設といったハードウェア面のインフラ設計まで、さまざまな種類の業務を行っている。また、各分野の専門技術者が互いに連携することで、行政が関わる大規模なプロジェクトにも適切な技術コンサルティングを提供している。
今回の事例で取り上げる東京オフィスの移転は、2030年に向けた第5次中期経営計画の目標の1つである「ハイブリッドワークの実現」を目指した最初の一歩。これに続く全国拠点のモデルケースになることを考えると、計画全体の成否を左右する取り組みでもあった。
「施策の目的は、ハイブリッドワークに対応した新オフィスによってウェルビーイングやワークエンゲージメントを高め、これにより生産性全体の向上を図るというものです。具体的には、オフィス以外の執務場所としてサテライトオフィスや自宅などのテレワークを許容し、週2日を目安としたテレワーク、7割のオフィス出社率といった指標を設定しています。ただ、全国の拠点に先行する事例になるため、新オフィスのコンセプトから設計する必要がありました」(鈴木氏)
働く場所を自由に選択できるハイブリッドワークを目指すからこそ、「オフィスに行く価値をどう定義し直すかが重要と考えました」と鈴木氏。「オフィスという1つの場所に集い、空間を共有することで社員同士のコミュニケーションを促進させ、議論する機会を増やし、組織を超えて互いを高めあえる環境に変えていくこと。さらにオフィスや自宅など、働く場所が離れていても『ともに』同じ目標に向かって働いていることを実感できるオフィスを目指しました」と話す。
このコンセプトを端的に示すのが「SYM(シム)」だ。「sym-(syn-)」は「ともに、同じ」を意味するギリシア語由来の言葉で、シンパシーやシンフォニー、シナジーなどの接頭辞として使われている。
「新オフィスのコンセプトである『SYM』という言葉は、チームのメンバーと『ともに』働く、たまたま近くに座った同僚と『ともに』情報交換をする、プロジェクトのメンバーと『ともに』プロジェクトを推進する――社会インフラ事業で人と自然の共生を目指してきたエイト日本技術開発という会社自身が、人と人、互いを認め合いながら共生する職場をイメージしています」(鈴木氏)
新たなオフィスでは、一部を除いて個人席をなくし、ほとんどの従業員がホテリングシステムを用いて自分が座る席を事前予約するフリーアドレス制に変更した。グループの中心が毎週ランダムに決定され、メンバーがその周辺に集うという変則的なフリーアドレス制で、これは新オフィスの運営委員会により決定された。グループ間のコミュニケーションを促進するスペースや、ミーティングが行えるカフェゾーンも設置されている。
新オフィスへの移転準備が全て順調に進んだわけではなかった。フリーアドレスを導入するにあたってオフィスの設備を検討した結果、フリーアドレスの180席に設置するディスプレイ計360台のうち、264台を新規に調達する必要が発生したのだ。移転の期限まで2カ月弱というタイミングだった。
「当初は旧オフィスで使用されていた固定席のディスプレイを流用する想定でしたが、フリーアドレスになったことで席単位で異なるスペックのディスプレイが混在してしまい、同じ作業環境を提供できないことが判明しました。例えば、ある席で行ったCAD作業の図面が別の席に移動した際には見え方が異なったり、画面が暗く見えてしまったりなど『ハズレ席』ができてしまう可能性があります。全ての席で同じ体験ができることを重視した結果、フリーアドレス全席のディスプレイ構成を同一にする決断をしました」(鈴木氏)
この内容を資料にまとめて起案し、会社の承認を得たのが3月末。5月中の搬入作業を考慮すると残された時間は限られていた。旧オフィスでは外資系メーカーのディスプレイも使用されていたが、短納期の大量調達には向かないと判断。2022年以降、技術職社員向けに導入していたiiyamaディスプレイに白羽の矢が立ったという。旧オフィスで利用されていたiiyamaディスプレイ96台を新オフィスに移設、不足する264台のiiyamaディスプレイを新規に導入することになった。
「もう1つの候補だったメーカーは船便での輸送となり、遅延のリスクがありましたが、iiyamaディスプレイであれば約260台のディスプレイを短期間で確保できることが分かりました。2022年の新入社員用PCからiiyamaディスプレイの『ProLite XUB2796QSU』を導入しており、社内の評判がよかったことも検討を後押ししました」(鈴木氏)
「われわれはCADデータを扱うので、デスクトップ領域の広い4Kディスプレイを2台で使う社員もいるのですが、建設業界はレガシーなアプリケーションが残っており、解析ソフトの中にはWindowsのDPI設定に非対応でメニュー表示が小さすぎたり崩れたりすることがありました。ですので、27型でWQHD(2560×1440ピクセル)解像度のProLite XUB2796QSUのほうが画面表示のバランスが良く、新入社員が使っているディスプレイを指して『自分のディスプレイもこの機種にしたい』と希望する人も多くいました」(呂氏)
1つの席に2台のディスプレイを設置し、余裕のある画面サイズでCAD作業が行えること、DisplayPortとHDMIの標準的な2系統を使えること、そして何より社員からの評判の高さが決め手となり、終売となった「ProLite XUB2796QSU」の後継機となる「ProLite XUB2792QSU-B6」の導入が決断された。
13階のフロアに360台のiiyamaディスプレイがずらりと並ぶオフィス風景。そこで日々業務を行う呂氏は「新オフィスに移転して明らかに作業効率が上がった」と話す。
呂氏は防災保全のコンサルタントとして土木構造物の設計、解析を実施する中、打ち合わせ資料や報告書の作成、専門技術者が作成したCAD作図のチェックなどを行っており、作業内容に応じて2台のディスプレイそれぞれをアプリケーションごとに使い分けている。
「高精細な図面や複数の資料をバランス良く表示できることはもちろん、ディスプレイのベゼルが狭いことで2つの画面を行き来するような視線移動もストレスがなく、作業に集中しやすい印象があります。また、執務室は13階ですので時間帯によってオフィスに入る日差しの影響を受けやすいことがありますが、画面の角度をさっと変えられるので外光で見づらいときにすぐ対応できます。それと、前日にその席を使用した人がディスプレイの表示設定をテキストモードやブルーライト軽減モードなどに変更していることがあるのですが、本体背面右のOSD(ディスプレイ表示設定)メニューがボタン式で操作がしやすく、自分好みの設定にすぐ戻せるのも良いですね」(呂氏)
そして何より印象的だったのは、均質化された作業環境とフリーアドレス制によって、社内の他の人とのつながりを感じやすくなった点だと呂氏は語る。
「固定席だったかつてのオフィスは、席に私物が積まれていってコックピットのようにこもりがちな印象がありました。席の移動がないので普段の作業では別部署の人と関わる機会も多くはありません。一方、新しいオフィスでは隣の席に座る人の顔ぶれも変わりますし、オフィスのレイアウトも後押しして『もっと他の人と関わろうよ』という空気感が出てきたと感じています。こうした偶発的なコミュニケーションから新たな価値が生まれると期待しています」(呂氏)
次世代のワークスタイル変革を目指すエイト日本技術開発で、その先駆けとなる東京オフィス移転プロジェクトを推進した鈴木氏は、iiyamaディスプレイの魅力を「トータルバランスの良さ」と評価し、「5年保証かつ国内サポートも魅力ですが、そもそも2年前から導入している同社製ディスプレイで故障したという話はどの拠点でも聞いていません」と品質についても太鼓判を押す。
「現在は新しいオフィスの在り方を模索している企業も多いと思います。ハイブリッドワークの実現を目指してフリーアドレスを検討しているなら、どんな座席でも同じ作業環境、同じ体験を提供することがポイントになるでしょう。その際、ディスプレイを短期で大量に導入する必要があるのなら、国内メーカーのマウスコンピューターが提供するiiyamaディスプレイは候補になると思います。特に27型の画面サイズやWQHDの解像度などのスペックはもちろん、価格や品質も含めた総合面でも、当社が今回導入した『ProLite XUB2792QSU-B6』はおすすめできます」(鈴木氏)
ProLite XUB2792QSU-B6は、WQHD(2560×1440ピクセル)解像度に対応する27型ワイドディスプレイだ。視野角の広いIPSパネル(左右ともに視野角89度)を採用し、コントラスト比は1300:1(ACR時8000万:1)、輝度250cd/m2、映像入力としてHDMIとDisplayPortを1基ずつ搭載する。
高い表示品質に加え、オフィス用途に適した多機能スタンドも特徴の1つ。最大150mmの昇降や最大27度のチルト調節、左右45度のスイーベル、画面が90度回転するピボット機能も備える。CADソフトを使った製図など幅広い作業に対応できるディスプレイだ。
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提供:株式会社マウスコンピューター
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia ビジネスオンライン編集部/掲載内容有効期限:2024年9月24日