社会情勢の変化やグローバル化への対応を目的に、終身雇用を前提とした従来の「メンバーシップ型」の人財マネジメントから、より専門性の高い人財の獲得や育成を図る「ジョブ型」への移行を目指す企業が増加している。
日立製作所(以下、日立)は、国内でいち早くジョブ型人財マネジメントを導入して人事改革に取り組んでいる。その一環として力を入れているのが国内の従業員約4万人を対象としたリスキリングだ。日立はどのような人事改革を進め、従業員のキャリア形成を支援しているのか。日立製作所のImtiaz Shaikh氏(Deputy CHRO)と、日立グループで人財育成サービスを提供する日立アカデミーの川村肇氏(取締役社長)、LinkedIn(リンクトイン)の田中若菜氏(日本代表)に聞いた。
――日立グループが進めている人財育成の取り組みについて教えてください。
Shaikh氏: 日立は2008年度の経営危機をきっかけに、経営改革に取り組んできました。これまでの日本国内での製品を中心としたビジネスモデルから、社会やお客さまの課題を解決する「社会イノベーション事業」のグローバル展開へと舵をきったものです。
それに伴い人事部門も経営戦略の転換をサポートできる体制の構築に踏み切りました。人事システムや人事戦略を見直し、職務や人財の見える化を推進してグローバル全体の人事組織と連携した体制にしたのです。
現在、日立グループの約6割の従業員は日本国外で働いており、海外売上比率も約6割となっています。ビジネスのポートフォリオと同時に人財のポートフォリオもグローバル化が進みました。
日立の人財育成は、従業員のキャリアの「end to end」(端から端まで)を視野に入れた3つの重点ポイントを定めています。1つ目は、自ら業務の結果に責任を持つ人財を育成するマネジメント体制の導入です。2つ目は「日立の人間は何ができるのか」を把握、検討して人財育成計画のベースとすることです。
3つ目が特に重要で、従業員が自らのキャリアを自分でつかむ環境の整備です。日立グループは国内外合わせて約28万人の従業員を抱えています。従業員の業務に対するエンゲージメントを高め、国や事業部を超えて活躍してもらえるように従来の日本的雇用慣行からジョブ型人財マネジメントへの移行を着実に実行しています。
――日本の従業員はジョブ型への移行をどのように受け止めていますか。
川村氏: 従業員の立場から見れば、働き方や評価方法が大きく変わるわけですから一朝一夕に対応できるものではありません。終身雇用を前提に「キャリアは会社が考えてくれるもの」と考えていた従業員もいるでしょう。それなのに急に「自分のキャリアは自分で考えろ」と言われても、すぐに実行できるわけはありませんよね。
従業員に「変わろう、そのために勉強を」と伝えるだけでは変革は起きません。丁寧なコミュニケーションと、変われる仕組みや学ぶための仕組みの提供が必要だと考えています。
――変われる、学ぶための仕組みの一つとして、「LinkedInラーニング」を選ばれたわけですね。導入した決め手は何ですか。
川村氏: 日立は国内の従業員約4万人を対象に、学習、研修教材の一つとしてLinkedInラーニングのコンテンツを提供しています。LinkedInラーニングの一番の魅力は、グローバルに通用する学習コンテンツを利用できる点です。将来的にグローバルの全従業員が活用することを見据えて2022年10月に導入しました。
Shaikh氏: ジョブ型人財マネジメントの定着において重要になるのが、生成AIの活用だと考えます。従業員が自らのキャリアを定めるときに必要なスキルや学習方法を生成AIが提案します。将来目指すべき姿が明確になり、従業員が「自ら手を伸ばしてその仕事をつかみ取りたい。学びたい」と思い立った場面で役立つのがLinkedInラーニングです。
田中氏: LinkedInラーニングが提供する2万3000以上の学習コンテンツは、LinkedInが持つ会員データからビジネスで本当に求められるスキルを抽出して開発しています。AIやセキュリティ、プログラミングなどのハードスキルからソフトスキルと呼ばれるリーダーシップやコミュニケーションなどを学ぶプログラムまで展開しています。短いコンテンツも用意していて、移動時間などに視聴できるのも特徴です。
受講者の質問に生成AIがリアルタイムで回答したりお薦めのカリキュラムを提案したりする「LinkedInラーニング AIコーチング機能」(LinkedIn Learning's AI-powered coaching)の日本語版が間もなく実装される予定です。一方通行のオンラインラーニングに加えて、インタラクティブに学びを深め、受講者の学習効果を最大化し、企業のスキルアップに貢献できるツールであり続けたいと考えています。
LinkedInは、200以上の国と地域の企業とパートナーシップを締結し、組織が直面する人財育成の課題と向き合ってきました。その中で共通している課題が、柔軟で適応力のある労働力をどのように確保するかです。自社に必要なスキルが何かを分析し、そのスキルを保有する人財を育成もしくは採用する――。それを一つのプラットフォームでできる点がLinkedInの強みと言えます。
従業員の意識を変えていくには、組織のトップが発信するメッセージの他に、学習する文化の醸成も大切です。その文化醸成にLinkedInは大いに貢献できると考えています。
――組織の文化を醸成することが重要なのですね。
田中氏: リーダーが学び始めると、その効果が全体に波及して学習する文化を早く醸成できます。学習文化の醸成は個々のキャリアの成長と組織の柔軟性を促進し、変化し続けるビジネス環境で組織が競争力を維持するために不可欠な要素です。LinkedInラーニングは、カスタマーサクセスチームが伴走して学習文化の醸成をサポートします。
学び続ける文化を醸成して好循環するシステムを目指す日立さまの取り組みは、多くの企業において参考になると思います。
Shaikh氏: 日立グループは複数の国と地域でさまざま事業を抱える大きな企業体です。成功の定義や考え方、リスキリング教材も地域やグループ会社によって異なります。全ての企業とコミュニケーションを取り、新しい価値や変化の重要性を受け入れてもらい、文化を醸成する必要があります。
その一環として、日本で先行して導入したLinkedInラーニングをグローバル全体の学びのプラットフォームとして採用する計画です。日立グループの全従業員に学ぶ機会を均等に与え、私たち人財部門がイニシアチブを取って文化醸成をけん引したいと考えています。
――LinkedInラーニングのさらなる活用方法があればお聞かせください。
川村氏: 従業員の学ぶ理由を考えたときに、キャリアとの連動が大切になると感じています。単にスキルを学習する場ではなく、学びが自分のキャリアプランにどう影響するかを受講者自身が理解しないといけません。
間もなく日本語版が実装されるLinkedInラーニングAIコーチング機能は、求められるスキルが何かを考える良いきっかけになるはずです。この仕組みは日本だけでなくグローバル全体で共有できますし、学ぶ意欲も刺激されるでしょう。
今後は、生成AI人財育成強化プログラムの中でLinkedInラーニングを活用して、日立グループ全体で生成AI基礎スキルのリテラシーを高めていきたいと考えています。組織全体でサポートしながら従業員にLinkedInラーニングを活用してもらいたいですね。
Shaikh氏: 身に付けたいスキルがある従業員には、習得に必要な経験や学習の場を等しく提供し、自らの可能性を見つめられる環境をグローバルで構築したいと思っています。そのためには従業員のキャリアと結び付ける考え方だけではなく、デジタル活用も必須です。これからを担う若い従業員はデジタルネイティブと呼ばれる世代です。短い時間で素早く学べるLinkedInラーニングなどのツールを積極的に活用したいと考えています。
田中氏: 日立グループとのパートナーシップは、LinkedInやLinkedInラーニングの変革力を示す代表例です。企業が急速な技術変化に対応して競争力を維持するために、LinkedInラーニングがどうサポートするかを示しています。
LinkedInラーニングをグローバルな人財戦略に組み込むことで、従業員のスキルアップや継続的な学習文化の定着、イノベーションの促進に貢献できると自負しています。
国内ではリスキリング需要が急速に高まっています。私たちはそのニーズに対応してより高品質なコンテンツを提供するために、世界で3拠点目となるLinkedInラーニングの制作スタジオを東京に開設しました。今後は日本の著名な講師や教育機関と連携してコンテンツを制作し、生成AIやリーダーシップ・マネジメント、セキュリティやプログラミングなど需要の高いコースを1年間で約3割増やす予定です。グローバルなトレンドに沿いながら、日本市場が直面する課題に対応したコンテンツを提供して日本企業の競争力強化に貢献していきます。
――ありがとうございました。
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