
物価高や人手不足、経営改革といった企業環境の変化を前に、「購買業務」の根本的な見直しが迫られている。これまで購買改革や購買DXの一丁目一番地といえば、製品の原料や部品といった「直接材」だった。しかし今、消耗品やOA機器といった「間接材」の購買業務にメスを入れる動きが広がっている。
しかし、間接材は「単価が低いためコスト削減効果が見えにくい」「部署や拠点ごとに処理していて実態がつかみにくい」「購買プロセスが複雑でガバナンスを効かせにくい」などの難しさがある。
現場の購買担当者も頭を抱えているようだ。ITmediaの読者を対象にしたアンケート「購買管理システム導入に関する企業実態調査」(※)に答えた93社の回答を見ると、購買業務に課題を感じながらも有効な一手を見いだせずにいる状況が浮かび上がってくる。購買改革はなぜ進まないのか。課題の本質はどこにあるのか。購買担当者は何から着手すべきなのか――年間100万件以上の購買関連実務に対応しているSB C&Sに聞く。
(※)年商1000億円以上かつ関東圏の企業・団体に所属するITmediaのメルマガ会員を対象にしたWebアンケート。調査期間は2025年6月12日〜8月1日で、有効回答数は93件。
間接材の購買管理について、現場はどのような課題を抱えているのか。アンケートの中で最も多かった回答は「課題は感じていない」(33.3%)、次いで「購買プロセスが非効率的」(28.0%)、「システム連携が不十分」(22.6%)、「サプライヤー管理が煩雑」(22.6%)、「コスト管理が不十分」(20.4%)、「社内承認プロセスが遅い」(19.4%)、「データの一元管理ができていない」(17.2%)と続く。この結果を下平氏は次のように分析する。
「購買の課題は多様化しやすく、特定の課題に偏ることはまれです。購買担当者、申請者、承認者、財務担当者といった人や立場、役割によって見え方が異なる傾向にあり、調査結果にも表れています」
課題が分散しがちな購買管理の中でも、非効率な購買プロセスに悩む企業は多いと下平氏は話す。しかし「非効率」の中身は企業によって異なるようだ。紙ベースのやりとりが残っているケース、社内ルールを守るために属人的な手続きが必要なケース、導入した購買管理システムを使うためにかえって業務が煩雑になったケース――このように各社で状況が異なるため、何にでも効く万能薬を求めるのではなく、自社の事情に適した購買管理システムや購買支援サービスを選ぶのがよいと下平氏はアドバイスする。
購買業務を非効率にする要因の一つが、表計算ソフトや紙を使った手作業にある。アンケート回答者の約11%が「ほとんど手作業」、約43%が「一部システム化している」と答えた。完全にシステム化しているのは回答者の約37%にとどまっており、約60%の企業で手作業が残っているのが実態だ。
「購買担当者が社内ルールを確認し、サプライヤーから受け取った書類をスキャンしてPDF化して稟議(りんぎ)システムに登録。承認されたら紙の発注書をサプライヤーに送り、納品後は領収書のやりとりや検収手続きが待っている――媒体やデータ形式、申請方法が異なるため非効率な業務になりやすいのです」
非効率な購買業務の改革は、次のフェーズに分けられる。
(1)企画・選定フェーズ:購買改革の方向性や利用システムの要件を検討
(2)導入・定着フェーズ:購買管理システムを導入、運用
(3)改善・維持フェーズ:効果を高めるための取り組みを推進
企画・選定フェーズでは、購買改革における有効打の一つである購買管理システムの導入が検討されることが多い。アンケート回答者の57%が「購買管理システムが必要だと感じている」と答えた。
購買管理システムは、複雑な購買フローを1つのシステム内で完結させ、適切なデータ管理によって内部統制を強化できる。アンケート回答者が期待する効果は「業務効率化」「コスト削減」「データの一元管理」「社内承認プロセスの迅速化」「コンプライアンス強化」などが挙がった。
購買管理システムの必要性が認知されている一方で、システム化に踏み切れず非効率な購買を続けている企業があるのはなぜか。
下平氏は「効果が見えにくいという壁がある」と指摘する。間接材は直接材よりも単価が低いケースが多く、購買価格の抑制や工数削減を積み上げて効果を出す。コストを一撃で大幅に削減しにくいため、現場が導入したくても経営層の理解を得るのが難しいのだ。購買支援システムの中には、サプライヤーやECサイトから買うよりも低い単価で間接材を入手できるものがある。そうしたシステムを選定すれば導入効果を大きくできるはずだ。
購買管理システムを活用するための条件が多いことも導入のハードルになっている。既存のサプライヤーに同システムへの登録を依頼する必要がある他、電子帳簿保存法やインボイス制度のような法改正に対応したシステムを選ぶ必要がある。
「『あったらいいのに』で止まらず、検討から始めることで自社の課題に気付ける場合があります。購買管理システムを導入するとなったら、日本の商習慣や法制度に合わせて標準機能がアップデートされる国産のシステムを選ぶとよいでしょう。長期的な安心につながります」
従来は自社に合わせた購買管理システムをオンプレミスで構築していた企業が多かったが、最近は機能やルールが自動でアップデートされるSaaSを選ぶ企業が増えている。また購買支援システムを提供するベンダーの中には、サプライヤーとの交渉を支援しているところもある。こうしたサービスを賢く利用することが肝心だ。
購買管理システムを利用すると決まったら、導入・定着フェーズに移る。ここでの障壁をアンケート回答者に聞くと、「現在の業務プロセスとの適合性」が40.9%でトップになった。近年、システムに業務プロセスを合わせる「Fit to Standard」という考え方が支持を集めているが、下平氏は注意が必要だと強調する。
「安易に『システムに合わせればいい』と考えると、かえって業務プロセスが複雑化してしまう場合があります。業務プロセスや社内ルールを根本から変える覚悟で取り組まないとFit to Standardの実現は難しいでしょう。『こうした使い方がしたい』という要件が決まっているのであれば、それに合わせて機能や設定を柔軟に変更できる購買管理システムを選ぶことをお勧めします」
システムの柔軟性が低いとシステム外で対応せざるを得なくなり、導入プロジェクトの頓挫や余計なコストの発生につながってしまう。人とシステムが寄り添いながら改革に取り組める購買管理システムを使うのがよいだろう。
アンケート結果からも柔軟なシステムの必要性が見えてくる。購買管理システムの導入時に重視するポイントを聞くと、「操作性の良さ」「コストの削減効果」「他のシステムとの連携性」などが並んだ。これらは企業ごとに求める条件やレベルが異なるため、標準機能が充実しつつ自社用にカスタマイズできるシステムを選ぶことを下平氏は勧める。
購買改革において、購買管理システムの導入がゴールではない。そこからが改革のスタートとなり、次は改善・維持フェーズに移っていく。購買支援を手掛ける下平氏は、改善・維持フェーズについて次のように説明する。
「最初は利用率を上げることに注力し、次にシステムで扱えていない業務を取り込みます。それらが一段落したら、会計システムや稟議システムといった他システムとの連携やさらなるシステム化の適用範囲の拡大に着手し、標準機能で対応できるのか、カスタマイズが必要かなどの検討を深めます」
洗剤や化粧品を手掛ける大手化学メーカーの購買を支援した事例では、さまざまなECサイトで間接材を個別に購入する従業員が後を絶たず、コスト管理やガバナンスに課題があった。複数年に及ぶ年間計画を立てて、間接材をシステムに取り込むことからスタート。機器点検のように定期的に支払いが発生する契約なども購買管理システムに取り込んだり、購買金額によってワークフローを変えたりといった改善を続けて購買改革を成功させた。
こうした購買支援で得たノウハウは、SB C&Sの購買管理システム「パーチェスワンクラウド」に反映している。同システムは純国産であり、法制度の変化に素早く対応。ECサイトのように直感的に操作できるUI(ユーザーインタフェース)が早期の定着に寄与する。個社ごとにカスタマイズした機能の中で、他社にも有用だと判断した一部を標準機能化して提供しており、日本企業が求める機能をほぼ備えていると下平氏は話す。
購買管理システムの導入〜維持に自社だけで取り組む企業があれば、外部の専門家に任せるBPOサービスを利用する企業もある。システム化が進むと社内問い合わせの対応やマスターデータの管理が必要になり、そうした業務をアウトソースするニーズが一定数ある。下平氏は「BPOサービスを利用すると、システム運用から解放されるため購買業務に集中できます」と説明。SB C&Sは、購買BPOサービスを手掛けるディーコープと協力して顧客支援を展開している。
「『いよいよ本腰を入れてやろう』『一度失敗したけどもう一度やろう』という姿勢の大企業が増えてきた感覚があります。購買部門や事業部門などユーザーが主導権を持って相談に来るようになりました。そうしたお客さまが購買管理システムを利用する際の導入や改善といった社内対応も、サプライヤーへの説明などの社外対応もSB C&Sがご支援します。新しいシステムを導入する際に反発に遭うこともありますが、私たちが支える覚悟です」
調査結果から多くの企業が購買業務に課題を抱えていると分かった。裏を返せば「課題」だと認識し、改善意識が芽生えているということだ。課題を解決したい、購買業務をより良くしたいと思っている企業の担当者はSB C&Sに相談すると道が開けるかもしれない。
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