交換レンズ百景
マニュアルフォーカスで撮る楽しみを満喫――カールツァイス「Loxia 2/50」
滑らかで心地よいフォーカスリングの感触
カールツァイスの「Loxia 2/50」は、ソニーのフルサイズミラーレス「α7」シリーズ用に設計された標準単焦点レンズだ。焦点距離は50ミリで、開放値はF2に対応する。価格は9万7300円(税別)。
これに近い焦点距離を持つレンズとして、ソニー製のカールツァイスレンズ「Sonnar T* FE 55mm F1.8 ZA」が以前から発売されているが、本レンズはそれとは別にカールツァイス自身が発売する製品である。焦点距離と開放値がやや異なるほか、AFの有無が両者の仕様上での大きな違いになっている。
ふだん主にAFで撮影している人にとっては、マニュアルフォーカスの操作は少々ハードルが高く感じるかもしれない。気軽なスナップでは、AFのほうが楽だしスピーディなことは確かだ。私自身、日ごろはAFを多用している。
特にミラーレスカメラの場合、一般的なレンズの多くは、AFでの使用を前提に設計されているため、マニュアルフォーカスの操作感はあまりよくない。フォーカスリングの感触はスカスカで頼りなく、積極的にマニュアルを使おうという気にはとてもなれない。
だが、今回試用した「Loxia 2/50」は、そもそもマニュアル専用に設計され、マニュアルフォーカスの操作にこだわったレンズである。フォーカスリングにはねっとりとしたトルク感があり、その感触は滑らかで心地よい。リングの回転角は180度と広く、至近距離での厳密なフォーカス調整も確実だ。
さらに、レンズマウント部には電子接点があるため、カメラ側の機能によってフォーカスリングの回転と同時にMFアシストを起動できるのが便利だ。部分の拡大表示を見ながら、正確なピント合わせがスムーズに行える。AF派の筆者でも、快適にマニュアルフォーカスの操作を楽しむことができた。
開放値でのボケ味と絞り込んだ際のシャープ感
レンズ鏡胴にはアルミニウム合金を採用する。手に取ると金属特有の冷たい質感が伝わり、同時にしっかりとした剛性も感じられる外装だ。フォーカスリングについても金属製であり、表面に溝を刻んで手触りを高めている。
ソニー製Eマウントレンズに比べた場合、外観上での大きな違いは、フォーカスリング上には距離指標が、その下には被写界深度目盛りがそれぞれ刻印されていること。置きピンで撮る際に役立つほか、マニュアルフォーカス操作の安心感を与えてくれる。
絞りリングを備えることも、ソニー製品とは異なる独自の特徴だ。絞りリングの回転は、通常はクリック感があるが、同梱のツールを使ってバヨネット面のネジを回すことで、クリック感のない操作に変更することもできる。これは動画撮影に配慮した仕様といえる。
レンズの全長は66.2ミリで、重さは約320グラム。フルサイズ対応の標準レンズとしては比較的コンパクトで、α7に装着した際のバランスは悪くない。レンズ構成は4群6枚の対称型。カールツァイスの伝統ともいえるPlanarだ。絞り羽根は10枚で、最小絞りはF22となる。
描写については、絞り開放値でのスムーズなボケ味と、絞り込んだ際のシャープな解像感が見どころといえる。最近のレンズでよく見られる、開放値からカリカリにシャープな描写とは異なり、滑らかなボケを重視した写りだ。そして絞り込むほどに切れ味が増していく。歪曲や色収差は目立たないように低減されている。
「Loxia 2/50」は、フォーカスリングと絞りリングの操作によって、撮る楽しみを実感しながら、美しいボケ味とシャープな切れ味の両方が味わえるレンズだ。しかも小型軽量で携帯性は良好。利便性重視の用途はAFに対応した純正の標準ズームにまかせ、それとセットにして持ち運ぶと、撮影の自由度や表現力はいっそう広がるだろう。
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