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最初の完成形――キヤノン「IXY DIGITAL 200a」:矢野渉の「クラシック・デジカメで遊ぶ」(2/2 ページ)
キヤノンのコンデジ「IXY DIGITAL」(IXY)シリーズの歴史は10年以上をさかのぼれるが、2002年の「200a」で既にひとつの完成形が提示されていた。200aを見つけたら、ピカールも買っておこう。
「優等生」の写り
IXY DIGITAL史上に残るデザインを持った200aを所有し、その存在を愛でる、という楽しみ方は正攻法だ。それだけの価値はあるプロダクトだと僕は思う。
ただ、カメラである以上、写真も撮りたいところだ。ひと昔前のデジカメを手に入れたら、「クラシック・デジカメ」特有の癖のある絵を楽しみたいと誰もが思うはずだ。
ところが200aに関して言えばそれは無理なのである。この時代にしてキヤノンの映像エンジン「DiGiC」はすでに必要十分な進化を遂げていたのだ。
設定をすべてオートに設定して、何も考えずにシャッターを切っても、どんな状況でも見た通りのJPEG画像があがってくる。ミックス光源の難しいホワイトバランスも、苦も無く「記憶」の色に合わせてくる技術は舌を巻くほどだ。これはフィルムカメラ、デジタルビデオカメラのメーカーであり、しかもレンズメーカーでもあるキヤノンの他社に対するアドバンテージにほかならない。
そういう意味で200aの写真は、「クラシック・デジカメで遊ぶ」の範囲では面白味に欠け、つまらない。優等生そのものだ。まあ、写りがいいからと文句を言うのも変な話なのだが。
200aは状態の良い中古を手に入れ、ガラスケースに飾り、ときどき取り出してはピカールで磨く、という楽しみ方が一番なのかもしれない。
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