「NEX-5N」第2回――「LA-EA2」でAマウントレンズを楽しむ:長期試用リポート
「LA-EA2」はNEX-5NなどEマウントのカメラボディにα用のAマウントレンズを装着するアダプターだが、本体内に位相差AFセンサーを搭載しており、Aマウントレンズでも快適な撮影を楽しめる。
デジタル一眼やマイクロフォーサーズに比べた際、NEXシリーズの弱点として指摘されるのが、交換レンズの乏しさだ。新マウントのカメラとして登場し1年半以上が経過しているが、10月末現在に入手できるのは標準ズーム「E 18-55mm F3.5-5.6 OSS」、パンケーキレンズ「E16mm F2.8」、高倍率ズーム「E18-200mm F3.5-6.3 OSS」、単焦点マクロ「E 30mm F3.5 Macro」の4本のみである。
年末に向かっては単焦点レンズ「E 50mm F1.8 OSS」と「Sonnar T* E 24mm F1.8 ZA」が追加される(望遠ズームレンズ「E 55-210mm F4.5-6.3 OSS」も本来は流通しているはずだが、タイ洪水の影響で極度の品薄になっているようだ)とはいえ、他のマウントに比べてさみしいことには変わりない。
そこで今回試用したのが、NEX-5NをはじめとしたEマウントのカメラボディに、Aマウントレンズを装着するためのマウントアダプター「LA-EA2」。一般的なマウントアダプターとは異なり、本体内に半透過ミラーと位相差AF用センサーなどを内蔵しており、Aマウントレンズ装着時にでも位相差AFによる高速なオートフォーカスを楽しめるのが特徴となる。既存マウントアダプター「LA-EA1」でもEマウントのボディにAマウントレンズを装着できたが、この位相差AFの有無が大きく異なるところとなる。
NEX-5NへLA-EA2を介してAマウントレンズ「70-300mm F4.5-5.6G SSM」(SAL70300G)を装着。かなりインパクトのあるスタイルだが、左手でLA-EA2とレンズ鏡胴を支えるとかなり安定する。ちなみにこの状態での35ミリ換算焦点距離は約105〜450ミリ相当になる
マウントアダプターとはいえ、前述のようにアダプター内に半透過ミラーとAFセンサーを内蔵しているため、約78.5(幅)×86.5(高さ)×44(奥行き)ミリ、約200グラムとそれなりに大きい。上の写真では大型ズームレンズを組み合わせているのでバランスがとれているように見えるが、レンズを外してアダプターとカメラだけの状態にするとNEX-5Nの小ささもあり、アダプターの大きさが強調されるように感じる。なお、本体下には三脚穴が設けられており、三脚へスムーズに固定できる。
基本として装着に伴うカメラの設定変更は必要ないが、正確に言えばAFがカメラ本体内蔵のAFではなく、LA-EA2のAFを使うことになるため自動的に設定変更が行われる。具体的にいうとAFは15点測距点(3点クロス)の位相差AFとなり、また、AFモードはAF-S/AF-Cの選択式となる。
加えて装着時にはタッチ操作によるフォーカスエリア設定が行えなくなるほか、AF/MFの切り替えについてもSAM/SSMレンズではレンズ側のスイッチが有効となり、カメラ本体のメニューは操作できないようにブラックアウトする(SAM/SSMレンズ以外はカメラメニューから切り替え可能)。
さて気になるAFの速度だが、専用の位相差AFセンサーを内蔵していることあってAマウントのレンズでもストレスのない撮影を楽しめる。今回試用したSAL70300Gのテレ端を使ってもAFはスピーディーであり、動画撮影に関しても位相差AFによるフルタイムAFが利用できる。使い勝手としては“ほぼα”といって差し支えないだろう。
ただ、マウントアダプター経由という形式になるため制限も存在する。気をつけるべきは「基本的にAマウントレンズに手ブレ補正はない(Aマウントの「α」ボディは手ブレ補正機構を内蔵するため)」ことと、動画撮影時に開放絞り値がF3.5以上のレンズでも値が3.5に固定されるため、絞り値を変更したいときにはMFを使う必要のあることだ。また、組み合わせるレンズがSSMレンズであっても、動画撮影を行うとAF駆動音などの動作音が記録されてしまう場合がある。
今回試用したSAL70300Gについていえば、手ブレについては構え方とシャッタースピードに注意すればなんとか対処できたほか、動画撮影をしてもAF動作音はほぼ気にならないレベルだったが、手持ちでテレ端の動画を撮影するのはちょっと無理があった。ワイド端ならば何とかなるレベルにまで手ブレを押さえられたが、動画を撮る際には手ブレを防止するためにも三脚を使うべきだろう。
マウントアダプターといえば本来つかないはずのレンズとカメラボディを結びつけるアイテムで利用時には何らかの制限が発生するものだが、本製品についていえば機能的な制限は少ない(前述以外にもDMF設定時にMFアシストが使えない、被写体追尾AFが測距点上しか機能しないなどの制限はある)。なによりAFの快適さはアダプター経由であるとは思えないほどだ。
現在のところ本製品を利用できるEマウントのデジタルカメラカメラはNEX-5Nのみとなっているが、12月中に予定されているファームウェアアップデートにて、NEX-5、NEX-C3、NEX-3でも本製品が利用できるようになる。NEX-5/3/C3は比較的安価に入手できるので、既にAマウントのレンズ資産を多く持っている人にとっては、「手持ちのレンズを生かすために、本製品とEマウントボディを買う」という選択肢が浮上するほど価値のあるアイテムといえよう。
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