「D600は手軽なFXカメラ」――ニコンに聞く「フルサイズ」(前編)(2/2 ページ)
アナログ時代から高い気を誇るニコン。その技術力は健在で、デジタル時代の現在でも魅力ある製品を次々と投入している。なかでも並々ならぬカメラへの情熱と技術を結集したのが、「D600」を中心とした、フルサイズセンサー搭載機だ。
FXとDX、ボディもレンズも継続展開
━━今年はフルサイズ製品を矢継ぎ早にリリースされたのですが、D3200やD5200といったAPS-Cサイズセンサーを搭載する、DXカメラは今後も展開されるのでしょうか。
石井氏: もちろんです。DXカメラについては、エントリー向けや初心者向けといった位置づけだけではなく、十分なカメラ経験を持つ方にもメリットのある製品群ですから、DXカメラは今後もずっと出していきたいと思っています。必ずしもいずれこっち(FX)に来てもらわなくては困る、というものではないです。
━━ユーザーの選択に任せるということですね。
石井氏: そうですね。D600の投入は、FXカメラの製品選択の幅を広げたということです。
━━話は一眼レフから外れてしまうのですが、ミラーレスカメラのNikon 1新製品「Nikon 1 J2」「Nikon 1 V2」も投入しています。ミラーレスと一眼レフとは分けて商品を展開していくのでしょうか?
石井氏: そうです。ミラーあるなしというよりも、求める写真の方向性での分け方ですね。Nikon 1については、結果的にミラーがないのがそれに適している形態だったというわけで、とにかくミラーを取る、ミラーレスカメラを作るところから始まったわけではありません。
Nikon 1は「今まで撮れなかったものを撮る」というキーコンセプトを持っています。秒何十コマという超高速連写もできますし、Nikon 1 V2では半押しをするとその間の動きをバッファして、次に約1.3秒(40コマ分)をスロー再生し、それを見ながら、ここだという瞬間でシャッターを押しきるとそれが記録される「スロービュー」という新しい試みなども入れてありますので、そういったことをやろうとなるとミラーの無い方が有利ということです。
━━それぞれ、カメラのカラーが違うのですね。
石井氏: スロービューなどはかなり動画的な発想でして、ムービーの1コマ1コマが非常に高精細でキレイなので、そこから発想していっていろいろできるのではないかと思いました。最終的にはお客様が鑑賞するのは静止画となりますが、動画的なアプローチを含めて機能を検討していますね。
━━レンズについてもお聞きしたいのですが、DXレンズも今後はリリースされていくのでしょうか?
石井氏: はい。お客様からの需要はありますので、DXレンズも引き続き投入していきたいと思っています。一眼レフ用のレンズに関しては二系統ですね。Nikon 1用の「1 NIKKOR」レンズもありますが、一眼レフ用としては今後もFX、DXレンズを出していきます。
レンズ話ついですが、D3登場のころから、FX対応レンズのリニューアルを進めています。もちろん新しいスペックのレンズ、魅力的なレンズも出していますが、従来製品についても、どんどんリニューアルをかけています。センサーや画像処理エンジンの進化もありレンズに対する要求もあがっていますので、それに対応するレンズとしてです。加えて言えば、特に高画素なD800/800Eになるとレンズに対する要求レベルが上がりますので、「推奨レンズ」なるものを弊社からも発信しています。
ニコンのカメラにはニコンのレンズを使っていただきたいという考えもありますし、そうでないとせっかく数十万円のカメラを買ったとしてもフルに実力を発揮できません。「写真はレンズで決まる」という言葉もあるくらいですからね。
━━レンズのリニューアルを進めているとのことですが、いつまでに完了するとかいったものはあるのでしょうか? 今年はFXレンズのリニューアルが多く行われているような印象を受けます。
石井氏: 特に明確なスケジュールはありません。昔からのレンズでも十分に使えるものはありますし、独特の“味”を楽しめるレンズも多く用意しています。性能を追い求めたレンズの存在は、それはそれで時代の要求だとは思いますが、味のあるレンズを求める声も多くあります。なんでもリニューアルすればいいとは思っていません。
FXレンズのリニューアルについては、D3投入時に決定していていたことなので今年が特に多いという訳ではありません。確かにFXレンズについてはリニューアル製品投入がハイペースで続いていますが、ペースが維持されるかはとにかく、順次対応を進めていく考えです。もちろん、DXレンズの開発も順次進めていきます。
━━D800、D800Eクラスになると、撮る側にも真剣に向き合わないといけませんね。
石井氏: これも弊社からも発信させて頂いているのですが、D800の実力をフルに発揮するためにはということでいくつかポイントを挙げています。一番怖いのは手ブレですので、まずは手ブレを抑えてもらうためには三脚を使うだとか、ミラーアップをしていただくとか、そういった振動対策ですね。ちょっとでもブレてしまうとせっかくの有効3630万画素が台無しになってしまうので。こういった超高画素カメラ、もしくはFXセンサーのセンサーの良さを味わいたいというのであれば、撮影スタイルも気を付けていただく必要があると思います。ちょっとした所作にたいしてもカメラは正直に返しますので、しっかりした三脚なりレリーズなどを使っていただくのをお勧めします。
━━そういった部分もあるのでしょうか。つい最近発売された「AF-S NIKKOR 70-200mm f/4G ED VR」は5段分の手ブレ補正機構がついていますね。
石井氏: そうですね。レンズにも最新技術を積極的に投入していますので、結果として、シャッタースピード約5段分の補正効果を達成できました。
だからといって技術への過信は禁物だと思います。あくまでもVRは補助ですので、片手で適当に撮ってもカメラとレンズがなんとかしてくれるだろうというのはよろしくありません。しっかりとした撮影技術を身に着けていただくというのが、FXカメラを味わう近道だと思います。
(後編に続く)
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