カメラの命題にデジタル技術で挑む 新FUJIFILM Xが掲げた命題:CP+ 2013
富士フイルムの新製品「FUJIFILM X100S」「FUJIFILM X20」は、「X100」「X10」の後継モデル。評価の高い機種の後継を企画するにあたって、何を指針としたのか。
新製品「FUJIFILM X100S」と「FUJIFILM X20」の投入で、第2段階に入ったといえる富士フイルムの「FUJIFILM X」シリーズ。これらのパフォーマンスも気になるところだが、評価の高い機種の後継を企画するにあたって、何を指針としたのか。同社 電子映像事業部 商品部 担当課長の河原洋氏に話を聞いた。
――まずは、新製品「FUJIFILM X100S」と「FUJIFILM X20」の企画に際し、既存機種「X100」「X10」からどういったアップデートを図ろうとしたか教えてください。
河原氏: 前機種の話からすると、X100とX10はいずれもその企画開発時にレンズを相当追い込みました。特にX100の23ミリ(35ミリ換算35ミリ相当)F2の“フジノン”レンズについては「やりきった」ともいえるものです。
そこで後継機種のレンズはどうするか。明るくする、あるいはズーム倍率を上げるなどが考えられますが、レンズ開発へ必要な光学技術にはそう頻繁にブレイクスルーが起きないので、どうしてもサイズや形状に大きな変化が伴ってしまいます。それではX100/X10の後継が体現すべきスタイル、コンセプトから逸脱することになりかねません。コンセプトに即したレンズは、X100/X10の時点で完成していたと判断しました。
FUJIFILM Xシリーズがカメラである以上、「画質」と「レスポンス」の向上は常に追い求めるべき命題です。ではその命題に対する回答として何をすべきか、それを考えたとき、今回は日進月歩するデジタル技術に目を向けました。その回答として、X100SとX20では「ローパスレスの撮像素子」「高速処理可能な画像処理エンジン」「点像復元」「像面位相差AF」といったデジタル技術による高画質化、高速化を図ったのです。
――目指した「高画質」についてもう少し詳しく教えて頂けますか
河原氏: 画質の究極的なテーマのひとつは「人の目で見て自然な絵」です。その実現へ近づくため、新製品ではさらなる解像感の向上と低ノイズ化を図りました。解像感については撮像素子をローパスフィルターを有しないX-Trans CMOS IIとしたほか、回折現象をデジタルの信号処理で解決する点像復元処理によって前機種以上の解像感を得ています。低ノイズ化については、既存機種比で高感度撮影時に約1段分のノイズ低減が図られています
点像復元処理は絞りを絞って撮影する際、絞りで遮られた光が回り込んでしまって画像がぼやける現象(回折現象)を解消するものですが、RAWからの現像段階で処理するのではなく、リアルタイムで処理するために処理としては非常に重く、新プロセッサーの搭載無くしては実現しませんでした。
――X100SとX20のいずれも、デザイン面では前機種を踏襲しています。新機種であることをアピールするために何かを変えようとは考えなかったのでしょうか。
河原氏: X100とX10の購入理由を尋ねたアンケートでデザインが非常に高い評価を得ていましたので、基本的なデザインは既存機種を継承しています。新鮮味がないとも言われてしまうかもしれませんが、ボディケースなど各種のアクセサリをそのまま使えるというメリットもあります。
ただ、細部にこだわった操作性の改良は行っています。特にX100Sに搭載した像面位相差AFセンサーを利用する「デジタルスプリットイメージ」でのマニュアルフォーカシング機能(ピントが合っていない場合、帯状の画像が左右にずれた状態で並び、MFを合わせると次第にこのズレが一致していく)は、非常に高い精度を持ち、特に近距離の被写体においては正確なマニュアルフォーカスを実現してくれます。
かくして新製品は両モデルとも、基本的なデザインは継承しながら、センサーや画像処理エンジンの刷新、新たな画像処理プロセスの導入といったデジタル技術によって高画質化を図るアプローチが取られた。河原氏はこうしたデジタル技術による高画質化が、今後登場するであろうFUJIFILM Xシリーズ新製品に取り入れられていく可能性も示唆しており、(少々気の早い話ではあるが)Pro-1やX-E1といったレンズ交換式製品の次期製品の概要がおぼろげながら見えてきたように思える。
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