第1回 「カメラアングル」を使い分けて写真に変化を与える:デジカメスナップ虎の巻(2/2 ページ)
街で面白い写真を撮るにはただ何となくシャッターを切るのではなく、構図や撮り方にちょっとした工夫が欲しい。そんなスナップ撮影のコツを伝える連載の第1回はカメラアングルについて。
神様の視点ハイアングル撮影の極意
ハイアングルのスナップ撮影を楽しむには、いくつかのポイントがある。撮影のセオリーやルールといった一般的なものではなく、私が個人的に気にかけている撮る際の留意点だ。そのうちの3つを紹介しよう。
1つめは、背景(地面)にこだわって撮影場所を探すこと。屋外でのハイアングル撮影では地面が背景になるが、見下ろせる場所に必ずしも画になる地面があるとは限らない。逆に、撮影意欲をそそられる地面が見つかっても、そこを見下ろせる場所がなければハイアングル撮影は成り立たない。どこでも自由にハイアングルを得るために、カメラを長いポールに取り付けたり、凧やラジコンヘリ、さらにはモーターパラグライダーを使う猛者もいるが、私の場合はそこまでの本格派ではない。散歩がてらに、ビルや歩道橋などのハイアングルスポットをのんびり探している。
下の写真は、西新宿の高層ビル街で撮影したもの。ビル街は建物の上下の変化が豊富で、さまざまなハイアングルビューが楽しめる。この場所(都営大江戸線 都庁前駅の上)は昔から何度も歩いていたが、意識して上から見るまでは地面がこんなシャレたハニカム柄になっているとは気付かなかった。
2つめのポイントは、視界の全部は写さずに、画面のフレーミングをぎりぎりまで切り詰めること。ハイアングルからの視点は広い範囲が見渡せるため、ついそのすべてを画面に収めがちになる。でも、全体を捉えた写真は説明的すぎてつまらない。気になった部分のみを大きく写し、余計なものは画面外にカットしてしまおう。はみ出すくらいがちょうどいい。
3つめのポイントは、シャッターチャンスにこだわること。都会の風景をハイアングルで捉える場合、建物や地面などの人工物のみで画面を構成する手もあるが、そこに人の姿が加わるとよりリアルで印象深い写真になる。
犬の視点ローアングル撮影を楽しむ
ローアングル撮影については、ハイアングル撮影に比べると、場所の難易度は低く、カメラを上に向けさえすればどこでも実践できる。もちろん、妙な誤解を招きかねない人ごみでのローポジション&ローアングル撮影は厳禁である。
ローアングルが似合う被写体といえば、まず思い浮かぶのは花などの植物だ。低い位置から見上げることで青空を背景にしつつ、日の光に透き通る花びらを狙うのは一種の定番の撮り方といえる。また、乗り物や建造物などに近寄って、下からローアングルで迫ることで、スケール感を際立たせるのも面白い。
最近増えているバリアングルやチルト式の液晶モニタを備えたデジカメなら、こうしたハイアングルやローアングルの撮影がいっそう手軽に楽しめるだろう。液晶が動かないデジカメの場合でも、撮影者自身がちょっと背伸びをしたり、しゃがんだり、這いつくばったりすればカメラアングルは簡単に変えられる。それだけで、なまった身体にはいい運動になるし、その上、いい写真が撮れれば言うことなしだ。
写真:永山昌克
広告スタジオを経て98年よりフリーランスのフォトグラファー。得意分野は都会のスナップ。著書に東京でのスナップをまとめた「デジタル一眼で東京を撮る」(ソシム刊)、写真展に中国でのスナップをまとめた「チャイニーズ・ウエスタン」(銀座ニコンサロン)などがある。
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