「Df」で楽しむ、初めてのMFニッコール――ニコン「Ai Micro-Nikkor 105mm f/2.8S」:交換レンズ百景
ニコン「Df」を手にして、マニュアルフォーカスのニッコールレンズに興味が湧いたら「Ai Micro-Nikkor 105mm f/2.8S」を試して欲しい。使い勝手の良い焦点距離で、被写体にグッと寄れる便利さも魅力だ。
ニコン「Df」の影響でマニュアルフォーカスのニッコールレンズが脚光を浴びている。フォーカスはもちろん、絞りリングも手動のものである。Dfのマウント部にある露出計連動レバー(Ai連動ピン)を跳ね上げれば、Ai方式以前のニッコールレンズも装着できるので、オールドニッコールは中古カメラ店で売れ行きがいいらしい。
もしこれから初めてマニュアルフォーカスのニッコールレンズを探すのなら、Ai方式の「Ai Nikkor」を探すといい(Ai方式に改造したレンズも可)。なぜならDfにレンズ情報を入力・設定するだけで、絞りリングによる絞り値の設定ができ、簡単に撮影できるからだ。非Ai方式のものだと、絞りリングとサブコマンドダイヤルの両方での設定が必要になる。
さて今回はAiニッコール現行ラインナップの中から「Ai Micro-Nikkor 105mm f/2.8S」をインプレッションする。105ミリというポートレートにも使い勝手がいい長さで、マイクロニッコールなのでグッと被写体にも寄れる便利なレンズなのだ。
細身の割にズシリと重みを感じるこのレンズは、ニッコールレンズの系譜を脈々と伝える造りだ。冷たい金属鏡筒、塗り分けられた撮影倍率表示、カチカチと節度感あふれる絞りリング、確実にフォーカスできるラバー製ローレットをまとったフォーカスリング、シルバーに輝く指標リングなどニコンファンはたまらないに違いない。開放F値は2.8だがマクロレンズなので最小絞りはF32、最短撮影距離は41センチ、最大撮影倍率は1/2倍となっている。
東京と神奈川の境にかかる橋脚のリベットにグッと寄ってみた。マクロレンズというとカリカリという印象があるが、絞り開放だとソフトで暖かい描写となる。ボケもF2.8開放だと円形になり優しい雰囲気だ。
シャボン玉を吹くモデルの唇にフォーカスした。Dfの見やすいファインダーと、このレンズの適切なフォーカシングピッチはマニュアルでもピント合わせがしやすい。F5.6に絞ると、柔らかい描写からマクロレンズらしい硬い描写へと徐々に変化してくる。それにしても唇が独自の生き物の様に感じる写りである。
こちらのカットもF5.6だ。モデルの瞳にフォーカスして顔全体がフレームいっぱいになるように寄ってみた。シャープなところには芯があり、被写界深度外は上品にボケているのが好ましい。ほほから唇にかけての肌の描写もなかなかのものに感じる。瞳に映る撮影者までも判別可能だ。
雰囲気のあるカフェにディスプレイされたホイール。劣化気味の少し硬化したタイヤの感じや、ホイールにペイントされたグラフィックの質感、そして鈍い光を放つスプロケットの描写が生々しい。
ビアサーバに近づいて撮影。円形絞りでないため、少し絞ると背景の点光源がご覧のようなボケとなる。これはこれで味としていい雰囲気だと思うがどうだろうか。冷たそうなメタルの質感と色合いもいい印象だ。
105ミリというと中望遠に属する。2つの橋を河岸から捉えたショットだが、望遠レンズらしく遠近感が圧縮されて特長が出ている。工事中の橋脚に被せられた工事用シートや、走っている電車の質感もしっかりと感じることができる。ポートレートから接写、そして風景やスナップまでオールマイティーにこなせるレンズである。
再びシャボン玉を吹くモデルのカットだが、今度は完全逆光でハイキーに撮影した。最新のレンズに較べて逆光時に弱い印象があるが、このように飛ばしてしまって使う手もある。どことなく暖かみのある仕上がりに感じるのは自分だけであろうか。
このレンズはポートレートにももってこいだ。チョイ絞りでの描写が優しく、女性を撮るのにマッチしている印象を受けた。また七角形の独特のボケが懐かしくも新鮮な雰囲気を出してくれるのが発見である。ググッとモデルに寄ってのパーツ撮りから、バストアップや表情のアップまで安心して使えるレンズなので、初めてのAiニッコールレンズとしてもオススメできると思う。もちろん風景やマクロ撮影にもピッタリだろう。
(編注:本記事では一般的な撮影状態での利用を念頭としているため、人物撮影にレフ版などは利用しておりません)
(モデル:佐藤麗奈 オスカープロモーション)
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