「FUJIFILM X-T1」第3回――南信州の遅い春をフィルムシミュレーションで追う:長期試用リポート
少し遠出をして信州の山村にX-T1を持参、さまざまな被写体でフィルムシミュレーションを試した。
FUJIFILM X-T1の第3回は少し遠出をして信州の山村にX-T1を持参、さまざまな被写体でフィルムシミュレーションを試した。
赴いた先は長野県下伊那郡平谷村。長野県下で最も人口の少ない村とされており(平成17年度3月末時点で589名)、村の総面積のうち96.7%が山林でしめられる山地の村だ。地理的に愛知県との結びつきが強く、夏は避暑を求める中京圏からの観光客でにぎわうが、春先は夜間の気温が1度前後まで下がることもあり人影はまばら。
人影が少ないうえに気候は曇天。芝桜にはまだ早いようで、路肩には散り始めたしだれ桜がこちらを出迎える。イメージが固まらないままだったので、とりあえず、フィルムシミュレーションブラケットで撮影を始めることにした。
フィルムシミュレーションブラケットはXシリーズに以前より搭載されている機能だが、T1では左肩のドライブモードからブラケット撮影(BKT)を選択することで手軽に撮影できる。フィルムシミュレーションブラケットでは3つを任意に設定可能で、スタンダードの「PROVIA」、メリハリのある鮮やかな「Velvia」、ソフトで自然な階調が特徴の「ASTIA」を始めとした10種類から選択できる。
上の3枚はいずれもF11まで絞って露出補正をプラス1。背景の曇天を飛ばし気味としたふんわりとした雰囲気にはASTAIAの色調がよく似合う。Velviaでは手前の緑は鮮やかになるが、鮮やかになりすぎてしまい、残り少なくなった桜の花びらの柔らかな桜色と木々の緑がかみ合わない。
次は路肩にうち捨てられていた廃バス。以前は住人の足になっていたのだろうが、現在は見る影もなく、中に入り込んで遊ぶ子どもの足跡も見えない。
こちらもF11まで絞り込んで撮影。フィルムシミュレーションの観点ではPROVIAとASTIAで甲乙付けがたい。ASTIAのほうがややソフトなので、古びたバスの質感を重視するなら、PROVIAが正解か。ブラケット撮影ではないが、X-T1に6つ用意されているファンクション(Fn)ボタンにフィルムシミュレーションを割り当てることもできるので、とっさに1枚だけをモノクロで撮るという使い方もできる。ただし、ドライブモードを「BKT」(ブラケット撮影)でフィルムシミュレーションブラケットの状態にしたままではFnからフィルムシミュレーションの機能を呼び出すことはできない。
曇天の春先ではビビッドな色調となるVelviaにマッチした被写体がなかなか見つからない。そんな矢先に川べりで鮮やかなコケを見つけた。Velviaでの描写では肉眼よりも鮮やかなのだが、力強さを感じさせるにはこれぐらい鮮やかでもよいと思える。
最後は曽祖父のもとへ遊びに来ていた子どもをPROVIAで。赤みのある肌色が子どもらしさを強調している。明暗のグラデーションもなめらかで、いかにも富士フイルムっぽい1枚となった。
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