トーマス・ノール氏の現実逃避から生まれたPhotoshopが25周年 “次”の新機能はディヘイズ:INSIDE PHOTOSHOP
アドビシステムズが、神宮前のUltraSuperNew Galleryで、Adobe Photoshopの25周年を記念した特別展示を実施している。入場無料で、Photoshopの歴史や世界観を表した展示が楽しめる。
アドビシステムズが5月22日から6月4日まで、フォトレタッチソフト「Adobe Photoshop」の発売から25周年を迎えたことを記念した企画展「INSIDE PHOTOSHOP」を開催している。会場はUltraSuperNew Gallery(東京都渋谷区神宮前1-1-3)で。入場は無料だ。展示の詳細はAdobe Photoshop日本公式ブログで確認できる。
INSIDE PHOTOSHOP展の会場には、歴代のPhotoshopのアイコンやツールが手に取れるパネルの形で用意されているほか、各バージョンで追加された新機能や、それとともに変化してきたツールバーを並べた年表などが展示されている。会場内がPhotoshopの作業スペースのようなデザインになっており、普段からPhotoshopを使っている人なら、自分がPhotoshopの世界に入り込んでしまったような、思わずニヤリとしてしまう光景が広がっている。
ちなみにTwitterアカウント @creativecloudjp をフォローし、INSIDE PHOTOSHOP会場でアイコンやツールバーと一緒に写真を撮り、ハッシュタグ「#CC新発見」「#Ps25」を付けて6月12日までにTwitterに投稿すると、抽選で25人にPhotoshop 25周年記念TシャツやAdobe PhotoshopREAL、Adobe Creative Cloudオリジナルグッズなど、限定Photoshopグッズが当たる。
Adobeフェローのトーマス・ノール氏が開発秘話を披露
イベント開催に先立つ5月21日、「デジタルフォト&デザインセミナー2015」に合わせて本社から来日したトーマス・ノール(Thomas Knoll)氏が、Photoshopの誕生秘話を披露した。
ノール氏は、現在はAdobeのフェローとして、Photoshopの開発に携わっている。もともと自分で開発したPhotoshopだが、Adobeの製品となってからも25年間、写真の加工にはいつもPhotoshopを使っているという(米国では自社製品を使っていることを“Eating my own dog food”と言うらしい)。
Photoshopは、ノール氏の現実逃避から生まれた。
もともとノール氏は、ミシガン大学でコンピュータービジョン(画像認識や画像処理)の博士課程在学中に、画像の輪郭を抽出するためのツールなどを作ったりしていた。そして博士研究の仕上げとして、論文を書く必要があるが、その論文執筆は「何より嫌いな作業で、書くことからしばらく逃避していた」とノール氏は笑う。逃避して何をしていたかというと、いろいろな画像処理のプログラムを書いていた。
ちょうどその頃、弟のジョン・ノール氏は、ILM(Industrial Light & Magic)でカメラオペレーターとして働いていた。しかし、彼は視覚効果の将来はCGにあると考え、自分でCGの勉強を始めていたそうだ。ジョン・ノール氏は、単純にある画像能の上に別の画像に出すのがなぜこんなに難しいのか、と悩んでいたという。
あるとき、実家に帰省したときに弟と話したノール氏は、弟の悩みを聞き、弟がレンダリングにだけ集中できるように、大学の研究のために作ったいろいろなプログラムを弟に渡した。その中には、画像の上に別の画像を表示するツールも含まれていた。
そうしたツール群を実際の業務にも活用するようになったジョン・ノール氏からは、いろいろなリクエストをもらったという。それを受けて、現実逃避中だったトーマス・ノール氏は、博士論文そっちのけで、どんどん機能を増やしたり改良したりして、1987年頃、それらのツールを1つのアプリケーションにまとめた。それがPhotoshopの初期バージョンだった。
1本のソフトにまとまりしばらくすると、ジョン・ノール氏は「これは売れる」と言いだす。そして、いろいろな人に出来上がったソフトの機能を披露するようになった。Photoshopを売り込もうと考えた2人の兄弟は、小さな会社を作った。トーマス・ノール氏がエンジニアリングを担当し、弟のジョン・ノール氏がマーケティングを担当して、さまざまな会社ででもをして回った。そして1989年にAdobeが興味を持ち、これを世に出したいといってくれたので契約を結んだのだという。
Adobe Photoshop 1.0は、1990年2月19日に発売された。
トーマス・ノール氏は「ジョンがいなかったら、おそらく論文の執筆作業に戻ったはずだが、結果的にはPhotoshopの開発に注力することになり、博士課程はドロップアウトした」と笑顔で話した。
現在はCamera Rawフィルターの開発に従事
現在トーマス・ノール氏は、PhotoshopのCamera Rawフィルターの開発に主に携わっている。そのきっかけとなったのは、2002年にデジタルカメラを購入し、写真を撮るのが好きになったこと。10台の頃から写真は好きで、父親にモノクロフィルムの現像や焼き付けなどまで教わっていたそうだが、デジタル一眼レフカメラを入手し、自分でRawファイルの現像をしたくなったことから、Camera Rawフィルターを作るようになったという。このようにPhotoshopの開発スタッフは、ノール氏を筆頭にみな写真好きが多いそうだ。
そんな話の中でノール氏は、次期バージョンのLightroomとCamera Rawフィルターに搭載予定の新機能「Dehaze」(ディヘイズ)を披露してくれた。日本語では「かすみを除去」という仮称が付けられたこの機能は、かすんでいる風景のコントラストを上げて見やすくしたり、あるいはかすみを増やして雲の中に閉ざされたような景色に仕上げたりできる。
関連キーワード
Photoshop | Adobe Systems(アドビシステムズ) | レタッチ | 写真 | Camera Raw | アニバーサリー | Adobe Creative Cloud
関連記事
- アドビ、月980円の“Adobe Creative Cloudフォトグラフィプラン”をアップデート――Lightroom機能強化
デジタルフォト用クラウドサービスの「Adobe Creative Cloudフォトグラフィプラン」がメジャーアップデートし、新しい「Lightroom CC」が提供された。パッケージ版の「Lightroom 6」も発売する。 - アドビ、Photoshop Elements 13とPremiere Elements 13を発売
アドビ システムズはアマチュア向けフォトレタッチソフトと、ビデオ編集ソフトの新版を発売する。 - アドビが「Creative Cloud」を刷新、「Lightroom mobile」はiPhone対応
アドビシステムズは月額制サービス「Creative Cloud」をアップデート、PhotoShopなど14のアプリが刷新された。クラウド連携のスケッチアプリや「定規」も。 - どこでも写真編集、Lightroomと同期 iPadアプリ「Lightroom Mobile」
アドビが「Lightroom 5」と連係するiPadアプリ「Lightroom Mobile」の提供を開始した。外出先からでもLightroom 5に保存した画像の編集が可能で、データはクラウド経由で同期される。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.