Kindle Fireの真の競争相手はNOOK Color

大手ニュースメディアはKindle Fire対Apple iPad論争を盛り上げようとしているが、実際のところそれはあまり重要ではない。業界人が話題にするのは、Kindle FireがBarnes & NobleのNOOK Colorにどのような影響を与えるかだ。

» 2011年10月22日 19時30分 公開
[Michael Kozlowski,Good e-Reader Blog]
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 先日サンフランシスコで開催されたe-Reader Conference 2011では1つの支配的な意見が存在した。大手ニュースメディアはKindle Fire対Apple iPad論争を盛り上げようとしているが、実際のところそれはあまり重要ではない。業界人が話題にするのは、Kindle FireがBarnes & NobleのNOOK Colorにどのような影響を与えるかだ。

 Barnes & NobleでNOOK部門の製品開発副社長を務めるダグ・クライン氏はKindle FireをNOOK Colorの最大のライバルとして見ており、Kindle Fireが同社の利益率に食い込んでくるかもしれない。

 Barnes & NobleはNOOKの売り上げで12億ドルを見込んでおり、小売チェーンの予想外の成功と見なされている。同社がこうした成功を収めている理由の一部は女性購買層によるものだ。クライン氏によると、NOOK Colorユーザーの70%は女性で、書籍、雑誌、NookKidsなどのコンテンツにアクセスするために利用しているという。249ドルというNOOK Colorの価格は、電子書籍だけでなくさまざまなメディアにフルカラーでアクセスできるデバイスを求めるほとんどのユーザーの手の届く価格レンジ内にある。

 クライン氏によると、NOOKはこれまでのAndroid製品で最も成功を収めており、販売範囲がそれを物語っているいう。NOOK ColorのAndroidエクスペリエンスはカスタムGUIとUIに組み込まれており、同社が今年初めにオープンした独自のアプリストアによってほかの電子書籍リーダーとの差別化を図っている。

 NOOK Colorの強みは雑誌、電子書籍、アプリ、NookStudy、NookKidsと大規模なコンテンツの配布システムを伴っていることだ。逆に、最大の弱みはデバイスとそのすべてのコンテンツが基本的に米国でしか販売されていないことである。デバイスを入手したければ、われわれのスポンサーであるShop e-Readersのような第三者の企業を経由する必要がある。

 AmazonのKindle Fireもフルカラータブレットであり、NOOK Colorよりもはるかに安い199ドルに値付けされている。Kindle FireもカスタムGUIを利用しており、その点でNOOK Colorに似ているわけだが、用途は固定され、ありふれたAndroidエクスペリエンスを提供するわけではない。

 11月に発売されるKindle Fireはこれまでで最も成功を収めたタブレットの1つになるべく準備を整えている。199ドルという値付けも、一般人の価格レンジ内にあるので売り上げを伸ばすだろう。Kindle FireはNOOK Colorと同じようにデザインされており、その点でデバイスは固定されたAndroidエクスペリエンスを提供し、Amazon製品とサービスと強力に連携している。Amazonは同社がKindle Fireのブートローダーを固定せず、顧客は固有のアプリケーションをロードできるとしている。

 Kindle FireはNOOK Colorがすでに提供している幅広い雑誌コンテンツを提供できないかもしれないが、Amazonは大手雑誌出版社の雑誌を定期購読あるいは単号ごとに提供できるよう交渉を進めている。Kindle Fireはより求めやすい価格で雑誌を提供しようとしているので、NOOK Colorと直接競合することになるだろう。

 Kindle Fireの大きな呼び水といえるのは、電子書籍、オーディオブック、クラウドベースのソリューションだ。Amazonは最良の電子書籍ストアの1つで、古典から現代のベストセラーまで幅広く取り扱っている。自己出版の領域でも中心的な存在となっており、ユーザーは自身の嗜好に合った著者を容易に見つけることができる。また、Amazonはaudible.comでオーディオブックを販売しており、運転中や犬の散歩をしたり、何かをしながらに本を読む(聴く)ことを好む人にとってはNOOK Color以上に魅力的な製品となるだろう。

 Kindle FireのSilk Webブラウザも非常に良くデザインされており、ひんぱんに訪問するWebサイトを自動的にキャッシュするので、ロードが非常に早い。これは非常に素晴らしく、Kindle FireがWi-Fiモデルのみで3Gあるいは4Gモデルを欠くことを考えると、オフラインで読むのに便利さを提供するかもしれない。

 Amazonの莫大な販売量を確実にする主な利点の1つはコンテンツが国際的に入手できることだ。同社はその全コンテンツライブラリーをカナダ、米国、欧州、オーストラリアなど多くの国々で販売している。これにより、書籍、雑誌、そして間もなくアプリもユーザーが国際的にダウンロードできるようになる。

 また、AmazonはKindle Fireの発表に合わせてさらにコンテンツを拡充しようとしている。同社はNetflixのような電子書籍購読サービスを提供すべく複数の出版社にアプローチしている。ただし、Penguinがある独占インタビューでAmazonが提供しようとしているサービスについて、「ほかのプラットフォームで販売されている書籍の価値を下げる」と語っていることからも分かるように、すんなりとはいかないかもしれない。

 よって、Kindle Fireは雑誌、書籍、オーディオブック、アプリ、教科書レンタル、ビデオ・オン・デマンド、Amazon Primeなどを始めとする多くのサービスを提供するだろう。同社はそのデバイスで間違いなくNOOK Colorよりも幅広いメディアエクスペリエンスを提供する。

 クライン氏は米国で2番目に売り上げが多い電子書籍リーダー製品である同社の市場シェアにKindle Fireが食い込んでくることについて心配はしていないと述べた。クライン氏はKindle Fireをマルチメディアデバイスと見なしており、NOOK Colorを純粋な読書エクスペリエンスを提供する製品だとしている。NOOK Colorの売り上げが好調な理由は「Barnes & Nobleは発見のエンジンで、顧客は新たな書籍、雑誌、ガジェットを発見することができる」からだ。

 今シーズンの液晶デバイスの最初の戦いは確実にKindle FireとBarnes & NobleのNOOK Colorの間で起こるだろう。ここにきて、Barnes & Nobleはその最大のライバルから真剣勝負を挑まれることになる。Amazonは米国の電子書籍市場全体の70%を支配しており、11月のKindle Fireタブレットの発売で力強い進歩を遂げるかもしれない。

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