EU、電子書籍のエージェンシープライシングモデルを解体開始

電子書籍のエージェンシーモデルについて劇的な動きが起こっている。市場にとっては福音か、混乱か。

» 2012年09月26日 11時30分 公開
[Michael Kozlowski,Good e-Reader Blog]
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 欧州委員会は、Appleと大手6大出版社が数年前に導入したエージェンシーモデルの解体を開始した。EUはHarperCollins、Simon & Schuster、Macmillan、Hachette Livre、Appleが電子書籍の価格を上昇させ、あるいは欧州全体でより低価格の電子書籍が出てくるのを阻止するのに『共同して当たった』ことを見出した。出版社は契約を解除し、エージェンシープライシングモデルを廃して電子書籍を提供する新たな契約を結んでいる。

 出版社とAppleは今後2年間、小売企業が電子書籍の値引きを『制限したり、限定したり、妨害したり』しないことに同意した。最恵国待遇条項を含む電子書籍の契約に5年間は同意しないことにも同意した。これにより、契約が有効であれば、欧州で電子書籍小売各社は再び電子書籍の値引きを開始し、顧客は国境に関係なく安価で電子書籍を購入することができる。

 Penguinは欧州と米国での和解に公然と反対する唯一の企業だ。EUはPenguinが和解に応じなければ、Appleなどの企業は同社と関係を断ち切らなければならないと規定している。

 HarperCollinsは『解決策を見出すべくEUと作業中』だという。Macmillanの親会社、Holtzbrinckは「当初から、Holtzbrinckグループは電子書籍ビジネス関連の談合について、すべての罪状を強く否定してきました。ただし、和解を進めることが欧州での当社ビジネスにとって最善の利益に叶うと信じており、この一連の草案に同意し、市場に信を問う準備は整っています」という。Hachette Livreは「当社は反トラスト法に抵触しておらず、法律上の瑕疵がないことを確信しています」というが、加えて「欧州委員会よりも訴訟によるコスト、時間、混乱による当社ビジネスと電子書籍市場一般への破壊的影響があまりにも大きすぎるのではないか」という。

 この画期的訴訟がEUと米国で表面上は終結したことで、出版社は電子書籍の希望小売価格を提示し、企業は市場に適合すると見た価格まで割引することができる。Amazon、Sony、Barnes & Nobleと英国、米国の企業各社の電子書籍価格は劇的な下げを見せ始めている。最安価格の電子書籍を求め、それぞれの本につき数ドルを節約できる顧客にとっては有益だ。米国では間もなく各企業がエージェンシープライシングに基づき過去に購入された本へのリファンドを受け付けるが、EUで同様の措置が適用されるかは不明だ。

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