―― ヒットした理由について教えてください
担当 ファーストアルバム「メカクシティデイズ」と同時発売できたことは大きいと思います。発売の2週間後にはコミックの連載もスタートしました。コミックと小説の内容は基本的に同じですが、コミックならではの展開もあります。アニメ化も決定し、カゲロウデイズの世界への入り口はまだまだ広がると思います。
―― はじめからメディアミックスで展開する予定だったのでしょうか?
担当 いいえ。小説、CD、コミックの話が同時に別のところから、じんさんに声がかかりました。私に関しては、普段からニコニコ動画を見ている中で、冬くらいに「カゲロウデイズ」が伸びているのを見て「これは世界観が面白い!」と思い、じんさんのTwitterをフォローしました。その後、DMでやり取りをしてから直接お会いして、小説化の話が決まりました。
動画の人気を軸に、アルバムと小説とコミックという話題を提供でき、プロモーションも協力して行えたことで、相乗効果が大きかったです。
―― 作品の世界観に魅力を感じたということですが、どんな特長があるのでしょう?
担当 まず、初音ミクなどのボカロキャラが出てこないことが最大の特徴だと思います。それによって、じんさん本人のクリエイティブ、アーティストとしての世界観が純粋に表現されていると感じました。
それと、複数の楽曲で世界観がつながっていることにも斬新さを感じました。こうした作品に対して、“ファンの皆さんがいろいろな楽しみ方をしている”(※)というのが、特徴ではないかなと思っています。
―― 「悪ノ娘」シリーズも4冊で累計80万部を突破、「千本桜」のノベル化も発表されるなど、ボカロ小説がジャンル化していると思うのですが、今後もボカロ小説は増えていくのでしょうか?
担当 小説はもちろん、漫画や想像もできなかった商品が今後も色々なクリエイターから出てくると思います。僕自身も、楽しんでもらえる作品作りにこれからも携わっていけれるよう頑張ります。
やはり、音楽の世界を飛び越えた楽しみ方を欲しているファンの皆さんは多いと思うんです。ニコニコ動画には才能あるクリエイターさんがたくさん集まっているので、いろいろな形で作品や商品が出てくるのは、いちニコニコユーザーでもある僕にとっては嬉しいですね。
ただ、ネット関連の作品を商品化する上では、しっかりと世界観を理解することがとにかく大事だと思っています。ネット発のクリエイターさんは、他の小説家やミュージシャンと比べてもユーザーさんとの距離が近いですよね。同人即売会にいけば会える人も多いし、Twitterもやっている方が多い。だからこそ、動画の世界観を皆さんがどう楽しんでいるのかをしっかりと理解して、そこからズレてはいけないと思っています。
―― 担当編集としては、どのようにユーザーの要望を見ているのでしょうか?
担当 ユーザーさんのことを一番分かっているのはクリエイターさんだと思うので、まずクリエイターさんの意見を最大限尊重しています。もちろん、ネットで「カゲロウデイズ 小説」などでサーチして反応を見たり、公式Twitterへの要望や質問を読んで参考にするといったこともしています。
―― ボカロ小説が生まれた背景として、ボカロカルチャー全体の変化について何か感じることはありますか?
担当 個人的な感想ですが、初音ミクが出たばかりの時は、ミクのイラストがないとあまり反応がよくない空気があったかと思います。現在はより多様化して、楽曲単位、あるいは「このP(※)が好き」といったアーティスト単位でのヒット傾向も生まれています。アーティストの内面への関心も高まっていると思います。
―― ボカロ小説を含むボカロカルチャーは今後も広がっていくと思いますか?
担当 ニコニコ動画やその他のネットサービスを見ていると、どんどんクリエイターさんが集まり、成長していく場になっているなと感じます。今後もより面白い広がりがあると思っていますし、僕自身もクリエイターさんとの出会いを求めてネットを徘徊しています(笑)
―― 小説の今後の展開は?
担当 続編を出していければと考えています。小説には楽曲の謎を解く側面もありますが、魅力的な登場人物が活躍するキャラクター小説でもあるんです。1巻は友情に関する物語を扱っていますが、2巻では恋愛が絡んできて、泣けるシーンもあったりしまして……。また、今後のストーリーが大きく進むための要素も多いので、その辺りも楽しんでもらえると思います。
続編でも、青春エンタテインメント小説として、いろいろな切り口でキャラクターが活躍していくと思います。ぜひ、楽しみにしていただいて、応援してもらえればうれしいです。
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