本大好き司書メイドの好感度を上げ、年に一度のデート権を得るべく繰り広げられるメイドたちのラブアタック。連載8回目は私設図書館シャッツキステの司書・ミソノの独り語です。
この街の片隅に、メイドが営む私設図書館がありました。そこには書架を守る司書がいます。
その図書館の書架の一角。いつもはミソノをめぐる争いが繰り広げられ、賑やかですが、どうやら今日は誰も書架には来ないようです。
ぽつぽつ雨音が聞こえる午後。私設図書館の片隅で、今日は写真の本を開きます。わたくしが今、開いているのは『さがりばな』。大きな版ですが、ページは30ページほど。画面をたっぷり使った写真に、短い文章が添えられた、横塚眞己人さんによる子ども向けの写真絵本です。
ぱっとページを開けば、目に飛び込んで来るのは、緑の木々の間を流れる川にたくさんの白い花がふわふわと浮いている写真!
南の島の、もう海にほど近いような、大きな河口です。両岸もその奥も、そして木々が写り込んだ水面も深い緑色をしています。そこをたくさんのお花が流れていきます。
見るからにゆったりとした流れに浮かぶ、ぽわぽわとした淡い色のお花! ファンタジー世界にしかあり得ないような幻想的な風景……。ここをエルフっ子がボートに乗ってゆっくりと進んできたら……なんてお似合いなんでしょう! ああ、その子は褐色肌のエルフっ子かしら? ボートに同乗者はいるのかしら?
……どこまでも空想の世界に羽ばたけそうな写真ですが、こんな美しい光景、実在しているんですね。
「さがりばな」とは6月下旬から7月中旬に南の島辺りの川岸の木に咲く花だそうです。ネムの花のような、大きな綿毛のような……ごくごく淡いピンクのこの花が開花しているのはたった一晩だけ。
夕方からゆっくりと開きはじめた花は、夜に満開になり、夜明けごろそっと枝から落ちるのだとか。
文章は、さがりばなの生態を知らせながらも、詩的な短文でつづられています。星空の下で咲くこのお花は甘く香る、とあります。ページをめくると、夜に咲く花の匂い、川岸に寄せる波音、そして南の島の夜明けの清涼さまで伝わって来るような気持ちになりました。
本への愛情、オススメの仕方が上手だとミソノの好感度アップ! それぞれミソノの心を占めている割合は……?
エリス:12% レイラ:14% サヤ:12%
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