BOOKSHOP LOVER=本屋好きがお届けする詳細な本屋レポ。本屋が好きならここに行け! 今回は下北沢の古本屋「July Books」を紹介する。
そのことは知っていたが、どういう店があるのかを具体的に知る術がなかった。そこに現れたのが以下のまとめである。これは僕が参加していたB&Bのゼミで生徒が提出した課題だが、このまとめが実に役立つ。
B&Bはもちろん、「ダーウィンルーム」や「気流舎」など知らなかったけれど楽しそうな本屋がたくさんあった。今回、行った本屋はその中の1つ。そんな本屋の中から、今回の本屋探訪記は古本屋「July Books」をお届けしよう(2012年11月25日の記録だ)。
下北沢駅の北口を出て北側にまっすぐ進んだ突き当たり。そこが下北沢一番街だ。右手に踏み切り、左手が上り坂になっている。この上り坂を15分ほど歩こう。レトロ雑貨屋やおしゃれなカフェ、昔ながらの定食屋、シーシャバー、真夜中の駄菓子屋など種々雑多な下北沢らしさのあふれる街並みを楽しみながら歩いていると左手に見えるものがある。「July Books/七月書房」だ。
近代的なコンクリート打ちっぱなしのビルの1階が店舗だ。外にセール棚があり、何と地上で読む機内誌『ペイパースカイ』が。この時点でにわかに期待感が高まってくる。ほかには『ヤクザと日本』『博士の異常な愛情』など。ほかの古本屋のセール棚と同じようにジャンル分けはない。
店に入るとミッキーマウスのフィギュアと絵本が出迎えてくれる。「お邪魔します」と小声でミッキーに声をかけ、さらに中に入ると木製の什器を中心とした素敵空間が広がっていた。
本屋というよりは雑貨屋のような内装に流れているのは古いジャズ。「マイ・フェイバリットシングス」(「そうだ、京都へ行こう」のあれだ)なんてかけているところが愛らしい。奥のレジにいる女性が店主だろうか。「彼女の好きなものが置いてあるのだろう」と妄想を膨らませてしまう。
棚を見る前に店内のレイアウトをざっと紹介しておこう。店舗は奥に広い長方形で、左辺には正方形ボックスを積み上げた棚、正面奥はレジと小さい棚、右辺には横長の棚、入り口がある辺と右辺の角を挟んで本棚が2本。そして店舗中央にはテーブルが2つとイス1脚、本棚だ。
もちろんすべてのスペースに本があるのだが、レジに近い方に雑貨が、入り口に近い方には本が多かったように思う。
では、店舗左辺から本を見ていこう。上述したように正方形のボックス型の棚がある。その数24個。通常の本棚よりも高く、それを生かした大判書籍やその面陳を多用している。よく見ると英語でジャンル表記が貼られているが、ジャンルごとに幾つか挙げていこう。上段から1段ずつ奥に向かっていくことにする。
左辺を奥に進んでいくと突き当たりがレジとなる。写真とブログ掲載の許可のため、店主とおぼしき素敵な女性に話しかけると興味を持ってもらえた。話していると西荻窪のbeco cafeで開催された「いか文庫トークショー」に参加していたことが分かる。いか文庫は僕も気になって参加していたのだ。これは思わぬ偶然。ご縁を感じてうれしくなってしまう。取材にも力が入るというものだ。
レジ横にも棚があり、フライヤーや雑貨、洋書の絵本が並んでいた。レジ周りに商品を置くほかの店舗と同様、あまり量も種類もないが、紙の箱やマスキングテープなど、ついで買いができる商品ばかりだ。素敵店主の商魂を垣間見た気がした。
レジすぐ横の右辺には腰くらいの高さのチェストがある。あるのは洋書の絵本。さすが女子の古本屋である。
柱を挟んで入り口の方に行くと、胸くらいの高さのチェストに少女マンガ棚である。さすがである。さすが女子(ry マンガに限らず少女趣味なものが置かれている。
そうやって入り口に戻っていくと角に背の高い本棚が2本ある。ここは文学棚。そう、ここまで文学の棚がなかったのだ。July Booksの客層が文学少年少女ではなくオシャレ女子なことが如実に表れている。とはいえ文学棚の品ぞろえも素晴らしい。憎たらしいほどである。
この棚も左辺のようにジャンル分けのシールが貼ってある。左辺側の上段→下段、入り口側の上段→下段と気になったものを挙げてみよう。
■左辺側
■入口側
どうだろう。なかなかの品ぞろえではないか。特にガルシア・マルケス全集が何冊も置いてあったのが素晴らしい。
最後に真ん中のテーブルを見ていこう。目玉は最後に持ってくるのが礼儀というものだ。
とはいえ、実は入り口から真っ先に見えるのはテーブルではない。テーブルの前に鎮座するスヌーピー棚なのだ。腰くらいの高さで横50センチほどの棚丸ごとひとつがスヌーピーである。女子まっしぐらである。
気を取り直して手前のテーブルには『美術手帖』の奈良美智特集や『ZEROより愛をこめて』『FAVES』(communeギャラリーの冊子でPOP解説によるとJuly Booksが記載されているらしい)などが平で置かれている。ほかにも平ではないが『世界の本屋さん2』が定価の70%程度の値段で売られていた。魅力的なテーブルだ。
奥のテーブルは横に置いてある長イスに雑貨が置いてあり、テーブル上には「ドロールマルス」や「北の模様帖」ブランドの雑貨、マスキングテープ、さらに文庫でマドレーヌのクリスマスや絵本の『クリスマスの思い出』『ペネロペ』『ゆきあそびをする』『急行「北極号」』、詩集で谷川俊太郎などが置かれていた。
これで棚や商品についてはすべて見終わった。僕の中にそこはかとない女性性が芽生えてしまいそうな素晴らしい品ぞろえである。
とはいえ、僕にはいかんせん少女関係の棚は興味はあるがよく分からない。腐っても僕は男子なのだ。どちらかというと左辺のデザインや写真、さらに角の文学に好きなものがたくさんある。だから、とりあえず世の中の素敵女子たちにはこう言っておこう。
「女子たちよ、来店し、そして、悶絶しろ!」
July Booksはそんな悶絶女子が生まれる素晴らしい古本屋なのである。
本屋開業を目指す本屋好きサラリーマン。ブログ「BOOKSHOP LOVER」を中心に活動。同名のネット古本屋も営む。このほか、電子雑誌「トルタル」や本と本屋とつながるWebラジオ「最初のブックエンド」、NPO団体「ツブヤ大学」に本に関するイベントの企画班として参加。「Cannes Lions 2013 Book Project」ではプロデューサーを務める。理想の本屋さんを開くべく本の世界で縦横無尽に活動中。好きな作家はクラフト・エヴィング商会。一番好きな本屋は秘密。
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