日本の貴重なデジタル化資料を公開している国立国会図書館デジタルコレクション(デジコレ)。本連載では、デジコレで見ることができるデジタル化資料の中からコレは! というものを探し出し、紹介していきます。
国立国会図書館が所蔵するデジタル化資料を取り扱っている「国立国会図書館デジタルコレクション(以下、デジコレ)」というWebサイトをご存じでしょうか。図書、雑誌、博士論文、古典籍など約235万点のデジタル化資料をインターネットで公開しており、私たちは無料で閲覧することができます。
デジタル化資料は自由に使えるの?
閲覧はもちろん自由。ただしデジタル化資料を転載する場合には、たとえ100年以上昔のデジタル化資料であっても転載依頼が必要でした。Webサイト内の転載依頼フォームから、転載先の媒体や転載予定時期など幾つかの項目を書いた上で、返信が来るまで待つ必要がありましたし、場合によっては転載不可なんていわれることも……。
えー、いちいちそんな手続きするのめんどくさい
きっとそういう声が多かったのでしょう。5月1日、国立国会図書館から発表があり、著作権保護期間が満了となっているデジタル化資料に関しては、商用でも無許諾で使用することが可能になりました。これにより、画像が国立国会図書館Webサイトからの転載だということを明示さえすれば、手軽に転載できるようになったわけです。商用利用もできるということで、新たなサービスや商品が生まれるきっかけにもなるかもしれません。
だったら使わない手はないんじゃない?
その通りです。使わないのは非常にもったいない。
一時期、「公序良俗を乱す」といった理由で発禁となった『エロエロ草紙』の電子書籍配信が話題になりました。最近ですと小松左京さんが学生時代に描いたという漫画『怪人スケレトン博士』が発見されたというニュースもありました。デジコレには、まだまだ面白いものが眠っている可能性が大いにあります。そこで、本連載ではデジコレに潜むまだ見ぬお宝資料を探しつつ、その成果を皆さんにお届けしようと思います。もちろんお宝を発見した場合、手柄は私のものです。
じゃあ早く何か探しなさいよ
オレンジ文字の人は一体だれなんでしょうか。ま、それは置いといてデジコレに向かうとしましょう。
記念すべき第1回目のターゲットは、とある本です。皆さんは「赤本」と呼ばれる本をご存じでしょうか。
多くの人は大学受験の参考書を思い浮かべるかもしれませんが、ここでいう赤本は江戸時代に作られた主に子ども向けの絵本のことを指します。『猿蟹合戦』や『桃太郎』『舌切り雀』など、私たちにもなじみのある物語が描かれていて、中には、見返り美人で知られる菱川師宣などの有名な絵師が手掛けたものもあるんだとか。お宝の匂いがします、さっそく探しに行きましょう。
古典籍を選択して「赤本」と検索してみます。
9件ヒットしました。やはりここは昔話の王道「桃太郎」にしましょう。ということで『桃太郎宝蔵入』を開いてみます。
『桃太郎宝蔵入』(1833〜1834年刊行)は夷福山人さんという方が書かれた桃太郎の物語のようです。絵はなんと「東海道五十三次」で知られる歌川広重。おばあさんが桃を拾うところから始まっています。私たちがよく知る桃太郎とストーリーは同じのようですね。
いかがだったでしょうか。桃太郎の裏の顔が完全にあらわになっていましたね。個人的にはそれだけでもかなりの収穫でした。
しかし、やはり気になるのは冒頭に出てきたあの夫婦。調べてみたところ驚愕の事実が明らかになりました。
実は桃太郎の話には大きく分けて、「回春譚」と「果生譚」の2種類の物語があるようなのです。明治時代以降は果生譚、つまり桃太郎が果実(桃)から生まれるという私たちがよく知る物語が主流です。しかし、江戸時代の桃太郎は回春譚、桃を食べたおじいさんとおばあさんが若返り、桃太郎を生むという物語が主流だったようなのです。『桃太郎宝蔵入』は江戸時代の作品なので、回春譚と考えるのが自然。つまり、あの息子夫婦(仮)とかいってた二人こそ、若返ったおじいさんとおばあさんの姿なのです。回春譚から果生譚に変わったのは、やはり大人の事情なんでしょうか。推測するしかありませんが。
今回取り上げてはいませんが、赤本のほかにも歴史物語や恋愛を描いた「黒本」、色恋や滑稽な話を描いた「青本」、風俗や世相を描きその多くが発禁となった「黄表紙」などもデジコレに掲載されています。気になった方はどんどん活用してみてください。
次回も貴重なお宝を求めて、デジコレの探索を続けていきます。乞うご期待!
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