日本の貴重なデジタル化資料を公開している国立国会図書館デジタルコレクション(デジコレ)。本連載では、デジコレで見ることができるデジタル化資料の中からコレは! というものを探し出し、紹介していきます。
今回お届けするのはこちら!
これは一体……?
この巻物は、770年に作られた、年代の確定している最古の印刷物です。印刷方法はまだ判明しておらず、木版印刷か銅版印刷ではないかと言われています。
何が書かれているわけ?
ここに書かれているのは、中国の弥陀山という人物が漢訳した「無垢浄光大陀羅尼経」というお経から、「陀羅尼(ダーラニー)」を抜きだしたものです。
陀羅尼というのは、仏教で用いられる呪文のようなもので「心にとどめて忘れない」というような意味があります。陀羅尼自体は、サンスクリット語で書かれたものを漢字で音写(語音を他の言語の文字で表すこと)したものなので、見ても何が何だかといった感じですが、それにも理由があるんです。陀羅尼は、読むことで無想の境地に至ることが目的。意味が分かる言葉だと読む間に雑念が混じる可能性があるため、意味の通らない言葉に置き換えたというわけです。
印刷され、現存している陀羅尼は「根本」「自心印」「相輪」「六度」の4種類(六度はデジコレには登録されていない)。経文にはこのほかに「修造」「大功徳聚」といった陀羅尼がありますが、いずれもこの時に印刷されたものとしては発見されていません。もともと作られていないのか、何か意図があって作られなかったのかは分かっていないようです。
大きさは縦5センチ、横15〜50センチほど(根本>自心印>相輪>六度の順に長い)で、「百万塔」と呼ばれる小塔に入れられ、十大寺(法隆寺、興福寺、東大寺などの10の官寺)に納められたといいます。
そもそも何でそんなことしたの?
当時の天皇である称徳天皇が、764年に起きた「藤原仲麻呂の乱」を平定した後、乱後の安寧を願って行ったことなのだそうです。しかも、その際に作った小塔の数は100万!! だから百万塔というんでしょうね。
ひゃ、100万!?
10万基ずつ各寺に納められたといいますが、そのほとんどは焼失してしまい、現存するものは法隆寺の4万数千基となっています(多くは博物館や個人が所蔵)。1200年以上も前のものがそれだけの数残っているなんて驚きですよね。
今回は今までで一番お宝の匂いがしたわね。次回も楽しみにしてるわ!
(少しぐらい手伝ってくれても……)それでは、また新たなお宝を求めて探索してまいります。次回もよろしくお願いします!
(出典=国立国会図書館)
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