EPUBの泣き所、見開き表示をAppleの拡張仕様で補完した「JAZZ JAPAN」
eBookProは、Apple独自の拡張仕様を活用しEPUBが苦手とする見開き表示をサポートした「JAZZ JAPAN」を制作した。EPUBに注目している業界関係者は注目したい。
eBookProは3月7日、Apple独自の見開き表示に対応したEPUB拡張仕様を活用し、紙の雑誌と同様な見開きレイアウトを再現した電子雑誌「JAZZ JAPAN」の提供を開始した。
日本語の組版仕様も盛り込まれる予定のEPUB 3.0の最終仕様が5月にも登場するといわれる中、この国際的なフォーマットに対する注目が高まっている。
文字の大きさを変更すると、それに合わせてページ構成も変化する「リフロー」を原則とするEPUBフォーマットは、基本的にページの概念がない。このため、制作側がレイアウトを厳密にコントロールできない。活字中心のコンテンツであればともかく、写真などを多用する雑誌は、このフォーマットで配布するには向いていない。
しかし、Appleは自社が提供している電子書籍リーダーアプリ「iBooks」で、レイアウトを固定化することで見開きレイアウトも表示可能となる独自のEPUB拡張仕様をサポート。この拡張仕様については例えばこちらのページが詳しいが、これを使って記述することで、現状ではiBook上のみとはいえEPUBでも見開きレイアウトを実現している。
eBookProはこの拡張仕様を使い、リフロー型のEPUBで制作した既刊の電子雑誌「JAZZ JAPAN Vol2」(2010年9月発行)を固定レイアウトで再制作した。同様の取り組みに興味を覚える制作者には実践的なサンプルの宝庫ともいえるこの電子雑誌は、最新刊の「JAZZ JAPAN Vol7」電子版(315円)を購入したユーザーの特典として提供される。
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