扶桑社のiPadアプリに放送波を使った電子書籍配信の可能性を垣間見る
扶桑社は、iPad向けの電子書籍アプリ「IKEAで実現! わたし流キッチン」の配信を開始した。放送波の利用を視野に入れた「.CAST」フォーマットを活用した事例としても注目される。
扶桑社は、2011年1月に発売したムック「IKEAで実現! わたし流キッチン」のデジタル特別編集版をiPad向けアプリとしてAppStoreで配信を開始した。価格は700円。
IKEAのキッチンシステムや雑貨を使った実例を、使用した商品や総費用とともに紹介した同ムックは、電子書籍版が「MAGASTORE」「BOOKGATE」で配信されていたが、誌面レイアウトを維持した電子書籍版と比べ、今回配信開始したデジタル特別編集版は「誌面モード」「オーバーレイモード」「スライドショーモード」といった表示モードを用意し、レイアウトの可能性を追求したものとなっている。
放送波で電子書籍を配信する時代が?
注目したいのは、デジタル特別編集版の制作を手掛けたネクストウェーブ。同社は2010年6月、コンテナフォーマット「.CAST」(仮称)を策定している。.CASTはデジタル放送波を活用して新聞/雑誌などを配信するプロジェクト「AMIOフォーラム」が実施した実証実験の成果を継承したもので、分かりやすく言えば、デジタル放送波を電子書籍などのコンテンツ配信に用いようとするものだ。
.CASTの特徴として、テキストや動画、写真、音声といった素材データと、レイアウトなどの属性情報を分けて配信し、それを受信端末側で再構成することで、受信コンテンツの表現形態を受信端末側で柔軟に変更できることが挙げられる。今回のiPadアプリで「レイアウトの可能性を追求」とあるのもこうした特徴に起因するものだ。制作には、.CASTをベースとするネクストウェーブの「mooper」が用いられており、今後、レイアウトなどが最適化されたiPhone版やAndroid版も当然視野に入っていると思われる。
放送波の利用を視野に入れた.CASTは日本雑誌協会などとも協調し、実用版の策定が進められているところで、mooperについても今後商用化が予想される。
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