ヤフー、電子書籍に本格参入 「Yahoo!ブックストア」を今冬にもオープン
ヤフーは、電子書籍配信サービス「Yahoo!ブックストア」を今冬にも開始する。国内最大手ポータルサイトの参入により、国内電子書籍市場の活性化が期待される。
ヤフーは10月7日、「CEATEC JAPAN 2011」の会場で「Yahoo! JAPAN Day」を開催した。スマートフォンを中心とした新デバイスが数多く登場する中、Yahoo! JAPANがどのように向き合う考えなのかを紹介するこの場で、電子書籍配信サービス「Yahoo!ブックストア」を今冬にも開始することが明らかにされた。国内最大手ポータルサイトの参入により、国内電子書籍市場の活性化が期待される。
すでにさまざまなプレイヤーが電子書籍ストアなどを立ち上げているが、ヤフーもいよいよその輪に加わることになる。今後の電子書籍閲覧環境として有望視されるスマートフォンやタブレットの市場規模がある規模にまで拡大するのを見計らい、タイミング良く参入を果たしたい考えだ。
ヤフーの電子書籍ビジネスとしては、漫画を中心に取り扱ってきた「Yahoo!コミック」がすでに存在するが、これをリニューアルする形で一般書籍なども取り扱う総合電子書籍ストアへと移行する。ラインアップはほかの大手電子書籍ストアとほぼ同等の3万冊超での開始を目指す。同社はYahoo!コミックの累積利用者数を約300万人としており、これらのユーザーがYahoo!ブックストアの潜在ユーザーとなる。
もちろん、電子書籍ビジネス単体では採算性が不安視されるのは、これまで多く登場した電子書籍ストアなどを見ても明らかだ。そのため、「Yahoo!ショッピング」「Yahoo!オークション」など自社で提供するサービスとのシナジーを高めていくことで全体のビジネスを拡大したい考えだ。
EPUBを全面採用、集英社が電子書籍業界で注目の存在に?
Yahoo!ブックストアで志向するのは、オープン性やソーシャル連携。PCだけでなくiOS、Androidなどにも対応するほか、フォーマットにはEPUBを全面的に採用する。
ヤフーは集英社とともに、Yahoo!コミックでのEPUB配信に早くから取り組んできた。講談社が.bookを全面的に採用しているように、集英社はEPUBを推していく考えを持っており、東日本大震災で発生した配達遅延の措置として「少年ジャンプ」をYahoo!コミックで無料配信した際も内部的なファイルフォーマットはEPUBが用いられていた。
EPUB 3は、10月11日にFinal Recommendation版として委員会で正式に承認されたばかり。これから利用が進んでいくといった状況にあるが、ヤフーはこれまでの実績などから得られたノウハウも活用し、自らがEPUBを率先して利活用することで、国内のEPUB利活用を強力にサポートしていく考えだ。国際標準のフォーマットを採用したことで、海外展開などの面でも有利に働くことになるだろう。
Yahoo!ボックスが書庫に?
サービスのマイルストーンとしては書籍表現の追求とサービス連携の2軸を計画。前者は、EPUB 3.0で可能になった縦書きやルビなどの表現を、商業コンテンツとして課金に見合う品質で提供していくために出版社と協議しながら進めていくというもの。
後者のサービス連携にはソーシャル連携なども含まれるが、2012年4月をめどに対応を予定する「クラウド書庫」が特に注目される。これは、オンラインストレージとして「Yahoo!ボックス」との連携が図られる予定。Yahoo!ボックスは、「Yahoo!フォト」と「Yahoo!ブリーフケース」を統合したオンラインストレージサービス。Yahoo! JAPAN IDを持ってれば5Gバイトが無料で、有料のYahoo!プレミアム会員やYahoo! BB会員だと50Gバイトが利用できる。このYahoo!ボックスに購入した電子書籍データを置き、どの端末からでもアクセスできるようにする構想だ。
検索や広告などヤフーが強みを持つ技術も融合させることで、電子書籍のビジネスモデルに広告モデルなども選択可能とし、マネタイズの多様性も提供する。
全体的には、GoogleやAmazon、Appleなどがそうしているように、プラットフォームとしての立ち位置から、単なる書籍の販売だけにとどまらず、ポータルの強みを生かしたい考えで、Yahoo!プレミアム会員向けの特典やポイントサービスなど、Yahoo! JAPANで提供されるほかのサービスと組み合わせることで、総合的な満足感をユーザーに与えることになるだろう。ブランドの認知度と、そのユーザー数などを考えれば、短期間で国内屈指の電子書籍ストアに成長していく可能性は高い。「ヤフーのサービスなら」と利用を開始するユーザーも少なくないだろう。サービスインが待たれる。
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