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Random Houseが図書館向けに電子書籍価格を初提示、電子書籍「デリバティブ化」の予兆か
電子書籍ビジネスの本質が“閲覧権の発行と取引”に過ぎないなら、金融デリバティブと似た価格モデルの導入も可能なのかもしれない。
米国の図書館関係者向け情報サイト「The Digital Shift」によると、独Bertelsmannグループの大手出版社である米Random Houseが、図書館向け電子書籍プラットフォーム最大手の米OverDriveを介し、電子書籍の新しい価格モデルを採用した模様。
記事によると、これは図書館専用の電子書籍価格で、貸し出し回数を無制限(ただし1人ずつしか閲覧できない)にする代わりに、購入版価格の2〜3倍とするという内容。さらにRandom Houseは図書館側に閲覧ログデータの提供も要求する。ただ、その一方でRandom House側は「まだ試行錯誤の段階である」「読者需要がまだよく分からない」とコメントしている。
このニュースで注目すべきは、大手出版社がプラットフォーム業者を飛び越えて図書館側と需要ベースで価格交渉に応じる可能性を臭わせている点。電子書籍ビジネスの本質が実は“閲覧権の発行と取引”に過ぎないことを認識し、金融デリバティブと似たような価格モデル構築の必要性を感じ始めていることをうかがわせる内容だ。
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