どきどきする恋も美味しいごはんも、みんないっしょに召し上がれ――『本日、あかね日和』1巻レビュー
明治初期を舞台に食と恋をめぐって繰り広げられる物語『本日、あかね日和』1巻を紹介します。
春はあけぼの 時は明治
小さな料亭のもとに わたしは生まれました
突然ですが、皆さんは、洋食と和食どちらが好きですか? お刺身や天ぷらなどの割烹料理、慣れ親しんだ家庭の味、お味噌汁や煮物に代表されるような和食? それとも、サクッとあがったコロッケや、味のしみ込んだロールキャベツ、ふわっとしたオムライスのようなレストランで食べる洋食?
多くの人は、きっとそんなの選べない、どちらも違ってどちらも良い。選ぶぐらいならどちらも食べたい、なんて思うのではないでしょうか。
美味しいごはんは時代を問わず、常にわたしたちのおなかと心を満たしてくれるもの。今回ご紹介する、桜庭 ゆいさん作、『本日、あかね日和』(ポラリスCOMICS)は、そんな美味しいごはんが数多く登場する、食と恋をめぐるお話です。
明治初期、文明開化の声とともに、日本にやってきたさまざまな西洋の文化。建物や衣服が洋式化していき、西洋の食べ物も流通してきたこのころ。町のみんなに愛される小さな和食料亭、かすが亭のもとに生まれた、ひとりの少女がいました。
彼女の名は、春日 あかね(かすが あかね)。かすが亭の看板娘としてお客の間からも人気の高いあかねには、2年前から許嫁がいます。
あたしには 幼少の頃をともに過ごした幼なじみがいて
彼の名を 芳賀 秋次(はが しゅうじ)といった
あかねの父である、おやっさんみたいに魂のこもった料理を作る立派な料理人になりたいといっていた、秋ちゃんこと秋次。彼は2年前、語学留学のために海外へ旅立ち、
俺 立派な男になって帰ってくるな
そして その日がきたら 俺と結婚しよう あかね
あかねに餞別としてリボンと一緒に、プロポーズの言葉を贈ったのでした。それから2年、店の手伝いをしながら日々元気に明るく過ごしてきたあかねの周りには、秋次とは違ったタイプの男の子がいるようになります。
この乱暴な男 神谷 夏彦(かみや なつひこ)は
2年前からウチで雇われ働いている
口は悪いし乱暴だしお客さんへの愛想も悪い けど
不思議と仕事の手際はよく なんでもそつなくこなし
頑固なお父ちゃんもお気に入りのようだ
店の中では口げんかの絶えない、あかねと夏彦。嫁のもらい手ねーぞ、と夏彦にからかわれるのもいつものこと。秋次の存在を話しても、夏彦はどこか馬鹿にした様子であかねをあしらいます。
そんな中、あかねの元に届いたのは秋次の帰国を知らせる手紙。緊張しながらも再会を果たした秋次は、田舎くさかった2年前と違い、西洋の新しい風をまとった立派な青年へと成長していました。海外のことや、洋食の話をうれしそうに話す秋次の変化に戸惑いながらも、再びプロポーズされて舞い上がるあかね。しかし、それを気に入らない様子で見つめる人がいて……。
明治時代の食と恋をめぐる、あかねのドキドキの日々が始まります。
そういえば、今放送中の朝ドラも食をめぐる、ものを食らうお話でした。美味しいものと素敵な恋、これさえあれば、どんなことがあっても日々笑顔で生きていけるものなのかもしれません。
常に新鮮で新しい驚きをくれる洋食。生まれ育った親しみのある温もりをくれる和食。幸か不幸か、あかねの前に現れたのは、和食と洋食のように対照的な2人の素敵な男の子。
さて、皆さん。美味しいご飯と素敵な男子を前にしたとき、あなたなら、どちらを選びますか?どちらを選んでも心もおなかもいっぱいになるはず。さあ、どうぞ美味しく召し上がれ。
(評:ラノコミどっとこむ編集部/やまだ)
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