欧州連合(EU)の最高裁に当たる欧州司法裁判所は、EU加盟国は電子書籍と紙の書籍に関し、異なる付加価値税(VAT、日本でいう消費税のようなもの)率を自由に設定できるという結論に達した。これにより、すべての加盟国はEUの「税負担の中立性」に違反することなく書籍の付加価値税率を変更できることになる。税負担の中立性とは、同一製品に市場によって異なる税率が適用されると市場が歪むという概念を指す。
この問題については、3年以上にわたって加盟国と欧州委員会の間で議論が交わされてきた。ルクセンブルクは2012年、付加価値税を15%から3%に引き下げた。フランスもこれに倣い、書籍の付加価値税率を19.5%から5.5%に引き下げている。
ほとんどのEU加盟国は、デジタルコンテンツに異なる付加価値税を課しており、欧州司法裁判所の攻撃を恐れてそのポリシーを変えなかった。新たな規則では、EU加盟国は電子書籍の課税率を完全に自由に変更できるようになる。
ルクセンブルクにおける3%という付加価値税率は、Amazon.com、Apple、Google、Koboにとって、欧州市場への参入ポイントとして非常に好都合だった。同国に事業の拠点を置くことで、ほとんどのEU加盟国において低税率で書籍を販売できたからだ。これは、もうかる市場ではあるがデジタルコンテンツの付加価値税率が20%と高い英国での浸透を大いに助けることになった。
英国の出版社や書店は英国政府に税率を変更するよう働き掛けてきた。彼らは、Amazonが3%の税率を享受しているのに自分たちが20%の付加価値税を課せられているのは本質的に不利だと考えていた。この動きがEUを促し、2015年初頭に規則の改定が実施される。電子書籍企業は、電子書籍の販売側の拠点の税率ではなく、購入者が居住する国の付加価値税を課すことになる。
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