e-Day:オラクルとコンパックの蜜月

【国内記事】 2001.07.11

 日本オラクルがOracle9iをいよいよ10月1日から出荷すると発表した。Oracle9iは,「100万の同時ユーザー」や「100万のTPC-Cトランザクション性能」をゴールに開発が進められ,過去のバージョンとは桁違いの,まるで化け物のようなRDB製品だ(日本オラクル,次世代プラットフォームのOracle9iを10月出荷へ)。

 オラクルは1999年春,初めて製品名に「i」を付けたOracle8iを米国で出荷し,インターネットコンピューティングのインフラ,e-ビジネスのエンジンとしてOracleデータベースを売り込んだ。Javaでストアードプロシージャが書けたり,Enterprise JavaBeansをサポートするなど,もはや単なるデータベースを超えた存在となっていた。

 折りしもB2Cを中心とするe-ビジネス熱はぐんぐんと高まっていた時期で,「何でもあり」のドットコム全盛期だった。Oracle8iは瞬く間にB2Cトップ10サイトすべてに導入され,オラクルもそれを誇りにした。

 しかし,ご存じのように2000年春をピークにドットコムの凋落が始まり,今ではe-ビジネスの神通力も衰えた。

 業界では,かつてのそれは幻想だったと言わんばかりに,「リアルe-ビジネス」という言葉が使われようになった。ベンチャーキャピタルが湯水のように資金をつぎ込んで開発したインターネット技術を,伝統的な企業が賢く活用するフェーズに入ったというわけだ。B2Cの分野では「クリック&モルタル」しか生き残れないといわれる背景も同じだろう。「バーチャル」は敬遠され,「リアル」がもてはやされている。

 B2Bも単なる外向きのものでは機能しないということが分かった。企業のバックエンドシステムも含めたエンドツーエンドの統合がリアルe-ビジネスには不可欠だ。それを支える次世代のプラットフォームには,メインフレームに集中管理されていたり,分散していたアプリやデータを一手に引き受け,統合できるスケーラビリティと可用性が求められる。そして,オラクルはその回答としてOracle9iを繰り出してきた。

 Oracle9iにスケーラビリティとメインフレームクラスの可用性をもたらしているのはクラスタと呼ばれる技術だ。オラクルは,1991年にディジタルイクイップメント(DEC)のVAX Cluster(現在のOpenVMS Cluster)上で動作するOracle 6.2を開発して以来,10年かけて,このクラスタ技術を培ってきた。これは偶然だが,DECが最初のAlphaチップを出荷した時期と重なる。どちらも10年のベテランだ(64ビットの種馬になるAlpha )。

クラスタの一級品

 OpenVMS Clusterは,1984年に世界で最初のクラスタ製品として登場した一級品で,現在もその洗練さにおいては並ぶものがないといわれている。

 ちなみに今でこそOracleはSPARC版Solarisを開発プラットフォームとしているが,最初のOracleはDECのPDP-11で開発された。以来,両社の蜜月はDECがコンパックに買収されるまで続く。1994年,オラクルはDECのRdb部門を買収し,パラレルおよびクラスタ技術を統合する。翌1995年にはDigital UNIX(現在のCompaq Tru64 UNIX)上で初めての64ビットOracleを開発した。

 しかし,オラクルのクラスタ技術は,すべてのノードがディスクを共有するため,可用性は高いものの,ノード間で排他制御が必要なためになかなか性能が上がらなかった。

 新しいOracle9i Real Application Clusters(RAC)では,メモリ間で排他制御することでそうした弱点をついに克服した。オラクルではこの技術を「Cache Fusion」と呼んでおり,ほぼリニアな性能向上を手に入れることができる。「シェアードディスクか,シェアードナッシングか」という論争が長らく続いたが,オラクルではOracle9i RACで決着をつけたいところだろう。

 Oracle9i発表の前日,コンパックは新しいAlphaServerの発表会を行ったが,Tru64 UNIX向けのクラスタ製品である「TruCluster Server」がOracle9i RACのベースとして組み込まれたことをアピールしている。コンパックとインテルの提携によって,Alphaチップの遺伝子を持った次世代のItaniumプロセッサファミリーが登場してくれば,オラクルとしてもやりやすいだろう。

 都内のホテルで行われたOracle9iの発表会で新宅正明社長は,幾度となく,今後IA-64が席巻していくだろうミッドレンジからローエンドサーバ市場について触れた。

「IA-64が出てくれば,Windowsは選択肢のひとつになり,ウインテルの時代は終わる」(新宅氏)

 HP-UX,Tru64 UNIXをはじめとする各社のIA-64向けUNIXや,さまざまなLinuxディストリビューション,そしてWistler Serverは,全く同じ条件で比較されることになるからだ。

 UNIX RDBMS市場で7割近い圧倒的なシェアを持つオラクルとしては,64ビット化で一日の長があるUNIX陣営が,ボリュームのあるIA市場で巻き返してくれるのは大歓迎だ。Linux市場のシェアも7割近い。

「NT市場? IA市場は64ビット化でWindowsの支配力が弱まる。そうした市場全体の流れを見ながら,ミドルおよびローエンドを取っていきたい」(新宅氏)

 再び,オラクルとコンパック(DEC)の蜜月時代がやってくるのか。

[浅井英二 ,ITmedia]



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