エンタープライズ:トピックス 2002年5月13日更新

新ノベルが戦略を発表,鍵は「顧客志向のサービス」と「プロビジョニング」

 ノベルは5月13日,顧客のニーズにフォーカスしたサービスを中心とする新戦略,「The New Novell」を発表した。

 ノベルの米国本社は昨年,ソリューション事業の強化を目的に,米ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズ(ケンブリッジ)を買収している。これに伴い日本法人同士も,独立を維持しながらも連携を強化していく。

 今後は,ディレクトリ製品「Novell eDirectory」を中心としたノベルの製品群に,ケンブリッジのコンサルティング力やノウハウを組み合わせ,「顧客が抱える問題を解決すべく,サービスを提供していく」(ノベル社長兼ケンブリッジ社長,吉田仁志氏)という。

 といっても,これでノベルの他のパートナーとの関係が遠ざかるわけではない。「従来のパートナーとの関係は,むしろ強化される」(吉田氏)。まずケンブリッジが強みを持つ金融・サービス・流通といった分野で連携してソリューションを作り上げ,その事例を元に,他のパートナーが事業を広げていくというモデルを描いている。

新ノベルの社長として初めて公の場で戦略を発表した吉田氏

「ケンブリッジはあくまで,ノベルのパートナー企業の1社に過ぎない。ケンブリッジは今後もベンダーに対して中立の立場を貫くし,ノベルもまた,パートナーに対して中立の立場を取る」と吉田氏は語り,あくまで重要なのは顧客にとって投資効果が高く,付加価値の高いソリューションを提供していくことだと強調した。

ターゲットは「プロビジョニング」

 この新ノベルがまず力を注ぐのは,「プロビジョニング」市場だ。プロビジョニングという言葉自体,文脈によって異なる意味が与えられるが,ノベルではこれを「顧客のIT環境を整えること」と定義している。

 具体的には,ディレクトリサービスを基盤としたサービスの統合や,認証・認可・アクセス制御を通じたセキュリティの確保,ユーザー情報に基づくパーソナライズから構成される。新ノベルでは,同社の技術や製品に,ビジネスニーズに応じたコンサルティングや支援サービスを提供することにより,顧客のeビジネス基盤構築を支援していくという。

 吉田氏は,「プロビジョニングは新しい市場。日本ではCRMにしてもERPにしても,まだ個別のシステム導入にとどまっており,全社的な情報統合をにらんだプロビジョニングにまで至っていない」と述べ,まずはケンブリッジが強みを持つこうした分野でプロビジョニングの実績を積んでいくことが目標だとした。

 なおノベルでは引き続き,プロビジョニングの構成要素となる製品群の強化にも務めていく。近々,認証やシングルサインオンの機能を提供する「iChain」の新バージョンをリリースする予定だ。さらに年内には,ディレクトリを拡張する形でUDDIやSOAPといった標準に準拠し,Webサービスへの対応を実現する新製品を投入する計画という。

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[高橋睦美,ITmedia]