エンタープライズ:インタビュー 2002/08/07 22:14:00 更新


新生HPのブレードサーバは管理ソフトで勝負

立ち上がったばかりのブレードサーバ市場だが、各社の新製品投入が続く。差別化は必ずしもハードウェアだけではなく、管理ソフトウェアの使いやすさを含めたトータルな性能に注目する必要がある。その管理ソフトの性能の高さを強調する新生HPに話を聞いた。

 ブレードサーバ市場はまだ立ち上がったばかりで、導入するユーザーの方も興味本位の状態。しかし、将来の主力製品に育てるべく、サーバメーカー各社は続々と製品をリリースしている。ヒューレット・パッカードと合併するコンパックコンピュータも力を入れるベンダーの1つ。この「新生HP」は、ブレード製品のハードウェアスペックだけでなく、管理者を助ける多くの機能を備えた管理ソフトウェアで、同市場の開拓を目指す。同社のIAサーバ製品本部の製品企画部長を務める大内剛氏と、IAサーバ技術部の森田宏シニアコンサルタントに話を聞いた。

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一括インストール、リモート管理ツールなどのソフトウェアがカギとする大内氏(右)と森田氏

 同社は今年の2月にブレードサーバ「ProLiant BL e-Class」シリーズを発表した(関連記事)。現在、新生HPはブレードの新製品をリリースする準備をしており(関連記事)、メールサーバのホスティングに向いた2Wayモデルや、ローエンドデータベースに適用できる4Wayモデルなどが近いうちにリリースされるようだ。

 同社は、BL e-Classシリーズ発表の際、IAサーバ向けの新ビジョン「アダプティブ・インフラストラクチャー」を打ち出している。これは、変化するビジネス環境に柔軟に対応できるコンピューティングを実現しようというもの。内容は、サーバのリモート監視や、優れた障害復旧機能、システム内での動的なリソース割り付けなどとなっており、「数」で勝負するブレードサーバを使うにあたって心強い機能だ。

「今後3階層モデルのすべてをカバーするブレードサーバが登場する」と大内氏。同氏は、ブレードサーバについて、設置スペースの縮小、低消費電力といったハードウェア的な優位性よりも、サーバ管理ソフトウェアであるRapid Deploymentパックを強調する。「ユーザーがサーバを採用する場合、管理ソフトウェアを気に入るケースが多い」としている。Rapid Deploymentパックは、ブレードサーバに特化したものではなく、同社のProliant製品に共通して利用できるソフトウェアだ。

 Rapid Deploymentパックにより、インストールするにあたり、OS/アプリケーションは管理用のマシンにイメージコピーされる。そのイメージがスクリプトとして複数のサーバにマルチキャスト配信され、自動インストールが行われる。リモートからの操作が可能であるため、システム管理者は「休日出勤する必要がない」という。CD-ROMを使って1台ごとにインストールする必要がなく、GUIによるドラッグアンドドロップで行えるため、3Uに20台も格納されるブレードを運用するには特に好都合だ。またブレードの場合、1枚のサーバに障害が発生した時は、それを取り外し、新しいブレードを差し込めば、自動的にソフトウェアなどがインストールされ、代替マシンとして機能しようとする。これは、ブレードサーバの「クールな印象」を支える特徴だ。

 なお、OSの一括インストール機能については、富士通の2Wayブレード「BX 300」などにも搭載され、NECも「ESMPRO/DeploymentManager」などのソフトウェアを出している。今後ソフトウェアがどのように差別化されていくかは楽しみなところだ。

 かつて、タワー型サーバからラックマウント型へとトレンドが移った際、ラックマウントサーバのコンパックのシェアは40%に対し、日本全体はまだ25%だったという。これと同じように、「ブレードでも業界をリードしていきたい」と森田氏は話している。

まだ改善点も

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サーバブレード「ProLiant BL10e」 blade3.jpg
3Uに8枚搭載されている「ProLiant BL10e」

 同社が現在リリースしているProLiant BL10eは、低消費電力を特徴にWebサーバへの利用を想定したものだ。3Uのきょう体に20枚のブレードを差し込める。現状は1Wayであるため、最大プロセッサ数は20だ。

「BL10eはネットワークのコネクタしかないため、ローカルディスクに頻繁にアクセスしなくてはならないようなケースには向かない」という。ここでは例えば、インターコネクト機能によるクラスタサーバとしての利用が可能なNECの「Express5800/BladeServer」などの方が向いているかもしれない。

 今後同社がリリースする、SMP(対称型マルチプロセッシング)に対応するという2Way以上のブレードに期待がかかる。なお、対称型マルチプロセッシングは、マルチプロセッサシステムにおいて、全体の処理を各プロセッサに均等に割り振るように設計されたシステムのこと。

TCO削減の観点でも光るブレード

 ブレードサーバについて、TCO削減の観点で聞いてみた。まずは基本どおり、設置面積の低減によるサーバルームの面積を抑えられることや、低消費電力の設計や電源を共有する構造によるランニングコストの低減などが挙がった。

 さらに、Rapid Deploymentパックのような管理ツールを利用することによる効果は、実はかなり大きいという。管理者は多数のブレードサーバを一元管理できることで、インストールにかかる時間を節約できる。当然人件費に掛かるコストに換算すれば大きい。

 また、ブレードによる「サーバ統合」というテーマとも絡んでくるが、大企業などにおいて、さまざまな場所に分散してサーバが存在しているケースでは、サーバをメンテナンスする管理者が多く必要だった。その複数のサーバを集約して一元的に管理すれば、管理者自体を減らすことも可能としている。

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[怒賀新也,ITmedia]