エンタープライズ:インタビュー 2002/10/02 17:35:00 更新


Interview:賭けに勝ったNCRのナイバーグCEO

1996年、AT&Tから再び独立した企業として歩み出したNCRで、ナイバーグCEOは、それまで30あった事業を一気に3つに絞り込んだ。中でも彼が社運を賭けたのが、「Teradata」事業だった。同事業は、ここ数年の厳しい経済状況下でも黒字に転換し、NCR全体の業績に貢献するにまで成長した。

 1995年、AT&T傘下にあったNCRへ入社したラーズ・ナイバーグ氏は、翌96年からはAT&Tからスピンオフし、再び独立した企業として歩み出したNCRの舵を取ってきた。120年の歴史を誇るナショナル・キャッシュ・レジスター(NCR)は、文字通りキャッシャレジスターのパイオニアとして知られ、その後はIBMと共にコンピュータメーカーとして一時代を築いた。しかし、ナイバーグ氏は、当時30もあった同社の事業を見直し、いわゆる「選択と集中」を生き残り戦略の柱とし、わずか3つの事業に絞り込んだ。メーカーからテクノロジーソリューションプロバイダーへの移行だ。

「テクノロジービジネスで成功するにはトップ3に入らないとダメだというセオリーに従った」とナイバーグ氏。ゼネラルエレクトリックの前CEO、ジャック・ウェルチ氏の戦略だ。

 NCRが絞り込んだ事業は、1位のATM端末、2位のストアオートメーション(POS)端末、そして1位のエンタープライズデータウェアハウス(EDW)だ。中でもナイバーグ氏が社運を賭けたのが、EDWを構築し、迅速な意思決定を支援する「Teradata」だった。昨年後半、Teradata事業は黒字転換を果たし、2002年上半期には、NCR全体の売り上げが前年同期比で9%減少する中にあって、3%の成長を見せた。5500万ドルの利益も生み、NCRの業績に貢献し始めた。

「Teradataを成功させる確信はあったが、むしろ予想を超えるスピードで市場がわれわれの得意とする機能を必要とし始めている」(ナイバーグ氏)

 9月30日からラスベガスのMGMグランドホテルで行われているTeradataユーザーの年次総会、「PARTNERS 2002」カンファレンスで見事賭けに勝ったナイバーグ氏に話を聞いた。

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スウェーデン生まれで長身のナイバーグ氏。NCR入社前はフィリップスの通信システム事業部門を統括していた

ZDNet ほんの2年前だが、インターネットに乗り遅れることを恐れた企業が一斉に無謀な設備投資に走りました。その反動もあって、多くのITベンダーが需要の低迷に苦しんでいます。Teradata事業はどうでしょうか?

ナイバーグ ドットコム企業は、たいてい「ROI」(Return On Investment)はお構いなしでした。多くのITベンダーが今になって設備投資の削減に苦しんでいますが、Teradataのデータウェアハウス事業は成功しています。それは、当初から一貫してROIを明確にして、Teradataの導入を提案してきたからです。ここ2年の苦しい経済状況下で成功を収めたということは、われわれのROI重視のアプローチが正しかったことを証明しています。

ZDNet Teradata導入によって実際に財務上の利益がどれだけもたらされるのかを見積もるメソドロジー、「Business Impact Modeling」について教えてください。

ナイバーグ これは概念ではありません。リアルなモデルを扱い、すべての顧客に適用しているものです。Teradataの導入は、「どれぐらいの時間とコストがかかるのか」「どれぐらいコストが下がるのか」「どれぐらい売り上げが増えるのか」、「1年目の投資に対して幾らのリターンがあるのか」、「いつ投資を回収できるのか」を明確にして顧客に提案します。

 また、われわれが提供するのは単なる予測だけには留まりません。当初の計画に対して、実際にもたらされた価値がどれぐらいなのかを監視し、妥当性を調べることによって、Teradata導入の効果を確実なものにしていきます。

 現在の厳しい経済状況では、リターンを生まない投資は認められません。

ZDNet ゼネラルセッションの中で、いわゆる「20:80」のセオリー(20%の顧客しか利益に貢献していない)について話しました。Teradataで顧客をセグメンテーションし、利益の上がらない顧客は切り捨てろというメッセージですか。

ナイバーグ 20:80のセオリーはほとんどの企業に当てはまる典型的なケースです。利益に貢献しない顧客セグメントには、サービスを止めてしまおうという誘惑に駆られるでしょうが、実は彼らの中から次の利益率の高い顧客として定着してくれる人が現れます。

ZDNet 日本企業にTeradataをどのように売り込みますか。米国の先進例を間近に見て、何か示唆となることはありますか。

ナイバーグ われわれが考える理想のデータウェアハウスへは、「レポート」「分析」「予測」「リアルタイムでの状況把握」、そして「イベントに対する自動化」という5段階によってアクティブデータウェアハウスへと進化します。多くの日本企業は、まだ最初のレポートの段階にあると思います。

 しかし、これは技術の問題ではありません。どうビジネスを管理していくのか、いわゆる「企業統治」の問題です。今回の「PARTNERS 2002」カンファレンスのテーマは、「Accelerating the future」(将来へのダッシュ)ですが、その意味は、業界の先を読み、いち早くそこに到達することです。そして、他社よりも早く到達した企業が生き残るのです。ウォルマートもそうです。

ZDNet COOのマーク・ハードさんと一緒に本を執筆されていると聞きました。どんな内容ですか。

ナイバーグ 今話したことと関連しています。執筆中の本(仮題:The Value Factor)では、グローバルに成功を収めた企業が情報をどのように成長や競争優位のために活用したかを紹介します。技術の話ではありません。会社をどのように運営していくかです。



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▼日本NCR

[浅井英二,ITmedia]