エンタープライズ:インタビュー 2002/11/11 00:00:00 更新


座談会:オラクル、ミラクル、デル、アシストがタッグを組んだLinux版Oracle9i RAC (3/3)

アシスト・田中 アシストでも年内に1〜2社、成功事例を紹介できると思います。Linux版のOracle9i RACを売り込みやすいのはUNIXシステムの更新時です。サンのSPARC/SolarisサーバにベリタスソフトウェアのCluster Serverを組み合わせたものとデルのPowerEdgeサーバをベースとしたLinux版Oracle9i RACソリューションが比較検討の対象になったりします。

 われわれとしては、コストを下げつつ可用性を高めたいという顧客の声を聞き、Linux版のOracle9i RACがすぐにフィットし、問題が解決できるのであれば、それを提案します。

デル・長谷川 サンのSPARC/Solarisサーバ1台で基幹業務を行っている中堅以下の企業がたくさんありますが、そこが単一障害点となり、セキュリティやデータ保護の不安が拭い去れません。

 長引く経済低迷からIT支出の意識が以前とは全く違っています。より慎重に検討しています。その一方で、可用性やスケーラビリティへの要求が高まっています。それは従業員が400人以下の規模の企業でも同じですし、製造業だけでなく、xSPもそうだし、金融もそうです。こうしたさまざまな顧客のニーズを掛け合わせていくと、Oracle9i RACで協業する今回の枠組みがうまくフィットしていると思います。

オラクル・清水 64ビットのItaniumプロセッサを搭載したIAサーバが浸透してくれば、SPARC/Solarisと対等になれます。Windowsの64ビット対応が遅れているため、Linuxは重要な役割を担っていくことになるでしょう。

デル・長谷川 デルはインテルを裏切らないメーカーです(笑い)。Oracle9i RACソリューションでも、これまではプロプライエタリだった高可用性システムをデルのモデルに乗せ、一気にコモディティ化していきます。

Linuxソリューションの課題は

ZDNet 高嶺の花だったクラスタシステムの価格が下がるのはいいのでしょうが、システムインテグレーターの利幅が縮小し、回りまわって顧客が不利益をこうむるようなことになりはしませんか。

アシスト・田中 確かに年々利幅は縮小していますが、システムインテグレーターもこれまでと同じ役割ではいけないと思っています。われわれは、単にデータベースシステムを納入するだけではなく、運用をサポートしたり、パフォーマンスチューニングのコンサルティングを通じて、それを上手に使ってもらい、顧客の収益を向上させるビジネスを目指しています。

ZDNet 快進撃のLinuxソリューションですが、まだまだ課題も多いと思います。

ミラクル・藤城 敢えて言えば、SPARC/Solarisと比較してソリューションの数がまだ少ないということでしょう。しかし、これも急速に改善されつつあります。かつてISVの対応は、最初にSolaris、次はHP-UX、そしてAIXの順だったと思いますが、今やSolarisの次はLinuxではないでしょうか。Solarisの牙城だったエンジニアリングや金融のデスクトップもLinuxがリプレースし始めています。

デル・長谷川 ハイパフォーマンスコンピューティング市場は、IAサーバに大きくシフトしています。先ごろもニューヨーク州立大学バッファロー校(SUNY Buffalo)が、2000台のPowerEdgeサーバとRed Hat Linuxによってクラスタシステムを構築したことを発表しました。製造業の開発部門でも数十から百といったノード数のクラスタシステムが稼動し始めています。

 2年前まで、Linuxシステムの出荷先は、そのほとんどがxSPでしたが、ここへきてUNIXシステムからのリプレースに関する問い合わせが急増しています。IDCの調査によれば、ITプロフェッショナルの70%は2年以内にLinuxを標準システムにしても問題はなくなると考えています。

オラクル・清水 そのためにもLinuxエンジニアの育成は極めて重要ですね。現状ではLinuxを含めてしっかりとコンサルティングできるエンジニアがほとんどいません。日本オラクルでもエデュケーション部門が取り組んでいますが、Linuxのコースも追加し、Oracle9i RACまで含めた教育を充実させたいと考えています。

ZDNet 管理ソフトウェアはどうでしょうか。

アシスト・田中 われわれアシストでは日立製作所のJP-1をLinux版のOracle9i RACと組み合わせて提案しています。JP-1は、システムを運用していくうえで必要とされる作業を自動化するもので、ジョブ管理、バックアップのようなストレージ管理、およびサーバを監視するアベイリビリティ管理などの機能があります。

 また、アシストでは「iDoctor」という24時間365日のリモート監視サービスを提供していますが、LinuxのOracle9i RACシステムに合わせて監視項目も増やし、サポートを始めています。例えば、ディスクスペースが少なくなっていることをエージェントモジュールから通知を受けると障害が起こる前に顧客に代わってアシストが駆けつけ、問題を解決します。地方に生産ラインを持つ製造業などに適したサービスといえるでしょう。

デル・長谷川 われわれがコンサルティングした経験からですが、Oracle9i RACを検討する顧客のほぼ100%がバックアップのソリューションを最初から求めています。

オラクル・清水 正直言って、管理ソフトウェアの充実はもう少し時間がかかると思っていました。

ミラクル・藤城 最近、重要な顧客の多くはデルが獲得している。だからおのずと顧客の声はデルに集まっていますね。

デル・長谷川 デルは元々政府系で多くの実績を重ねてきました。ミッションクリティカルな業務にLinux版のOracle9i RACが採用された事例としては、米国連邦航空管制局(FAA)があります。全米の航空管制塔を対象に2000人を超す同時使用ユーザーを24時間365日サポートするアプリケーションで、これまで複数稼動していたUNIXシステムを統合するものです。

 もちろん、オラクルやアシストのようなパートナーとの協調が大切なことに変わりはありません。今こそ、われわれがUNIXが独占していた市場に踏み込む絶好のタイミングだと考えています。

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関連リンク
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[聞き手:浅井英二,ITmedia]