エンタープライズ:インタビュー 2002/12/09 22:26:00 更新


Interview:統合機能によって新たなアプリケーション基盤の世界を切り開くBEA

BEAシステムズで「WebLogic Integration」のプロダクト管理を担当するディレクター、ビットーリオ・ビアリンゴ氏が来日した。ポータルやインテグレーションの機能を緊密に統合したWebLogic Platform 7.0によって、J2EEアプリケーションサーバのリーダーから「アプリケーションプラットフォーム」のリーダーへと飛躍を狙う同社の戦略について聞いた。

「アプリケーションプラットフォームの変革は10年に一度のこと。今がまさにその時だ」と話すのは、BEAシステムズで「WebLogic Integration」のプロダクト管理を担当するディレクター、ビットーリオ・ビアリンゴ氏。この9月に出荷が始まった「BEA WebLogic Platform 7.0」では、世界の1万3000社に導入されたWebLogic Application ServerにWebLogic PortalやWebLogic Integrationが緊密に統合された。ガートナーもこの新しい市場を「アプリケーションプラットフォームスイート」と呼び、そのビジョナリーとしてBEAを位置付けているという。来日したビアリンゴ氏にBEAの新たな戦略を聞いた。

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「EAIベンダーからも多くの人材がBEAに集まってきている」とビアリンゴ氏。自身も2年前にエクセロンから移籍してきたという

ZDNet この秋から出荷を開始した「BEA WebLogic Platform 7.0」では、ポータルやインテグレーションの機能が統合されました。J2EEアプリケーションサーバのリーダーだったBEAシステムズが、そうしたソリューションを提供するに至った背景を教えてください。

ビアリンゴ われわれは2年前からポータル製品とインテグレーション製品を提供してきましたが、顧客らがアプリケーションの統合と情報のポータル化を単一のプラットフォームで行いたいと望んでいました。確かにインテグレーション分野では、ビトリアテクノロジーやウェブメソッドといった専業ベンダーがありますが、われわれのソリューションであれば、新たに学ぶ必要もありませんし、運用時には個別に管理する必要もありません。

ZDNet ビトリア、ウェブメソッドのほかにも、シービヨンドやティブコなど、EAI(Enterprise Application Integration)分野には競合がひしめいています。彼らのソリューションと比較してどこが優れているのでしょうか。

ビアリンゴ 彼らのソリューションは、データアクセスやデータ変換にフォーカスしたものです。それに対して、WebLogic IntegrationやWebLogic Portalを統合したWebLogic Platform 7.0では、アプリケーションへのアクセス、プロセスの自動化、ロジックの記述のほか、ビジネスプロセスをポータルからエクスポーズしてパートナーとも連携を図ることができます。つまり、エンドツーエンドのソリューションが提供できますし、単一の統合化されたアプローチをとるため、TCOを抑えることもできます。

 また、WebLogic Platform 7.0からは、Webサービスをビジュアルに構築できるWebLogic Workshopを統合し、新しいレベルの生産性を提供しています。

 この4四半期の業績を見ても、専業ベンダーらは売り上げを減らしています。われわれは、インテグレーション製品だけの売り上げを公表しているわけではありませんが、着実にその売り上げを伸ばしています。つまり、彼らから市場シェアを奪っているといっていいでしょう。

ZDNet この分野における標準化について教えてください。BEAはどのような取り組みをしているのでしょうか。

ビアリンゴ Webサービス関連が最も戦略的で主要なものとなっています。WS-I(Web Services Interoperability Organization:Webサービス製品間における互換性を確保すべく活動しているコンソーシアム)では、マイクロソフトやIBMらとともにボードメンバーとして、標準化を推進しています。

 企業のバックエンドシステムとの統合という点では、JCA(J2EE Connector Architecture)が重要になります。WebLogic Integrationでは、JCA 1.0仕様を拡張し、片方向(Javaからバックエンドシステム)への同期呼び出しだけでなく、双方向かつ非同期の通信を可能にしています(この機能を使えば,在庫管理システムから“在庫切れ間近”のメッセージを非同期に受け取ってビジネスプロセスを起動し,パートナーに“発注”メッセージを自動送信するシステムが構築できる)。この機能は、Javaコミュニティープロセスで標準仕様の策定が進められているバージョン1.5にも盛り込まれています。

 ビジネスプロセス管理の分野では、Webサービスの一連の動作を規定/記述する技術として、サン・マイクロシステムズらのWSCI(Web Service Choreography Interface)と、マイクロソフトおよびIBMのBPEL4WS(Business Process Execution Language for Web Services)という2つの仕様が提案されていますが、われわれはどちらにも参画しており、これらを一本化できるよう努力しています。

IBMとの戦い

ZDNet WebサービスやJavaの標準化では、IBMが多くのリソースを投入しています。彼らとの戦いに勝算はありますか。

ビアリンゴ IBMは標準化に貢献しており、尊敬していますが、製品となると余りにも細分化されており、WebLogic Platform 7.0のレベルまでそれらを統合するためにはさらに多くの時間が必要になるでしょう。

 われわれは真に統合されたプラットフォームを提供しています。日本では伝統的にパートナー経由で新しい技術がユーザーに届けられてきました。WebLogic Platform 7.0であれば、生産性も優れており、それほど手をかけずに短期間でカスタマイズできます。システムインテグレーターの専門的な知識やノウハウとWebLogic Platformの組み合わせは、「キラーコンビネーション」です。

ZDNet WebLogic Integrationの導入企業を教えてください。

ビアリンゴ 既にワールドワイドで400社以上が採用しており、140から160の顧客企業が配備を済ませています。ミッションクリティカルなシステムを構築している企業としては、テキサスインスツルメンツ、ベライゾン、ファニーメイ、ブリティッシュ・エアウェイズ、ノキアなどがあります。

ZDNet 日本ではどうでしょうか。

ビアリンゴ われわれは日本市場に可能性を感じています。米国市場は旧来型のEAIという過程を経験しましたが、日本市場には、それスキップして、XML/Webサービスをベースとしたインテグレーションに移行しようという動きがあります。

 アダプタと変換によってポイントツーポイントでシステム間を接続する旧来型のEAIは、一部の変更がシステム全体に影響を及ぼしてしまいます。これに対してわれわれのアプローチは、システム固有のAPIをJCAアダプタとWebサービスでラッピングし、「疎結合」型のインテグレーションを実現します。こうしてやれば、ビジネスプロセスは、ビジネスレベルのAPIだけ意識すれば済み、バックエンドの詳細まで知る必要はありません。

ZDNet サンのスコット・マクニーリーCEOやソフトウェアを統括するジョナサン・シュワルツ上級副社長は、「J2EEアプリケーションサーバはコモディティ化する」と話しています。BEAは長期的なビジネス戦略は?

ビアリンゴ サンやオラクルが信じているほどのスピードでコモディティ化は進んでいません。非常に厳しい市場ですが、われわれはライセンスやサービスによって四半期当たり2億5000万ドルから3億ドルを売り上げ、利益も得ています。決してコモディティ化しているわけではありません。

 BEAは、既存システムや将来のシステムと統合できるアプリケーションインフラ市場のリーダーです。ガートナーもこうした新しい市場を「アプリケーションプラットフォームスイート」と定義し、その「ビジョナリー」(先見性あるベンダー)としてBEAを位置付けています。

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関連リンク
▼BEA WebLogic Platform 7.0Jサイト(BEA/ZDNet共同企画)
▼日本BEAシステムズ

[聞き手:浅井英二,ITmedia]