エンタープライズ:ニュース 2002/10/24 14:56:00 更新


J2EEサーバのパイオニア、BEAがその集大成をリリース

アプリケーションサーバ市場のリーダー、BEAが9月下旬、「BEA WebLogic Platform 7.0J」を出荷した。BEAの集大成ともいえるWebLogic Platformは、パフォーマンスと信頼性で高く評価されているWebLogic Serverに「WebLogic Portal」および「WebLogic Integration」を統合し、ITを戦略的に活用できるアプリケーションインフラストラクチャを提供するのが狙いだ。

 20億ドル規模と見込まれているアプリケーションサーバ市場のリーダー、BEAシステムズが9月下旬、その集大成ともいえる「BEA WebLogic Platform 7.0J」を出荷した。

 カリフォルニア州サンノゼに本社を置くBEAは、富士通や日立製作所といった国産コンピュータメーカーが自前のJ2EEアプリケーションサーバを販売する日本の市場においても、その性能や信頼性、あるいは先進性が多くのJavaの技術者らから評価されてきた。特にその名を知らしめたのが、松井証券によるBEA WebLogic Serverの採用だった。

 1999年3月に鳴り物入りで日本市場に参入したWebLogic Serverは、ドットコムブームを背景に急増するオンライントレーダーとその取引量に対処しなければならなかった同社のオンライン証券システムを基盤として支えた。

「日本語版のリリースから間もないころ、松井証券がWebLogic Serverを何本も購入されていったのですが、当時は営業スタッフが出向くこともありませんでした」と振り返るのは、日本BEAシステムズでチーフテクニカルストラテジストを務める伊藤敬氏。

 日本BEAが気が付いたころには、松井証券は既に自らの技術とノウハウでシステムを構築し、2000年に入ると「ネットストック」サービスをWebLogicベースのシステムに切り替えたという。

「WebLogic Serverは、Javaアプリケーションサーバのパイオニアであり、軽量でデーベースアクセスの性能も高く、またバグも少なかった。そして、それを多くのJava技術者が評価してくれた。WebLogic Serverは彼らによって支えられてきたといっていい」(伊藤氏)

 BEAはフォーチュン500の企業の大半を顧客として抱え、また、国内においても名の知れた企業が彼らの顧客リストに名を連ねている。そうした導入企業のケーススタディで必ず顧客から指摘されるのが、常に「パフォーマンス」と「信頼性」だと伊藤氏は話す。

ポータルやEAIを統合

 Java技術者の祭典ともいえるJavaOneカンファレンスの横浜開催を翌日に控えた9月24日、「BEA WebLogic Platform 7.0J」の出荷開始が発表された。

 WebLogic Platformは、下のグラフィックを参考にしてもらえば分かりやすいが、J2EEサーバのWebLogic Serverとその上で動作する「WebLogic Portal」および「WebLogic Integration」を単一の製品としてまとめあげたもの。顧客やパートナー、あるいは従業員に向けたポータルからバックエンドシステムに至るまで、企業のシステム全体をシームレスに統合できるアプリケーションインフラストラクチャを提供するのがその狙いだ。しかも、J2EEという1つの技術やノウハウでシステムを構築することができ、「競合他社にはない強み」と伊藤氏は話す。

図1

 Webサービスをビジュアルに構築できるRADツール、「WebLogic Workshop」も統合されており、BEA WebLogic Platform 7.0Jは、まさに同社のすべての製品をまとめあげた「集大成」といっていい。

 BEAがこうしたスーパーセットを市場に投入した背景には、顧客企業らのニーズがあった。企業のシステムには、EIP(Enterprise Information Portal)の機能が求められ、また、ERPやレガシーシステムを統合するEAI(Enterprise Application Integration)機能、さらには他社システムとの連携を図るB2Bi(企業間業務統合)機能も不可欠となっている。

 しかも、顧客企業を取り巻くビジネス環境は厳しさを増している。絶えず変化するビジネスに合わせ、システムも柔軟に進化していくことが求められており、特に、e-コマースの分野では、新しいサービスを他社に先駆けて提供することが勝敗を分けるという。

 J2EE仕様自体の進化や領域の拡大も、ポータルやビジネスプロセス管理、そしてインテグレーションの統合を促している。かつてはJ2EEエンジンの上に位置付けられていた、「フレームワーク」と呼ばれていた領域も次第にJ2EE仕様としてJCP(Java Community Process)で標準化されつつある。

 こうしたJavaコミュニティーにおいてはBEAも積極的に貢献していて、ポートレットやパーソナライゼーション、ビジネスプロセス管理の標準化で主導的な役割を果たしているという。

「J2EEとBEA製品が目指す方向性が一致しているということ。BEAのWebLogic Platformであれば、Javaという1つの思想、1つの開発方法論、1つの技術で企業は戦略的にそのIT基盤を構築し、活用していくことができる」(伊藤氏)

戦略的にITを活用する企業

 米メリルリンチでは、WebLogic Platformを導入し、従来型のe-コマースサイトからの脱却、「IT基盤の戦略的構築と活用」にチャレンジしている。

 グローバルな総合金融サービス会社である同社では、個人、法人、および機関投資家を対象にそれぞれのニーズにあったサービスを素早く提供すべく、BEAのアプリケーションインフラストラクチャでポータルを構築した。基幹のオーダー管理システムとの連携はもちろん、パートナー企業との連携も強化することで業務を効率化している。

 国内においても、日本BEAが同社のWebサイトで導入事例を幾つか公開している。

 インターネット決済に特化したネットバンクとして2001年7月に開業したイーバンク銀行は、WebLogic Serverを基盤とし、24時間365日安定稼動するシステムを構築した。今年7月には、メールアドレスを指定するだけで送金できる「メールサービス」をスタートさせ、話題となっている。

 このユニークなサービスは、WebLogic Serverとファイテックラボラトリーズの金融向けフレームワーク「xTrade」を組み合わせ、極めて短期間で提供開始に漕ぎ着けたという。ちなみにファイテックラボラトリーズは、松井証券のシステムを構築したことで知られており、そうしたノウハウを生かし、xTradeを開発・販売している。

 イーバンク銀行は、J2EEの優れた特性やそれを実装したアプリケーションサーバ製品によって、コアコンピタンスを作り上げている好例といっていいだろう。

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▼日本BEAシステムズ

[浅井英二,ITmedia]