エンタープライズ:インタビュー 2002/09/30 14:11:00 更新


Interview:「信長」のシステムでIBMと戦うBEA

BEA WebLogic Platform 7.0Jの出荷開始に合わせるかのように、日本法人の新社長に就任したロバート・スチーブンソン氏。同志社大学で学んだ同氏は、「信長」のシステムでIBMと差別化を図り、生き残りを賭けるという。「製品はプラットフォーム化が進んでも、パートナーと一緒にビジネスを展開するモデルは、創業以来変わらない」と強調する。

先週、JavaOne Conference in Japanの開催に先立ち、日本BEAシステムズは、「BEA WebLogic Platform 7.0J」の出荷開始を発表した。BEA WebLogic Serverを核に、PortalおよびIntegrationを統合し、Webサービスを容易に構築し展開するための共通プラットフォームともなっている。新製品投入に合わせるかのように、日本法人の新社長に9月1日付けで就任したロバート・スチーブンソン氏に話を聞いた。彼は、同志社大学で経済学を学び、アーサー・ディー・リトルや日本クラインでコンサルタントとして働くなど、日本で20年以上のビジネス経験がある。

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合気道は六段の腕前というスチーブンソン新社長

ZDNet こういった言い方をすると失礼ですが、ギャレット・イルグ前社長の後任には、そろそろ日本人の方が就くのではないかと予想していました。例えば、IBM出身の方ですね。そういうソフトウェアベンダーが多いですから。

スチーブンソン BEAシステムズは、売り上げが10億ドル規模の大きな会社になりましたが、アルフレッド・チュアングCEO以下、依然としてベンチャー精神を失っていません。ここがわれわれの差別化のポイントです。

 組織が大きくなると、どうしてもスピードが落ちてきます。われわれはスピードがあり、ビジネスを楽しめる会社でいたいと願っています。また、ソリューションビジネスまでは踏み込みませんが、日本のパートナーや顧客らと一緒にソリューションを作り上げる、つまりソリューションの一歩手前までは、われわれが提供すべきだと考えています。それはチャレンジであり、社員一人ひとりの能力にかかっています。

 J2EEアプリケーションサーバの競合は激しくなっていますが、ライバルはサンでもオラクルでもありません。ちょうどお話のあったIBMです。われわれは、彼らと正反対の組織と改革によって戦う必要があります。戦国時代の「信長」のシステムですね。

ZDNet 戦略を大きく変えるということですか。

スチーブンソン いいえ、違います。戦略の転換というよりは、ビジネスを遂行する上でフォーカスを調整する、と言った方がいいでしょうか。既にわれわれにはしっかりとしたサポート組織があり、また、素晴らしい日本を代表する会社が顧客に名を連ねています。

 こうした資産を大切にしながら、さらにビジネスを大きくしていくことも可能でしょう。例えば、トヨタ自動車のようなグローバル企業であれば、BEAシステムズのネットワークを生かして彼らの世界展開を支援できるでしょうし、米国の多国籍企業が日本に展開するという逆もあるでしょう。

ZDNet 組織の面ではどうでしょうか。

スチーブンソン 先ほども触れましたが、製品単体ではなく、ソリューションの一歩手前までわれわれが提供していく必要があると考えています。

 顧客を動かすためには「単に革新的な技術だから」だけではダメです。情報システム部門が導入しようとしても、ユーザー部門がこれを拒んでしまいます。それを前進させるのはSIパートナーらの仕事なんですが、われわれにはそれを支援するノウハウや海外の成功事例があります。

 私の社長就任の翌日である9月2日には、営業部隊と技術陣が密接に協力できる新体制に移行しました。インターネットバブルがはじける前なら、「WebLogic」というだけでだれでも売ることができたかもしれませんが、今はいろんな知恵を出さないとダメです。製品も新しいバージョン7.0から、ポータルやインテグレーションの機能を統合した「BEA WebLogic Platform」となります。チャレンジですが、それだけポテンシャルもあります。

ZDNet これまでJ2EEアプリケーションサーバをリードしてきたBEAですが、BEA WebLogic Platformの登場によって市場へのメッセージが分かりにくくなっていませんか。

スチーブンソン われわれが戦略的にやりたい、というよりは、市場がスピードアップとコストダウンを求めていて、やらざるを得ない状況にあります。ピュアなポータル製品ベンダーはいずれ淘汰されるでしょう。ポータル機能などの統合は時代の流れであり、われわれの使命でもあるのです。

 とはいえ、SIパートナーらには、ポータルやインテグレーションの機能を組み合わせた方が優れたソリューションになるという点は売り込んでいきますが、BEA WebLogic Platformをすべての顧客に押し付けるのではありません。

ZDNet IBMもインテグレーションを掲げ、この分野で勢いを増しています。

スチーブンソン はっきりしていることは、われわれが「サービス」を提供するモデルではない、ということです。研究開発投資を行い、優れた製品を世に送り出し、その製品をソリューションとして生かしてくれるパートナーと一緒にビジネスを展開する会社なのです。アプリケーションサーバがプラットフォームとなり、複雑さを増してきますが、BEA創立以来変わらないシンプルなモデルをさらに明確にしていきたいと思います。

 IBMとわれわれは、白と黒だと思っています。違いを明確にし、顧客に選択してもらいます。

 私が学んでいる合気道でも、「他人掛け」という1対多の稽古があるのですが、基本は一人を見据えて倒す、あくまで1対1の勝負なのです。

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▼日本BEAシステムズ

[聞き手:浅井英二,ITmedia]