エンタープライズ:ニュース 2002/12/10 00:30:00 更新


日本IBM、オートノミック・コンピューティングに関するプレスセミナーを開催

日本IBMは、報道関係者を集めて、IBMが全社を挙げて推進する「オートノミック・コンピューティング(自律型コンピューティング)」に関するセミナーを開催した。

 日本IBMは12月9日、報道関係者を集めて、IBMが全社を挙げて推進する「オートノミック・コンピューティング(自律型コンピューティング)」に関するセミナーを開催した。

 セミナーでは、米IBMのオートノミック・コンピューティング担当副社長のアラン・ガネック氏が、オートノミック・コンピューティングの目標と、それにいたる「進化」の過程について説明した。

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米IBMのオートノミック・コンピューティング担当副社長のアラン・ガネック氏

複雑なシステムはシステム自身に管理させる

 ガネック氏は、現在のITインフラストラクチャの問題点を「あまりに大規模化/複雑化したために、技術の進歩による、価格性能比の向上などといったメリットが相殺されてしまっている」と指摘する。これに対し、オートノミック・コンピューティングは「複雑になる技術を管理するために、技術を使う」ことを主眼におき、さらにその技術にオープンなものを利用するという。そうした自律的に管理するシステム「インテリジェントなオープンシステム」を実現することで、ユーザーに費用対効果の向上、新機能のすばやい実装、生産性の向上などをもたらすとしている。

 オートノミック・コンピューティングの要素としてIBMが挙げるのは、変化する環境に適応できる「自己構成」、障害の発見・診断・防止能力である「自己修復」、効率よく運用する「自己最適化」、外部からの攻撃に対して予測・探知・防御する「自己防御」の4つ。オートノミック・コンピューティングは1つの技術としてではなく、さまざまな技術の集合体として、進化的に提供するとガネック氏は言う。

 IBMではすでに、オートノミック・コンピューティングを構成する技術の具体例として、Tivoliのサーバー・レベル・アドバイザー機能、WebSphereのアプリケーションの動的装備機能、eServerの動的パーティショニング、ThinkPad/ThinkCentreの組み込みセキュリティ・サブシステムなどおおくの機能を提供している。ガネック氏はその中から、DB2のコンフィギュレーション・アドバイザーの例を挙げた。コンフィギュレーション・アドバイザーは、自動的にハードウェア構成を検知し、動作環境を評価しながら、最適なチューニング設定をほんの数分で行えるというもの。このコンフィギュレーション・アドバイザーのチューニングを、人間のDBエキスパートが数週間かけてチューニングしたものとパフォーマンス比較したところ、ほぼ同等という結果を得たという。

数年内に主要な機能を提供

 またガネック氏は、人間がシステム管理を手作業で行う状態から、システムが完全に自律的に管理する状態までの「進化の過程」を5段階に分けて説明した。現在IBMが提供するオートノミック・コンピューティング技術は、「システムがモニタして関連づけ、アクションをアドバイスする。ITスタッフはそのアクションを承認して開始させる」という第3段階にあり、「システムがモニタして関連づけ、アクションをとる。ITスタッフはサービスレベルアグリーメントを基準に管理する」という第4段階、「統合されたコンポーネントをビジネスルール/ポリシーに基づいてシステム自身がダイナミックに管理する。ITスタッフはシステム管理ではなくビジネスニーズの達成にフォーカスできる」という第5段階の技術を研究中という。これらのうち、主要な機能については「今後数年内に提供できる」(ガネック氏)との見通しを示した。

 こうした自律型/自己管理型システムに関しては、サン・マイクロシステムズやヒューレット・パッカードが取り組んでいることを明らかにしているが、それらとの違いについてこう説明した。「IBMのビジョン/アプローチは他社よりも広範囲で、しかもオープンスタンダード技術に基づいている。新しいハードウェアやシステムを導入する必要はない。従来のものの上に、進化的に付加していくことができる」。

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[佐々木千之,ITmedia]