エンタープライズ:ニュース 2003/01/21 16:23:00 更新


基調講演:E-Business Suite 11iでビジネスプロセスの自動化を拡大しない手はない

「Oracle AppsWorld 2003 San Diego」の午後の基調講演には、E-Business Suiteを統括するロン・ウォール執行副社長が登場した。「EBS 11iに対する投資の活用」をテーマに、企業の広範なビジネスプロセスを自動化できるようになったEBS 11i最新版のさらなる活用によって自動化の領域を簡単に拡大できるメリットをアピールした。

 1月20日、カリフォルニア州サンディエゴで開幕した「Oracle AppsWorld 2003」の午後の基調講演には、E-Business Suite(EBS)を統括するロン・ウォール執行副社長が登場した。オラクルでは、米国で昨年11月、国内でも先週、EBS 11iの最新版である「リリース8」を出荷たばかりだ。

 この日、オラクルでは、1万3000社のアプリケーション導入顧客のうち、実に75%がEBS 11iに移行し、本番稼動しているか、あるいは実装中であることを明らかにしている。米国ZDNetなどがしばしば古いバージョンである「10.7」のサポート打ち切り問題を取り上げているが、こうした数字を挙げることによって、依然として10.7を使い続けるユーザーにアップグレードを迫る意図がうかがえる。

 ウォール氏も、ステージでは敢えて10.7からのアップグレードについては多くを語らず、メインテーマを「EBS 11iに対する投資の活用」とし、むしろ、企業の広範なビジネスプロセスを自動化できるようになったEBS 11i最新版のさらなる活用によって自動化の領域を簡単に拡大できるメリットを顧客らに強調した。

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コアから関連領域へと自動化を拡大すべきとウォール執行副社長


 Oracle EBS 11iの最大の特徴は、そのユニークな「Information Architecture」にある。そこでは、Oracle9iデータベースを核に単一のデータモデルを実現しており、すべてのアプリケーションが同じデータモデルの上に構築されている。

「私が、“活用”という言葉を使ったのは、EBS 11i導入によって既にコアとなるビジネスデータを設定済みだからだ。最新版によって追加されるさまざまな機能はコアとなるアプリケーションにアドオンするだけですぐに利用できる」とウォール氏は話す。

 例えば、SCM(サプライチェーンマネジメント)では、従来、モジュールは受注、計画、調達、製造、出荷までだったが、EBS 11iによって「倉庫管理」「輸送管理」、あるいは「サービス」や「保守」といったアフターケアまで自動化の領域が拡大された。

「11iリリース8で“完全な”SCMアプリケーションになった」(ウォール氏)

 彼によれば、従来、こうしたアプリケーションは、個別の製品を購入してインテグレーションする必要があったという。

企業間のコラボレーションも

 また、EBS 11iではカスタマーやサプライヤーと企業の枠を超えたコラボレーションも可能となっている。受注システムをカスタマーをつなぐのはもちろん、サプライヤー・リレーションシップ・マネジメントの機能も充実させてきている。最近では委託製造業者を活用するメーカーも増えており、EBS 11iでは「Collaborative Planning」のようなコラボレーション機能によって、自動化の拡大を図れるようにしている。

 ステージでは、フランスの通信機器メーカーであるアルカテルのインターネット部門、eND(イーエヌディー)が、EBS 11iによって「ダイレクトオーダーフルフィルメント」プロジェクトを成功させた事例がビデオで紹介された。同部門の年間売り上げは、10億ドルに上るという。

 受注から委託製造、テスト、パッケージ、出荷に至るまで、eNDが介在することなく進み、一種のバーチャルエンタープライズが実現されている。在庫が65%以上削減されるなど、サプライチェーンの最適化も進んでいるという。

Daily Business Intelligenceの最新版も

 単一のデータモデルは、データウェアハウスやヒジネスインテリジェンス(BI)の実現もシンプルなものにしてくれる。2月に限定顧客向けにリリースが開始される「Daily Business Intelligence バージョン5」は、数日で稼動を始められるという。Oracle9iデータベースを核とするEBS 11iでは特別にデータウェアハウスを構築する必要がないほか、カスタマーやサプライヤー、商品のデータが既に定義されているからだ。

 販売、マーケティング、製造といった各マネジャーごとに必要なKPI(主要業績指標)がグラフや表によってひと目で参照でき、経営者層にはそれらをまとめあげた最終的な損益のKPIが分かりやすく提供される。

 ウォール氏は、アプリケーションやデータベースのプラットフォームとしてLinuxを活用したり、EBSのアウトソーシングを行うことによって大幅なコスト節約が図れるとし、「予算的な余裕は生まれる。EBSによって自動化を拡大しない手はない」と話した。

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[浅井英二,ITmedia]