エンタープライズ:ニュース 2003/01/28 08:42:00 更新


いよいよJ2EEベースの「Next Gen」がLotusphereの主役に踊り出た

昨年まではコンセプトやデモに過ぎなかったJ2EEベースの「Next Gen」環境が、今回のLotusphereでは主役に踊り出た。IBMソフトウェアグループはこの日、「Next Gen Mail」のベータ版を発表したが、ミドルウェア4ブランドのインテグレーションを推進するIBMにとっては「ショーケース」ともいえる。

 米国時間の1月27日、IBMソフトウェアグループLotus部門の年次ユーザーカンファレンス「Lotusphere 2003」がフロリダ州オーランドで開幕した。この1月初めに就任したばかりの新GM、アンブッシュ・ゴヤール氏のお披露目でもある。

 ドルフィンホテルの巨大なボールルームに詰め掛けた5000人のLotusユーザーやパートナーを前にゴヤール氏は、「自己紹介は、綱渡りのようなもの。慎重にしなければならない」としながらも、「型にはめられるのは好きではない。新しい市場の開拓に取り組みたい」と抱負を話し、昨年まではコンセプトやデモに過ぎなかった「Next Gen」環境を予定よりも前倒しで提供していくことを明らかにした。

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「Next Genは既にある」とゴヤール氏


 ゴヤール氏は、1982年にIBMワトソン研究所の研究員として入社、DB2やWebSphereの基盤となる技術の研究開発に携わった。

「私はオープンスタンダードやLinuxにも情熱を持っている」とゴヤール氏。

「顧客らは、エンドツーエンドのビジネスプロセスにコラボレーション機能をインテグレーションすることを望んでいる。彼らの声にこたえるために、Lotusの技術をオープンスタンダードベースで提供する」と彼は言い切る。

 昨年まではコンセプトやデモに過ぎなかったJ2EEベースの「Next Gen」環境は、今回のLotusphereではいよいよ主役の座に踊り出た。

Next Gen Mailベータ版発表

 IBMソフトウェアグループLotus部門は、昨年のLotusphereカンファレンスで、J2EEによるコンポーネント化を進めることを明らかにし、さらに昨年5月、サンフランシスコの「IBM developerWorks Live!」でアル・ゾラー前GMがNext Gen戦略として明確に打ち出した。JavaやXMLをはじめとするオープンスタンダードベースでLotus製品のさまざまなコラボレーション機能を提供し、顧客やパートナーらが、アプリケーションに組み込めるようにしようというものだ。

 一例を挙げれば,CRMアプリケーションの中にSametimeのオンラインアウェアネス機能を組み込めば,顧客からの問い合わせに担当者や専門家が迅速に対応できるようになる。

 かつてIDCはレポートで、「将来、コラボレーションはContextual Collaborationへと進化する」と予測したが、ゴヤール氏も「Collaboration in Context」という言葉でその将来像を表現する。

 IBMソフトウェアグループはこの日、Lotusphereに合わせ、「Next Gen Mail」のベータ版を発表した。これはWebSphereアプリケーションサーバ上でコンポーネントを走らせ、メッセージはDB2リレーショナルデータベースに格納するもので、Tivoliのシングルサインオン機能も利用する。優れたスケーラビリティを提供するとともに、ミドルウェア4ブランドのインテグレーションを推進するIBMソフトウェアグループにとっては「ショーケース」ともいえる。

 Lotus製品を担当するジャネット・ホラン副社長は、基調講演後のプレスブリーフィングで、「当面、Next Gen Mailのターゲットは、デスクを持たない小売業や製造業の現場スタッフ」とし、NotesクライアントやブラウザベースのiNotes Web Accessに取って代わるものではないことを強調した。スケーラビリティとコスト効果の高いソリューションとして、より広範な市場にコラボレーション機能を提供していくのがIBMソフトウェアグループの狙いだという。

 ホラン氏は、急成長する中国のような新興市場を例に挙げ、「工場に従来の製品を配備していたのでは賃金よりもコストがかかり、見合わない」と背景を説明する。情報キオスクを工場に設置すれば、WebブラウザベースのNext Gen Mailによってコラボレーションを現場まで拡大できるというわけだ。

 ゴヤール氏は、ダイムラー・クライスラーがNotes/Domino 6の環境をさらに拡張するため、Next Gen Mailを採用し、TCOを節約しながら、コラボレーションのすそ野拡大を図ろうとしていることを紹介した。

 Next Gen Mailの価格は未定、製品版は第2四半期にリリースされる予定だ。

 なお、Lotusphereでは、Next Gen版の「Lotus Learning Management System」や、新しいWeb RAD機能を提供する「Lotus Domino Toolkit for WebSphere Studio」が発表されている。Domino Toolkit for WebSphere Studioを使えば、これまでDomino DesignerのRAD環境で培ったアプリケーションやデータ資産、あるいはスキルが、WebSphere StudioのJ2EE環境でも生かせるという。

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「Next Genへの移行は顧客のペースで」とホラン氏


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[浅井英二,ITmedia]